テラーノベル
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最近楽屋には眠り姫がいる。らしい。
らしいっていうのは、それが俺自身なことと誰が言い出したか分からんから。
誰が姫だよ、誰が。
寝てるのだってちゃんと理由があるんだから仕方ないだろ。
だって、イイコで眠ってないと、欲しいものが貰えない。
ちゃんとイイコにしてるご褒美が欲しくて。今日も俺は楽屋で1人眠ってる。
俺が眠るのは、1人になった隙間の時間。誰かメンバーがいても、スタッフがいても駄目。1人でいることが絶対条件。例外は除く。
スマホを見てて寝落ちましたって感じで、ソファに横になって眠る。頭は冴えてるけど。
近付いて来る気配に心臓がどきどきと大きな音を立てる。
「…佐久間くん、寝てるの?」
気配の主が俺の顔を覗き込む。そっと優しく、顔にかかった髪を払われた。
不自然にならないように寝息を立てる。
俺は寝てる。寝てるぞ。
「…佐久間くん、起きないでね…」
ふわりと香る、大好きな匂い。気配が更に近付いて柔らかく唇に何かが触れた。温かくて気持ちいい。
ほんの数秒でそれは離れて、今度は指先でそっと頬を撫でられる。愛おしむように、何度も何度も。
いつもここで、目を開けようかどうしようか悩むんだ。
でももし開けた時のリアクションが想像出来なくて、勇気を出し切れずにそのまま寝た振りを続けてしまう。
最後にもう一度。今度はおでこに唇の感触がして気配がゆっくりと離れていく。
そこで俺はようやく薄く目を開けて、去っていくその後ろ姿を見つめるんだ。
ねえ、蓮。
どうして俺にキスすんの?
聞きたいのに聞けなくて、もう一度ゆっくり目を閉じて蓮の唇の感触を反芻する。
こんな風にこっそり奪われてるのに、それでも俺にとっては幸福な時間であることに変わりない。
イイコで眠ってると蓮がキスをくれるから。それが最近俺が眠り姫な理由。
って、だから誰が姫だ。
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