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彼女の突然の訃報から数週間後、母親は消えない、忘れられない悲しみを背負いつつ、警備の日々を続ける。
「………………」
しかし、幾ら堪えても涙が出てくる。そして更に警備の際妙な違和感を覚えるようになった。それは……「機械人形の動き……何だか攻撃的になってる…?もしかして…あの子の親だと識別してるから…?けど…もうあの子はもうこの世に居ない、私一人だけだとしても警備をこなさなきゃ……そしてもっとあの惨劇の事もっと知らなきゃ」
娘を失った事で警備を続投し、その一方でたった一人の娘を失うきっかけとなった張本人【ウィリアム・アフトン】の追跡をしていく事に。
そうして、終わることのない警備業務の日々をこなしてく。けど、そんな最中でもやっぱり押し寄せてくる悲しみ……。
最愛の娘の訃報を受け、悲しみに暮れていると何と偶然にも警備員として契約していると言う所謂同業者仲間と出会った。
「貴方も……警備員に…?」
「はい………、正直超がつく程薄給で死と隣り合わせのところに行きたくないのが本音だけど……でも何だか行かなきゃいけない気がして不思議と……」
「まさか、同じ境遇を…?」
「んー、というよりも俺の息子が貴女の娘さんと凄く仲が良かったみたいで、事件の噂が小耳に入って知ってとても悲しんでいました」
「そう………」
「でも、まさか数年前の惨劇がまた繰り返されてしまうなんて、あの数々の過去の事件の事は極少数でしたが、知った人間もいるでしょうし。俺もその中の一人ですから」
そうして彼女は娘を亡くして気づけなかった、助けられなかった。そんな後悔を背負いながら、娘の死を無駄にしない為にも命懸けの警備の日々を無休で続ける。
あの薄暗い暗闇のピザに足を踏み入れる度に、娘と共に警備していたあの頃を思い出して懐かしさの感傷に浸る日々……。
「ユリメア……今貴女はあの世で何をしているのかしら。不思議ね……此処に来る度に貴女と過ごした日々が走馬灯のように頭に蘇ってくるわ」
自身の最愛の娘が犠牲となった誘拐殺人事件が起きてしまい、機械人形の内骨格の中に強引に捩じ込まれて死亡して、死後経過約数年後…彼女は永遠に覚めない真っ暗なただ真っ暗な狭間で目が覚めた。
ーー死者の居所ーーー
「…………ん‥‥ん………あれ……私………」
「ふふっ、永い夢の眠りから起きたみたいだね、ようこそ此方側へ」
「此方側へって、どういう…事…?」
「自分の身体を良く観察してご覧」
「え………、!!!?!!、何これ……… 」
彼女の手脚は機械人形のパーツに成り変わっていて、片手片足は配線が剥き出しに破損した廃れた手脚……耳も生えて異形な姿をしていた。
「え……、何これ…私何でこんな姿になってるの……」
「忘れたの……?君はあの凶悪な男の手によって殺害されて死んだんだよ、つまり君が今居る此処は言わば、あの世だよ。君も僕らと同じく悲しき運命を辿ってしまったって訳さ」
「殺された…って、私はもう……死んだって事……?」
「そうだよ、だから君は僕らとずっと一緒に、あの暗い空間の中でひたすら同じ事の繰り返しの退屈な孤独の中で生きていくの、つまらない毎日をね」
「じゃあママに……もう会えないんだね」
「そうだよ、だって君も僕らと同じようにあの男に殺害されて命の灯火を消されたんだから」
「……………………」
「身体は死んだけど、魂は消えず定着する…パペットのお陰で新たなる身体の器を手に入れられた。こうなった以上君も僕らの輪の中に入って友達になるんだ」
「…………思い出した、私……そう、殺されたんだ…あの黄色いウサギの着ぐるみを着た男の人に……でもこれでずっと永遠に皆んなと同じ場所で過ごせるんだよね、皆んな…あの黄色いウサギの着ぐるみ着た男に殺害された命を奪われた被害者…だもんね」
「うん。改めてようこそ、殺された 死者が集うあの世へ」
機械人形のパーツと一体化した身体、突然無惨に失われた彼女の生涯。自分が死んだという事を自覚してショックに苛まれる一方で異形な身体となり、そして……「ママ……ママはきっと私が死んだ後もまだ警備を続けてるに違いない……ママに逢いたい」
死者となって尚も、朽ち果て腐敗し続けていくその最中で辛うじてまだ、死後の経過がまだ浅いという事も重なり記憶が失われていない為か、大好きな母親に会いたいと切望する。
「それは君の親の人もそう思ってるだろうけど、仮に会えたとしても、君はもう霊体に過ぎない。宿された機械人形が主な意志を持つんだよ」
「私………もう……ずっと暗い同じ場所で佇む事しか出来ないの……? 」
「そうさ、孤独の中で遊び相手が来るまでずっと同じ歌を歌って、毎日同じようにパーティをしたり、ピザを貪る……本当に退屈だよ、だけど生き物っていうのは蘇って二度目の人生を送るなんて事は出来ない‥…死んだら全て終わりなんだよ」
「そんな…………ママ…………ううっ、ぐすっ…… 」
亡き少女の肉体と魂は年月が経過するにつれて共に腐食が進み、機械人形とユリメアは一つの器の中で一つに繋がり、取り込まれた。
機械人形の中へ取り込まれ、お友達になった彼女に遭遇したら母親マーティルは何を思うだろうか。最愛の娘の死後、母親はずっと娘を亡くした後も警備を一切休む事なくこなし、真夜中の時間に廃墟のあのピザ屋に足を踏み入れる度に、寂しさと感傷に浸るばかり。
「いつか…………どんな姿でも良いから、ユリメア……貴女に会いたい、分かってるよ…もう貴女がこの世に居ない、死んだって事……」
そう言って、マーティルは何時ものように警備室へ入る。「ユリメアがこの世を去ってから、すっかりこの警備室も寂しくなったわね、もう電話も鳴らないからほんとに静寂だけがただ流れている……」
そう言って、警備室を見渡す。彼女以外の人間はこの警備室に足を踏み入れる事はもうなくなった。彼女以外の物音や足音など、何一つ響いてこない。寂しげな空間。
「………………何時かは会えるよね、そうよね……ユリメア」
そうやって同じ事を繰り返す日々、マーティルはもう慣れた手付きで警備を難なくこなし、スムーズな警備業務だ。
でも、それでもやっぱり、何よりも大切な家族を失った傷は癒える事はなく、警備中は我慢出来ても家に帰って気が緩むと、泣き崩れる日々。
「ほんとに……馬鹿みたい、何時迄も泣いてたってあの子が帰ってくる訳ないのに、死んだ人間が蘇るなんて事はあり得ない、生き返れない……そんなの分かりきってる事なのに……」
悲しみの渦に苦しむ中、でも違和感を微かに感じていた。
警備中、つまり真夜中のあの時間にピザ屋に向かうと、何か気配を感じ取るような…それにその気配に対して、『懐かしさ』を感じるような不思議な感覚に包まれる。
「…………………あの子、機械人形達の元へ行って、お友達になって…それならきっと何れは貴女に会える日がきっと……来るわよね」
いつか、変わり果てた姿でも、亡霊でも構わない。たった一人の最愛の娘とまた巡り会える時その時を…ずっと待ち望む毎日。
そこで、違和感や気配を感じるようになった…その気配の正体は娘なんじゃないか?そう考えたマーティルは警備員の同僚であるあの人物に事情を話し、警備業務時間外の時間帯に一度あのピザ屋に行ってみたいと提案の相談をしたところ、何とその相談を快く承諾してくれた上に何と他の系列店で警備員として警備している同業者仲間まで誘い連れてきてくれたのだ。
皆んな数年前の大惨事の事件がまた再び起こった、それに衝撃を受け…同行に賛成して来てくれたらしい。真実を自分達の目で確かめる為にも。
「幼い命がまた犠牲になったなんて、正直信じられない……このピザ屋は当初から色々赤字経営で度重なる事故や事件の発生、それに偽造や隠蔽までそのせいで顧客満足度や客からの信頼もガタ落ち、業績不振になってなくなく……碌なところじゃないのはとっくに知ってたけど、ほんとに酷い話だよな」
「ええ、特に本件に深く関与が疑われる彼…ウィリアム・アフトンはほんとに何処までも悪党よ、こんな惨劇を何度も犯しておいて……、この話はまた後でしましょ、先ずはユリメアちゃんの死体が投棄された機械人形が放置されてる場所を探るとしましょう」
「でもどうやって?探すって一言で言ってもあの人の事だ、簡単に見つからないように厳重な隠蔽工作をしたに違いない」
そう、それに例え見つけられたとしても、もう事件発生発覚から随分と時が経ってしまっている事を踏まえると、腐敗…そして白骨化もかなり進んでいる事が考えられる。
希望の欠片もない、だってユリメアが『死んだ』という現実は変わらないのだから。でも、もう……それでも良い……。
「それは分かってるわ、だって彼がユリメアちゃんを殺害したんだもの、それに死体を態々目立たせるような、そんな馬鹿なミスはしないだろうし、寧ろ事件の発覚を恐れる筈…それに過去の彼が引き起こした多数の事件の犠牲者の死体を警察は見つける事が出来なかった、隠蔽したり虚偽を働く事に関しては随分長けてるみたいね 」
そうジュディアは皮肉な言葉を溢した。そうして、一行は彼女の死体が投棄された機械人形が放置されてあると思わしき部屋に入っていく。
その部屋の付近に近づいた途端に襲ってくるのは、嗅覚にツンッと刺してくる腐敗臭…彼女が殺害されて死亡してから、一体どれ程の時が経過したのだろうか。
「この……部屋に…」
「この部屋だけ妙に施錠に細工されるし、此処で間違いなさそうね。貴女の娘さんがどんな悲惨な姿であったとしても、後悔しない?」
「ええ、後悔なんてないわ、あの子にもう一度会えるのなら… 」
そう言って頑丈に施錠された部屋のロックを解除し、遂に彼女が殺害されたと思わしき部屋へ足を踏み入れる。
「此処が…………、なんて惨い光景なの…」
マーティルは思わず言葉を失った。
部屋には壁中の至るところに血飛沫が飛び散っていて多量の血痕が事件発生から随分経った今でも、生々しく残っていた。
でも、「これまでの傾向を考えると彼女の死体は機械人形のガワに詰め込まれて圧死してる……けど殺害現場の筈のこの場所に何で機械人形が残されていないの?、まさか、彼が持ち去ったのかしら」
「死体が入って更に重くなった機械人形を一人で?自立式のロボットって言ってもかなりデカいサイズだぞ」
「…………じゃあ、まさか………」
「ジュディアさん、何か心当たりが……?」
「パペットが彼女のガワの機械人形に魂と命を宿らせたのかもしれない、フレディー達と同様に……だから彼女は機械人形を身体として生きているかも」
「そんな事が……」
とそんな事を話していた時、マーティルが警備中頻繁に感じるようになった気配がその正体を露わにする。
ガタ………ガタ……ずっしりと重い足取りの足音が聞こえてきた。「何かがこっちに近づいて来る、でも何でか…とても愛おしくて懐かしい感じが伝ってきてる」
マーティルはゆっくりと歩み寄ってくる者に対して、懐かしさを馳せている。
「………… もしかすると………」
ジュディアは何かに勘付いたようだ。彼女らに近づいてきたのは旧式のボニーだった。「え……?旧式の…………でも、普通のボニーは居る筈……、何で……どういう事だ…?」
すると、旧式のボニーはゆっくりとマーティルの方に近付き、「…………っ…!!」
マーティルは思わず後退りをしたが、でも何故か自然と身体が引き寄せられ、「やっと会えたね、ユリメア」
「え………ちょ…何を言って」
「いえ、間違いない‥‥この旧式ボニーのガワの中に入れ込まれている人間こそ、ユリメアちゃんでしょう、私達に敵意を感じていない……それに機械人形の方から彼女に近寄ってきたのを踏まえて考えると、合致がいくわ」
「………………………………」
機械人形の躯に成り下がった以上、言葉を交わす事が出来ない。でも、その代わり収まる事を知らない寂しさに駆られ、旧式のボニーはマーティルにハグをした。
「っ…………!!!」
「‥……………………」
そして、首元、頭部を噛み千切ろうと襲いかかる。このままでは……大惨事になる。そう 思ったジュディアはマーティルに強引に電気ショックを与えて、旧式ボニーは倒れた。
「大丈夫……!!?」
「え、ええ……何とか…それよりユリメアは……もうあの頃のユリメアは……」
「機械人形のガワが身体そのものになったから機械人形としての意識が優先されるの、死者となった彼女はもう魂のみでしか存在しない」
「子供が憑依してるからこそ、そんな気持ちが湧いてくるんだろうな、まあ遊んで欲しいって言ったってこんな大きな機械人形と戯れてたら、生身の人間じゃ身が持たないのが当然だ」
「ふふっ、遊んで欲しい……か、何だか子供らしい理性もちゃんと残ってるのね」
そんな事を悠長に話していると、電気ショックを与えられ、機能停止していた筈のウィザードボニーが再び起き上がり、またマーティルに対し抱擁をした。
冷たい機械的温度が伝わり、異様な感触。
「やっぱりユリメアなのね、私達が貴女を探しに来た事を知って迎えに来てくれたのね」
「…………………………」