そこに表示されていた文字を見つめて、ああ、やっぱりな、と思った。
『美里ちゃん、今日の待ち合わせは何時にする?』
慣れた手付きで、返信する。
『ごめんなさい?今日、お仕事が長引くみたいで?夜の11時とかでも大丈夫ですかぁ?』
すぐに返事が来た。
『もちろんだよ。美里ちゃんに会うためなら何時でも大丈夫。楽しみにしてるね。』
ふ、と笑って携帯を投げ捨てる。端から見たら、何てことない普通のカップルの会話だろう。
しかし、これはそんな可愛らしいやり取りではない。相手は、私よりかなり歳上で、お小遣いをくれる。
つまり、援交の約束だ。私は数年前から援交を始めている。
お金に困っている訳じゃない。
きっかけは些細なことだった。いい子を演じるのに疲れていた頃、街でおじさんに声をかけられた。
「君、すごく可愛いね。お小遣い沢山あげるから、おじさんといいことしない?」
気持ち悪くて、すぐにでも逃げ出したくなった。だけどふと、脳裏をある考えが過った。
(これは…悪いこと。私はいい子なんかじゃない。だから、やってもいいんだ。誰が想像するかな。私が援交してるって。)
みんなの知らない、悪い一面を作ることで、快感を感じる自分がいたのだ。
私、こんなに汚れてるんだよ、全然いい子じゃないんだよって言い聞かせるために。
裏の顔を作っていい子の自分を保てるようになった。
その当時、私は既に処女じゃなかったので、抵抗はなかった。
理由はそれだけじゃなかった。仕事以外の理由で誰かに必要とされたかった。
私の価値はいいこの部分だけじゃないって証明したかったのだ。
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