コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ウィザードボニーを連れ帰り、異常な非日常を過ごすマーティル。中に捩じ込まれた被害者が自身の最愛の娘だとそう確信した。その瞬間から異様に不思議と導かれた。
「ユリメア、やっと会えたね、ずっとまた貴女と再会できる日を夢見ていたわ」
「ギイ……ギイ…………」
不気味な機械音を立て、それはまるで動物の鳴き声のよう。するとマーティルに近付き、頭を撫でたウィザードボニー。その時【死体入りの機械人形】、それを強制的に分らせられた死体の経年劣化による死臭……機械人形が不自然と意識を持って動いている事の裏に隠された秘密。
それは無惨にも、あの男に殺害されてこの世を去り、しかもその上無理矢理肉体と魂を機械人形と融合されたからであった。
子供達の亡霊が、機械人形に命を吹き込んでいるんだと、そんな事実を直ぐ傍で感じた母親。「ユリメア、もう貴女の声が聞けないのは………ほんとに悲しいわ、でも貴女の……確かな意思を今は感じてる」
ウィザードボニー、もとい機械人形の中に永劫的に幽閉され、暗闇へ葬られたユリメアは……「………ママ……、やっと会えた!ママ…!!」
「良かったね、君のお母さん。君が死んだ死後もずっと君の事を探してたみたいだね、僕らの親は誰一人として探しに来てくれないけど……」
「ママ……だけど、ごめんなさい、もう私は現世に生き返る事はできない、こうして死者が生きる狭間の世界から見る事しかできない、ずっとこの先も変わらず私はウィザードボニーの中に閉じ込められたまま、大好きなママの優しい温もりさえも、もう感じれない身体になっちゃったの 」
ユリメアはポツリ、不意に涙を溢した。
「ママは……直ぐ傍に居る筈なのに、何でこんなに寂しいんだろう……」
「仕方ない運命さ、だって君は僕らと同じようにあの男から殺害され、死んだんだからね、殺したいでしょ?あの男の事……けど僕らはそんな事もう叶わないんだよ」
無惨に殺された子供達の亡霊、子供達は望んでもいない運命に縛られ、ウィリアム・アフトンの手によってたった一つの命の灯火が消された。
本来、未来ある筈の幼き命が………彼の身勝手な野望の為に散っていった。
殺害された挙げ句の果てには、犠牲者となった子供達は皆、機械人形のガワに入れ込まれ、永遠の孤独の中を彷徨い続ける運命を強いられた、当然彼ら犠牲者は自分達を殺した殺人犯のあの男に対し、恨みがない訳がない。
「ママに会えたとしても、私の声はもうママには届かない……あの男に殺されたのはとても苦しいし、悔しいけど……同じ境遇で殺された皆んなが居るから寂しくない、こんな身体でも、もう良いよ」
「そう………」
孤独な暗闇の中、彼女は亡霊仲間と共に佇む。
「こんな身体、気味悪い………」
「嫌だろうけど、受け入れるしかないよ。亡霊の躯となった僕らに与えられた唯一の身体なんだから、正直僕らだってこんなに窮屈な場所から抜け出したいくらいだよ、でも残酷な事にそんな事すらも、もう叶いもしないけどね」
暗く、もう二度と陽の光さえも差し込むことのない暗闇の中で亡霊達は悲しげな日々を……yただひたすらに繰り返す。
「こんな事思っても、もう無謀だって事はもうわかりきってるけど、私……寂しいな、ママの声もさえ聞こえなくなったのは……辛いよ」
亡霊達は密談をしていると、パペット、ゴールデンフレディー、エナード達が現れてプレゼントボックスを一人一人の前にポツンと静かに配置した。
「…………………… 」
亡霊達は機械人形……その亡霊達に身体と魂を繋ぎ合わせ、新たな生命を吹き込んだのが、そうパペットなのだ。
彼は【サプライズ】をユリメア達に贈った。
「ひっ……何これ……、身体全身が……機械人形になった… 」
身体の一部が其々が圧縮されたガワのパーツに置き換わった。「こんな手じゃ、まともにピザさえも食べられないよ」
「他の余り物の機械人形がなかったとはいえ、君はほんとに運が悪かったね。まさかよりによって僕らより使い古された古物で破損も激しいその肉体じゃ、碌に良い日々を送れるとは思えないね、まあ全ては魂が成仏し、君が他の機械人形に憑依すれば、その重大な欠陥問題も気にしなくて良いんだけど」
「……………でも、もう良いの。私はこの身体を受け入れるよ」
亡霊達のこの密談はマーティルには何一つも届かない。だって今も傍で愛で愛している娘は、もう死者……亡霊なんだから。
「ユリメア、ずっと傍に居るからね。もう離れ離れにならないよ」
「ギイ………ギイ………ギイ…… 」
不気味な廃れた軋む機械音を鳴らすウィザードボニー。機械人形に宿った亡霊の魂、ユリメアは今はもう故人となってしまい、この世にはもう居ない。
「貴女の生きた声はもう聞けない……そんなの、もう分かってる、分かってるけど、やっぱり寂しいわね、でも貴女の意識を少しでも…生前の貴女の気配を感じ取れる、とても幸せだわ 」
異様で、しかしその中に忍んでいる不気味さ、そんな異質な空間が漂う。
マーティルが警備に行っている間、ウィザードボニー(ユリメア)はお留守番。
そうして、警備に向かう信者の時間。
「じゃあ、今日もお留守番しててね、お友達に会いたいだろうけど危ないから家で待っていて」
彼女がそう言うと、ウィザードボニーは彼女の言葉を理解し、手を振って仕事へ向かう母親を玄関先で見送った。
「この不気味な景観も、もう見慣れたものね……ただひたすらに同じ頃の繰り返しでその中に潜む常に死と隣り合わせという恐怖……賃金が薄給なのは不満だけど、でもあの子を死へ葬った犯人を見つける為……それでまで続けなきゃ」
そう決心を固め、今日も何時ものように警備室へ足を踏み入れる。「それにしても、何時来ても不気味な雰囲気ね、電気もありとあらゆる設備が老朽化して脆弱状態‥こんなのバイトが長続きしないケースが相次ぐのにも頷けるわ」
警備室に入ると、今日もまた静寂だけが溢れ返る。「今日も気を引き締めていかないと」
警備室の椅子に座り、警備時刻までモニター前で待つ。
モニター前でじっとする事数分後、時刻は午後11時50分。数分後に今日の警備は開始される。「ほんとに時間というのは何時もあっという間に過ぎていくわね、もうすぐで……」
そんな事を言っている間に警備が始まった。
警備時間の幕が開けた途端に警備室には、何時もただならぬ緊張感が走る。
「この緊迫感にも、もう慣れっこだけど‥‥でも異様な不気味さにはやっぱり慣れないわ、だけど覚悟を決めた以上、頑張らないと」
そう言いながら、今日も警備の業務と向き合う。
機械人形の動きは俊敏でアグレッシブにより能動的に、何より凶暴性が高まり、ユリメアが死後、機械人形達は警備員歓迎し、遊び相手を探し求めて警備室まで徘徊する。
新しい遊び相手と新しいお友達を作る為に。
「やっぱり不思議に思っていた事は間違いじゃなかったみたいね、機械人形……何だか以前と違って確実におかしくなってる、まさか暴走……? 」
そうぼやきながら、警備と真剣に向き合う。警備開始から数時間後、電力は半分以下まで減り、以前までなら機械人形の動きはある程度パターン化している行動システムだったものが、今となっては分からなくなっている。
「チカが映ってない、何処にも…フレディー達も皆んな、移動している場所が全然まるで違う……これは一体どういう事なの…?」
マーティルは機械人形の動きについて明らかな違和感を感じた。
「何かがおかしいわ、ううん……でもそんなを考えてる余裕なんてない、電力が尽きてしまう前に定時を迎えないと……」
動揺しつつも、マーティルは警備をやっていき、時刻は午前3時。
「あと、もうちょっとで定時を迎えられる…」
突然として大きく変動した行動システムパターン、更にそれだけに止まらず妙に攻撃的になった機械人形達を前に戸惑いながらも、定時時刻まで頑張る。
そうして、やってきた午前6時。
「はあ……やっと終わった……あ……あの子が待ってる、早く帰らないと」
警備終了後、警備記録を記入しマーティルは廃墟を出て急いで自宅へ帰る。家で【娘】が待ってるから。
「ユリメア、ただいま」
「ギイ………ギイ……ギイ……」
「良い子にしてた?暴走もしてないようね、ちゃんと大人しくしてたみたいね」
マーティルはウィザードボニーに対して、何の恐怖心を抱かず腐敗臭が漂う死体が入っている機械人形を娘として捉え、頭を撫でた。
ウィザードボニーの外見というのは激しく破損していて配線が数本剥き出しになっている頭部に優しく触れたその時、ウィザードボニーからまさかの衝撃な言葉が聞こえる事に。
「マ…………マ……………ママ…………マ……マ…………」
「え…………?今……ママって言った……わよね、まさか本当に……私の事覚えてるの……?」
そうマーティルが問いかけると、ウィザードボニー(ユリメア)はコクッと頷いた。
しかし、聞いた話によれば、殺害され犠牲となり、死者となった魂だけのみの存在。機械人形と死者の魂が合わさり、憑依し定着してしまえば意識は全て機械人形に呑み込まれ、生前の記憶さえなくなる筈、なのに何故彼女は母親の事を覚えているのだろうか。
「貴女が亡くなってもうどれ程の時が経ったのでしょうね、こんなにも変わり果てた姿で再会するなんて、でも……貴女がどんな姿であってもユリメア、貴女に会えた事には変わりないもの……」
「マ………マ、ママ………マ……マ、私を探しに……来てくれて……ありがとう、ママ……また一緒に…………居れるね」
パペットが新たに彼女の魂をウィザードボニーと一体化させ、憑依させ……彼女が殺害され死後、まだ経過年数が浅い事が何かしらの因果関係がありそうだ。
「うん、ずっと一に居ようね」
その後もずっと永遠に続いてく奇妙な日常が広がっていく毎日。もう離れたくない、絶対に離れやしない、娘が犠牲になったのは私のせい……私があの時気づいていれば、そんな悔やんでも悔やみきれない後悔を彼女の死後はずっと胸にしまい込んできた。
だからか、ウィザードボニーが言葉を発したあの瞬間からマーティルの心境に変化が現れ、ずっと一緒に居たい、そんな気持ちばかりが込み上がってくる。
「ずっと傍に居るよ、沢山また遊ぼう?大好きな読み聞かせでも何でもユリメアが望むように、ママ……するからね」
そうマーティルは言って、ウィザードボニーの腕にそっと触れた。
この日かそれ以降彼女は夜間警備を継続的に休むように、警備に行かなくなった。警備に行くとユリメアがきっと寂しがっちゃう…そう思った彼女は遂に決心し、あの店舗宛に退職届を書いて送り、彼女は夜間警備員から立ち退いた。
それにより、後日から新たな警備員の募集を募る。そしてそれはマーティルの突然の退職から数週間後、とある新人警備員の元へ届けられた。
「あの人………辞めちゃったのか、けどそうだよな…最愛の娘だったユリメアを失ってそんな中警備なんて出来る訳無いないよな、けど正直あんなところに警備なんて……はあ、ただでさえ恐怖もの全般無理なのに……」
彼はマーティルの知り合いで、マーティルとユリメアがあのピザレストラン屋の警備員として正式雇用されたのと同タイミングで夜間警備員の代打要員として任されていたのが、マーティルが辞めた事で代打ではなく正式な警備員として雇用通知が改めて来る事になった。
彼の名はルディック・ファルビー、十八歳の青年だ。
※此処から先はユリメアやマーティルから一転して新たなる警備員のルディックが主役・主人公になりますので、此処から先のNightは全てルディック視点メインになります。
「はあ、今日から夜間警備か…まさかほんとに夜間警備として勤務する事になるなんて。でもこの店の闇の黒幕とその真相の手がかりを掴むには、それにもう二度とあんな悲しみの犠牲を出さないようにする為に、腹を括るしかないか」
ルディックは覚悟を決め、深夜の暗闇な空間で支配され不気味な雰囲気が漂う警備室にゆっくりと足を進める。
「ユリメアが殺されて嫌な生臭い異臭がする…はあ、けど覚悟を決めた以上やるしかないよな 」
不安を漏らしながらも警備室へ辿り着き、監視モニター前にある椅子に腰掛ける。
「えっと確か…此処の警備は深夜0時から朝方の6時まで、その時間帯の間機械人形達の侵入を防げば良いんだったよな 」
そうしていると、警備開始時間になり……お約束のあの電話がかかってきた。ジリリリリッ!ジリリリリッ‥……と受話器が突然となり、【あの男からの電話】だ。