次の依頼者が昼過ぎともあって店を完全に閉めて私は椅子を倒して塞ぎ込んだ。 誠也はそばに椅子を置き手を握ってくれている。
この待機時間では予約外の客やオンラインの占い客やメール返信、ブログ更新など意外とやることが多いかのだが家でスマホでできる。
しかし今はそんな気分にはなれない。
自分が自暴自棄になってしまったことに反省している。
でも私は悪くない……私は……。
「お姉ちゃん……確かに夏彦さんがやったことは悪いよ。でも、行き過ぎてるよ」
「そうよね……でも……」
ぎゅっと握る誠也の手は柔らかく芯は硬い。夏彦にはそんな感覚がなかった。まぁ誠也とは手を繋いでたから。
「姉ちゃんが占いの仕事始める、って聞いてすごいやって思ってた。どんどん成長していくお姉ちゃん、素敵だった。絶対家の中で籠ってちゃダメ、そう思ってたから……だからこうしてお店でも働けるようになって僕も助けたいって」
そうね、私が占いをすると自分の実家の家族に伝えたのは誠也だけだった。
僕も占って、となんどか練習台になってくれた。夏彦は一度占ったけど気持ち悪い、カード占い、所詮運ゲーだと揶揄して練習台にならなかった。
純粋な誠也はいい練習台になった。でもネットでは全員が全員誠也のように優しい人……いないわけでもなかったけど……自己中だったり、依存してきたり、言いがかりをつけてきたり……夏彦と変わらないや、どこに行ってもネットの世界に逃げても私は傷つくのか……と絶望したけど一部の優しいユーザーさんと誠也のおかげで私はなんとか頑張れた。
どんなに大変でも、寝る暇を惜しんで鑑定してた時も、PTA、子供会や子供の習い事に行事、いつも通りの家事育児、嫁姑問題、誰にも言えない占い師としての仕事、でも表向きでは専業主婦でいるという世間からの目……。
そして浮上した夏彦の不倫、さらに誠也が雇ってくれた友人の探偵が暴き出した他の女。
私はチャンスだと思ってパソコンに長けてる誠也を助手として雇った。
私のいいビジネスパートナーともなった。それ以上に私の大好きな誠也がそばにいてくれる、それだけで安心になった。
職場は、私の避難所。
倫太郎が全寮制の中学校に進学したのも倫太郎なりに避難所を見つけたのだ。
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