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初めて訪れた時に出会ったスキュラが棲んでいた海底の神殿。
そこにつながる洞門にまさかまた来ることになるとは。
ルティのおかげでおれ自身の力が急激に上がり始めたのもここからだ。あれから数か月経っているが、スキュラを抜きにしてもここはさほど危険じゃない場所だったと記憶している。
その認識どおり、後ろを歩くルティと見習い騎士がいても崖下に難なくたどり着く。
だが、
「何だこれ? 洞窟の様子がおかしいが、まさか変化しているのか?」
「ウニャ? アック、どうしたのだ?」
「あ、あぁ……シーニャは気にしなくていいんだ」
「ウニャ」
洞門を通り抜けようとした時、明らかに洞窟の内部が変わっていることに気付いた。
「イスティさま。わらわが感じた力はこれだったなの!」
「スキュラがすでにここに戻っていて、それが関係している。……そういうことか?」
「それだけでこうはならないなの。元々棲み処としていた水棲怪物の精神状態が不安定じゃない限り、あり得ないことなの」
フィーサとシーニャを連れて先を急ぐ。
神殿前に着いたおれたちの目に飛び込んで来た光景は――
「むぅ、全然違うな……」
「形状変化する洞窟ということは、やっぱりおかしくなっているなの」
初めて来た時はそこまで神経が回らずにいたが、いくつもの横穴が見える。それに加え、人工的に作られた道が追加で出現。そもそも神殿に行くにはひたすら前へ進むだけの単純な道だった。
それだけに変化に驚く。
「……何だかたどり着け無さそうな所なのだ」
「わらわもそう思うなの」
「魔物の数が明らかに増えているな。神殿には行かせないつもりか」
「ううん、きっと楽しんでいるだけだと思うなの。あの女はそういう遊びを望んでいるはずなの」
元の場所に戻って来たことで悪戯心が芽生えてしまったのか?
「遊びか。それが彼女なりの歓迎かもしれないな」
「そうじゃないなの。わらわが感じた異様な力の気配を探る限り水棲怪物だけがいるとは限らないなの」
スキュラ以外に何かが潜んでいる――?
もしかしてここで偶然にも遭遇したテミド・ザームみたいな奴が訪れている――とすれば。
「アック、進まないのだ?」
「ルティが来るまでここで待機だ」
しばらくして――
「んっしょ、よいっしょ~! もう少し、もう少しでアック様が見えますよ~」
ルティのお気楽な声が洞窟中に響き渡ってきた。リエンスにそんな元気が無いのか声は聞こえないが、ルティと会話はしているようだ。
「いえいえ~! 大丈夫ですよ。アック様が何とかしてくださいます!」
(何が大丈夫なんだか。全く呑気なものだな)
戦力として加えずに今回ルティには護衛に専念してもらうか。
「アック様~!! お待たせしまし……あれぇぇぇ!? こ、ここはどこですか!?」
「以前来た場所だ」
「えええっ!? で、でも、どう見ても……」
「スキュラが作り出したダンジョンのようだ。落ち着け、ルティ」
「は、はいい~。スーハースーハー」
部外者とも言えるリエンスにとって、何がそんなに驚きなのかも理解出来ないだろうな。
「ルティ。落ち着いたか?」
「はいっ!」
深呼吸の効果は抜群か。
「ルティには見習い騎士リエンスの護衛を続けてもらう。彼のそばを離れずにおれたちの後ろについて来てくれ。それでも、もし魔物が接近して来たらその時はルティだけでやっていいぞ!」
「わたしだけで……えっと、アック様のお近くには――」
「おれとフィーサ、シーニャが先行して進む。ルティはリエンスを守ってやってくれ。出来るな?」
強引な命令になってしまうが仕方が無い。
「はふぅぅ……で、出来ますけど~またしてもおそばにいられないのですかぁぁ?」
そう言われればそうだが、こればかりはな。
「ルティシア。依頼を終えたら、いくらでも言うことを聞く」
「は、はいっっ!! そのお言葉を信じますです。こうなれば気合いを入れまくりますよ~オオオ!!」
「その意気だ」
ダンジョン化した洞窟ということは、魔物のレベルも急激に上がっているはず。問題は神殿で待つスキュラの他に別の存在がいる可能性についてだ。最悪の展開として、スキュラと戦うことになるかもしれない。そうなった時の為にもガチャを引いておくのが良さそうだ。
「イスティさま、小娘があの人間に説明している今がチャンスなの!」
「シーニャ、魔石はもう蹴飛ばさないでくれよ?」
「分かったのだ」