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「それだけ雫が頑張ってきたってことだ。でも、だとしたら、これからはあまり急ぎたくないな。雫と……ゆっくり残りの時間を過ごしたい。朝起きてから眠るまで、いや、寝てる間でさえ君を感じていたい」
「残りの時間だなんて、そんなこと言わないで。何だか寂しい……」
うつむく雫。
俺は右手でそのアゴの辺りに触れ、そっと顔を持ち上げた。
そして、その艶めいた唇に……キスをした。
「だからこそ、その時間を大切にしたいんだ」
死ぬまで君を……守りたい。
「そうだね。でも、私、誠が生まれておばあちゃんになってしまったんだよ。それなのに、まだこんなに大事にしてもらって申し訳ない気がする」
「それを言うなら俺もおじいちゃんだけど?」
「でもあなたは、ますます男性として素敵になっていく。いつも周りで女性達があなたを見てて。ちょっと置いていかれてる気分になる」
雫は上目遣いで俺を見た。
「ヤキモチ妬いてくれてる? だとしたら嬉しいよ。君こそ、ずっと変わらず綺麗だ。魅力も色気もどんどん増してく。俺は雫だけを見てるから」
長年連れ添えば、相手を空気みたいに感じるし、昔みたいに愛せない人が多いと聞く。
だけど……
俺は、こんなにも一途に君を想ってるんだ。
無理をしてるわけでも、強がりでもない。
いつまでも本気で雫を愛してる。
「そ、そんなこと言われたら恥ずかしいよ。もっと女性磨きしないとね」
そうやって恥じらう姿が、どうしようもなく愛おしく思えた。
「いいよ、今のままで。雫は十分素敵だから。こんな話しをしてたら……何だか君が欲しくなる」
「祐誠さん……」
夕焼けのオレンジの中、見つめ合う2人。
浴衣の襟元が少しはだけて……
そこに手を伸ばそうとしたその時、仲居さんが料理を運んできてくれた。
「失礼しますね。少し早めにお料理のご準備させて頂きます。今日は、良い鯛が入りましたよ」
いつもお世話になるベテランの仲居さん。
「あ、ありがとうございます。お願いします」
雫は、少し顔を赤らめてる。
俺はそれを見て「後で……ね」って、耳元でそっと囁いた。
ちょっと、意地悪だったか。
さらに顔が赤くなってく。
雫の声、顔、体……
いくつになっても可愛くて、いつまでも女としての君を求めてしまう。
「雫が欲しい」、俺がそうやって自然に体を熱くさせてしまうのは、全部、君のせいだ。
君がいつだって、妖艶で魅力的だから。
ねえ、雫。
俺のこと……どのくらい好き?
俺は、君が思うよりも、その何倍も愛してる。
それだけは忘れないで。
この食事が終わったら、後でこの気持ち、ちゃんと伝えるから。