洞窟の奥からアーティファクトと手紙を手にした一行は、再び洞窟の外へ戻った。涼しい夜風が肌に心地よく、一瞬だけ疲れが和らぐ。しかし、頭に浮かぶのは、手紙に書かれていた「神様」という謎の存在だった。
「なあ、この手紙、”神様”って書いてたけど、本当に神様なのか?」
いさながアーティファクトを見つめながら呟く。
「そう言われても…神様が☆マークつけて手紙書くとは思えないけどね。」
ゆうなが苦笑しながら肩をすくめる。
「でも、この状況だと、誰かが私たちを試しているって考えるほうが自然じゃない?」
みりんが冷静に分析を始める。「だいたい、アーティファクトを9つも集めて山のてっぺんに置けって、まるでゲームみたいだし。」
「いいじゃん、神様に文句言ってやろうぜ!俺たちをこんな目に合わせてさ。」
いさなが拳を握りしめ、どこか楽しげに空に向かって叫ぶ。
「おい、神!聞いてんのか!?訳わかんねぇ世界に放り込んで、勝手なことばっかさせやがって!出てきて直接話せよ!」
その声は夜空に吸い込まれていった。しばらく何の反応もなかったが、突然、頭上から不思議な光が差し込む。
光の中心に現れたのは、流れるような長いローブをまとった中性的な存在だった。その姿は、どこか神々しいが、同時に親しみやすさも感じさせる不思議な雰囲気を持っていた。
「おやおや、誰かと思えば、アーティファクトを手にした冒険者たちじゃないか。」
その存在は軽やかに笑いながら一行を見下ろした。「私の名前は”神”。君たちを見守っているんだよ。」
「見守ってるって…どうしてこんなことをさせるんだよ!?」
いさなが一歩前に出て詰め寄る。
「だって面白いじゃないか。」
神様はニヤリと笑った。その表情には悪戯っぽさが滲んでいた。「君たちが奮闘する姿、見ていて飽きないんだよねぇ。」
「お前、それ神の言うことか!?」
いさなの怒りの声に、神様は肩をすくめた。
「まあまあ、怒らないでよ。」
神様は宙を漂うように移動しながら話を続けた。「これは試練なんだ。君たちがこの世界を旅しながら、どれだけ成長できるか、それを確かめているんだよ。」
「試練って…その先に何があるの?」
みりんが恐る恐る尋ねる。
「もちろん、元の世界への帰還さ。」
神様は手を広げた。「9つのアーティファクトを集めて、山の頂上に置けば、君たちは東京に戻れる。その道中で得られる経験が君たちの本当の宝物になるんだよ。」
神様の言葉に、それぞれの胸中が揺れる。しかし、戻る方法が明確になったことで、一行は覚悟を決める。
「よし、やってやろうじゃねえか。」
いさなが拳を突き上げる。「絶対に全て集めてやる。そして…お前をギャフンと言わせてやるからな!」
「私たちにできるのかな…」
萌香が不安そうに呟くが、仲間たちの決意を感じ、少しずつ自信を取り戻していく。
「これからが本番ね。」
みりんが微笑みながらそう言った。
「じゃあ、僕は見守ることにするよ。またどこかで会おう。」
神様は軽やかに笑いながら光の中へ消えていった。
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