テラーノベル
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俺が物心ついた時には、街は荒れ果てていた
建物は荒廃し、家族を求め泣き叫ぶ人
食べ物を求め彷徨う人。何も見えない夜
後から聞いたものだが、俺の父親率いた
「ファシスト」なる集団のせいでこうなったと
教え込まれた
俺は親父が死んだ時からアメリカやイギリス達に保護された。
でもその時俺には双子の弟がいた
🇺🇸「おい、ナチのせがれ2人いるらしいぞ」
兄弟仲良く寝ている双子を前に、連合軍は考える
ソ「お互い片方ずつ保護しよう。ナチのような
人間を2度と作らせてはならない」
だが、これがのちに街を飲み込む東西対立へと
繋がることは誰も予想できなかった
戦後、アメリカは保安連盟の機能性を指摘
また、自分が不参加しなかった影響が大きかったと判断
市長になり、「保安連合」を作るべきだと
連合軍会議で話した
しかしこれを良く思わなかったのはソ連であった
ソ連はアメリカと共に、枢軸連盟を倒した
大きな影響力を持つ人物の1人
彼を支持する声も大きかった
ソ連はこれを機に市長を目指そうと考えていた
また、「保安連合」設立の流れはほぼアメリカ
主導だったため、ソ連は気に入らなかった
🇺🇸「おいソビエト。どさくさに紛れて自分の支配圏を増やそうとしてるんじゃないぞ」
ソ「じゃあなぜ保安連合設立に俺たちソビエト
を呼ばなかった。理由はそこにある」
「自由」を重視するアメリカ
「平等」を重視するソビエト
相反する二つの理念は戦後の陣営を決定させた
戦争終結から数ヶ月後、保安連合が設立されたものの、陣営は二つに分かれた
アメリカ、イギリスを中心とする通称「西側」
ソビエトを中心とする通称「東側」
先の大戦で疲れ果てた市民はまた大きな戦争に巻き込まれるのではないかと大きな不安に襲われた
だが、この2つの大きな勢力が武力で
衝突することはこの街のすべての人々の絶滅を意味する。お互いに大規模な軍事を持っている
本気を出せば遠くの市街地まで被害が出かねないからである
俺は西側の人々によって育てられた
物心ついている時に弟と引き離されていたから
時々弟と遊びたいなんて思うこともあった
🇩🇪「お兄ちゃん、弟はどこ?」
🇺🇸「今遠いところにいるんだ。もう少ししたら帰ってくるからいい子にしてるんだぞ?」
「(クソッ…俺がどっちとも保護してれば
こんな目には…!)」
しばらく経って同じことを聞くとまた同じことが返ってくる始末
アメリカはこれで耐えていたつもりだっただろうが、俺が学校に行く頃には通用しなくなった
🇩🇪「アメリカ、いい加減説明してくれ
俺の弟は今どこにいるんだ?」
🇺🇸「(ついにその時が来たか…)」
アメリカはドイツに割り切ったような顔をする
ついに説明するかなったかとドイツは確信する
🇺🇸「分かったよ…お前の弟は、ソ連にいる」
🇩🇪「…は?」
当時の俺はアメリカとソ連が対立してることは知っていた。それも激しく
さらに、アメリカ側の人々とソ連側の人々の交流はスパイを招く可能性があるとして、
禁止されていることも知っていた
🇩🇪「そんな…じゃあ、もう2度と会えないってことか!?」
🇺🇸「俺たちが対立してる間はな」
🇩🇪「ふざけるな!なんでお前らの勢力争いに俺たちが巻き込まれなきゃいけないんだ!」
怒りのあまり俺はアメリカの胸ぐらを掴む
アメリカは黙秘し続ける
🇩🇪「なんか言えよ!お前らの争いのせいで、
俺たち兄弟だけじゃない!市民も苦しんでんだよ!」
学校の友達から聞いた。東西対立のせいで親達は動きにくくなったと
どちらか一方の関連施設を訪れる、物品を購入したりすると即刻検閲の対象になったりするなど
また、学校のクラスも両親の所属会社が東側か西側かによって分けられることもあった
🇩🇪「お前ら市長を目指してんだろ!さっさと
出馬しろよ!そこで決めちまえよ!」
🇺🇸「俺とソ連だってそうしたいよ!でもな…
株主達がそれを許さないんだよ」
ソ連ももとはといえばロシア帝国の権益を継ぐもの。膨大な金を持っており、バックには
株主達がついている。アメリカ側もそうだ
街の中心核を担う会社達がついている
仮に白黒つけた場合、
「どちらかが優位であり、片方は劣っている」
という認識が市民の中に植え付けられ、会社の運営にも大きな影響を出す可能性がある
両陣営の資本家達はそれを恐れている
🇺🇸「もう…退けに退けない状況まで来ちまったんだよ…」
🇩🇪「クソッ…なんでなんだよぉ…」
🇺🇸「ごめんな…でもいつか緩和させなきゃならない**。俺だって長期的な対立は望まない」**
もう2度と弟に再会することは叶わないのかと思い、俺は奴らの愚かさと無力な自分に嘆いた
でもその後俺の嘆きの甲斐もあったのか、
比較的東西陣営は緩和に進み始めた
まず、対立以降一切会合することのなかった
アメリカ、ソ連が突如として会談を始めた
人々は雪解けが始まった。と期待を寄せた
ソ「久しぶりだな。アメリカ」
🇺🇸「この緩和を望まない人間だっているだろう。でも緩和を望む人間のほうが彼らより遥かに多いと俺は思う。俺は奴らの意思を尊重したい」
ソ「それは俺だって同じだ。少しずつ和解していけば彼らも納得してくれるだろうと信じてる」
この会談で決定されたのは、東西陣営を理由にする生活の制限の一時的解放だった
これにより、学校のクラスの陣営による分断の
消滅。情報の自由ができた
俺の友達は分断されていた他クラスの友達と
再会することができ、歓喜に包まれた
🇩🇪「すごい…これで俺も…!」
俺はアメリカに弟と再会したいと伝えた
彼から放たれた返事は、「検討する」だった
🇩🇪「は…ふざけんな!解放したはずだろ!」
🇺🇸「お前の弟は今働いているそうだ。勘違いしてほしくないのは一時的解放だ。
まだ会社同士の交流は制限されている」
🇩🇪「…。」
昔の俺なら駄々を捏ねていたかもしれない
でもこれに限っては仕方ない。対立が完全に緩和されたわけではない
会社となると利益が大きく関わってくる
下手に解放すれば奪われることだってある
俺は渋々受け入れた
制限の一時的解放から数ヶ月
ソビエト含む東側会社は経営の限界を迎え始めていた
そもそも彼らは「平等」を重視していたため
変わらない賃金。競争力がないため売り上げは伸びず、たいして製品もよくない
会社の経済は停滞続きで、西側に転職する人々も現れ始めた
そこで、ソ連はある決断を迫られる
ソ「ここで西側のやり方を入れるか…このまま
体制を維持して崩壊するか…前者に決まってるよな。同志」
同志一同「勿論でございます。このままでは食べていくことができません」
ソ「満場一致だな。でもこのことは労働者に伝えられたくない。こっそり西側の会社に潜伏してやり方を学ぶんでくるよう息子に伝えろ」
同志「了解!!」
一方その頃、ロシアは毎日のように酒に溺れていた。
🇷🇺「くわーっ…ストレスにウオッカは最高だな」
同志「ロシア様。失礼します」
🇷🇺「なんだ?親父がなんか言ってたか?」
同志「我々はついに西側の仕組みを取り入れることを決定しました。そこで」
🇷🇺「分かったわかった。要するに部下送れってことでしょ?」
同志「そうでございます」
🇷🇺「俺に任せんしゃい」
直ちに部下にメールを送るべく、携帯を開く
ロシア。しかしウオッカの飲み過ぎで
頭の回転力が鈍っていた
「全社員に告ぐ。明日かあ西側の会社とのこうひゅうをきょかする。にしかわのやりか」
🇷🇺「Zzz…」
何杯も酒を飲んだせいにより、ついに寝落ちしてしまった。だがこれが東側会社員の 心をざわつかせた
無制限による西側との交流再会。これは大チャンスだと人々は確信したのだ
そんなことも知らず、ソ連は眠りについた
🇩🇪「…今日もいい夜空だな」
自宅の窓の外から星空を眺める。
いつか弟とこの空を眺めたいな…なーんて、
そんなことが起きたらまずいって…
ピンポーン
🇩🇪「え、誰?」
こんな夜遅くにインターフォンを鳴らすなんて…一体誰だ?アメリカか?ストーカー?
おそるおそるドアを開けると…
「兄さん…!僕やっと…!」
「…東ドイツ!?」
え…?おとう…とだよな…?
あの時にそっくりだ。俺と同じ顔…
俺を慕ってきたまっすぐな瞳…
「え…なんで…」
「なんかわかんないけど東側会社のすべての社員が西側の人々と交流できるようになったんだって!それ聞いた僕は…真っ先に…」
「でもなんで俺の家を…」
「アメリカさん達から教えてもらった!」
「は…はは…」
思いもよらぬ再会。まさかこんな形で会うことになるなんて…気づいたら目から透明な水が
ポロポロと落ち始めていた
「ただいま、兄さん」
「おせぇよ…何年待ったと思ってんだよ…!」
気づけば俺は泣きながら弟に抱きついていた。弟は強く俺の背中を抱き返した
🇺🇸「ひぐっ…やっぱ兄弟っていいね」
🇨🇦「仮にも市長候補がこんな真夜中でなに陰から見てんのさ…」
🇺🇸「誰かそんなことしてただろ?どっこい
どっこいだな!」
🇨🇦「ブラジルとキューバね!」
再会を果たした俺たち兄弟
弟は働いていた仕事を辞め俺のいる学校に来ることを決めた
転校初日、東ドイツは俺の弟として紹介された。だが俺の学校では東側会社の人々も多いため、浮くこともなく、すぐに馴染んだ
東「そういや兄さん。もう少しで生徒会選挙だよね?出馬したらどう?」
🇩🇪「確かに…前々からこの学校率いたいって
思ってたしな」
晴れた休日、俺と東ドイツは近くのデパートに出かけた
東「僕が兄さんの責任者になってあげようか?」
🇩🇪「いいの!それはありがたいなぁ」
東「兄弟の絆ってやつを見せてやろうよ!」
和気藹々と話す俺たち。しかしそこにーー
「キャー!!」
女性の悲鳴が響く。声の聞こえた方向に俺たちは向かう
🇩🇪「…は!?」
そこには血を流して倒れている男性と、それを刺したと思われる人の姿があった
彼は血のついたナイフを持っている
🇩🇪「これ警察呼んだほうがいいよな…」
俺は咄嗟に携帯を取り出す。そこにーーー
謎の男「死ねぇぇぇぇ!」
男はこちらを見るなりナイフを向けて走ってくる。
🇩🇪「やべっ…」
東「危ない兄さん!」
ドンッ…
次回、最終回
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