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◇ ◇ ◇ ◇
腕の中ですやすやと眠る七香の髪を撫でながら、今まで感じたことのないほどの満足感を覚えていた。
未だに彼女の中で繋がったまま、動いてもいいものか悩んでいると、七香の足が腰に巻きついてきたので、昴は驚いたように目を見開いた。しかしただ寝ぼけているだけのようで、気持ちよさそうに寝息を立てている。その姿を見るだけで興奮が収まらなくなり、鼻息を荒くしながら七香の唇を塞いだ。
「もう無理……起こしたらごめん……」
耳元でそう囁き、胸の頂を口に含んで音を立てて、しつこく舐っていく。自分のモノがさらに屹立したのがわかり、ゆっくり前後に腰を振り続けた。
「んっ……」
甘い吐息を漏らす唇を塞ぎ、指先で胸の頂と、繋がっている場所より少し上の敏感な部分に刺激を与えていく。
起きて、俺を見て。俺が欲しいって言って。ずっとそばにいるって言ってーー自分がこんなに欲張りだなんて知らなかった。
「はぁっ……んっ……昴くん……気持ちいい……足りないからもっと激しくして……お願い……」
うっすらと目を開けた七香が、両手を伸ばして昴の首に腕を回した。今のでタガが外れた昴は、七香に貪るようなキスをしながら、腰を激しく動かし続ける。
「七香……俺、歳をとってもずっと七香と一緒にいたい。その延長線上子供がいて、俺たちが親になる未来があって……」
言いかけて、あることに気付く。それから七香の潤んだ瞳を見て微笑んだ。
「思い出した。七香の中学生みたいな将来計画。『普通に出会って、普通に恋をして、プロポーズされて、結婚して、子供が産まれて、老後を過ごす』だったよな」
「もう出会いから普通じゃないけどね……でもこれからもっといっぱい昴くんと一緒にいたいって思う。私……これでも今までかなり我慢してきたのよ。だからこれまでの想いを全部昴くんに届けるんだから、覚悟しててね」
「……うん、覚悟しておく。だから七香、ずっと俺のそばにいてよ……」
「うふふ……さっき付き合い始めたばかりなのに、なんかプロポーズみたい」
「時間の問題じゃないと思うけど……やっぱりタイミングだよな」
「そうなのかなぁ……でもいつかそんな日が来たら嬉しいな……」
そう言って笑った顔に胸が熱くなった。七香の瞳には、俺だけが映っている。それだけでこんなにも幸福感を得られた。互いの舌を絡めながら熱いキスを繰り返していると、急に七香の中の締め付けが強くなる。荒くなった呼吸を飲み込むように唇を塞いだ途端、彼女の腰がもどかしそうに動いた。
「昴くん……そろそろ一緒にイキたいから……お願い……」
七香が恥ずかしそうにおねだりをしたものだから、昴は嬉しくなって勢いよくキスをすると、再び激しく腰を動かし始める。
「七香……俺に帰る場所をくれてありがとう……」
昴が七香の体をきつく抱きしめた瞬間、二人の体は大きく跳ね上がると同時に果て、幸せに包まれながらベッドに沈み込んだ。
* * * *
いつものように珠姫とのランチを終えて、会社に戻る途中だった。
「島波さん」
声をかけられた方向を見ると、岩田が笑顔でこちらに向かって手を振っていたが、前回と同じ会社の前で声をかけてきたことに不快感を覚えた。それに先日昴に会いに行った件を思い出し、七香は笑顔を封印して頭を下げる。
「珠姫、先に戻ってていいよ。岩田さんと話したいことがあるから」
「……わかった」
七香の雰囲気から何かを察した珠姫は、頷いて先に会社へと戻っていく。その背中を見送ると、目を細めて岩田を睨みつけた。
「何かご用でしょうか」
「おっと、ずいぶん怖い感じだな」
「理由はわかっていらっしゃると思いますけど」
「あはは。ということは、彼と上手くいったのかな?」
「おかげさまで、だいぶ拗れましたけどね」
「雨降って地固まるってやつじゃない? 大丈夫、俺は君のことは諦めたから。でもあのままだと、いつまでたっても彼は殻に閉じこもったままだったと思うから、ちょっとだけ背中を押した感じ?」
「押したどころか、階段から突き落とされたような様子でしたよ」
「でもようやく、君の大切さに気付いたんじゃない?」
「……私、岩田さんの意図が掴めません」
「うーん、一番は島波さんに幸せになって欲しいってことかな。じゃないと、俺が諦めた意味がなくなるじゃない?」
それだけだろうか。何か裏がありそうで返答することが出来なかった。
「でもあの人、すごく面倒くさい男だと思うよ。それでもいいの?」
それは違う。面倒くさいというより、彼は不器用なだけーーだがそのことを岩田にわざわざいう必要はないと判断した。
「岩田さんよりも長く彼と一緒にいますが、面倒くさいとは思わないです。むしろ岩田さんの方が面倒です」
「俺? あはは! そんなこと初めて言われたよ」
大笑いされ、少しだけ不愉快な気分になる。岩田は笑いが落ち着くと、楽しそうに七香を見つめた。
「君にとっては、あの男のことは何も問題じゃないんだな……それなら心配はいらないね」
「はい、大丈夫です」
「それならいいんだ。俺をフッたんだから、ちゃんと幸せになってくれよ」
そう言い残すと、くるりと踵を返し、七香に背を向けて歩き出す。このまま彼に何も言わなくていいのだろうか。やり方は感心出来たものではないが、岩田のおかげで昴が七香への想いを自覚したのは、紛れもない事実だった。
七香は意を決したように拳を握りしめ、顔を上げて口を大きく開いた。
「一応伝えておきます。ありがとうございました」
七香の声は届いていたようで、岩田は軽く手を挙げた。
一人になると、確かに岩田の行動による変化が大きかったと実感する。あの日がなければ、もしかしたら未だに早紀に想いを寄せる昴を、そばで見守っていたかもしれない。だとしても、それでいいと思っていたのだから問題はないだろう。
でもやはり、本当の幸せを知ってしまうと、あの頃には戻れないと思う。七香は待ち受け画面にセットした昴の写真を見ながら、今の幸せを噛み締めた。
白山小梅
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