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まるで何かの儀式が行われていたみたい。もしかして私……生け贄……?
サァと顔から血の気が引いた。
気がついたら見たことのない場所。
駅にいたはずなのに。
もしかして誘拐されたのかもしれない。
言いようのない恐怖と不安に襲われて、
ガタガタガタガタと怖くて足が震えてきた。
「予兆が現れたとは本当か?」
「えぇ、はい、間違いありません。お急ぎを」
「だが、召喚されていたらどうするのだ」
「えぇ、はい、困りましたな…」
人の話し声が聞こえたかと思うと、勢いよく扉が開かれた。
びっくりして扉へと視線を向けると、ぞろぞろと複数人入室してくるところだった。
その中の1人が近づいてきたかと思うと、座り込んでいる私に手を差し伸べて立ち上がらせてくれた。
放心状態の私に構わずに、初老の男性は場違いな程に陽気に語り始める。
「ようこそアーネティア王国へ。異世界からのご友人。
突然のことで驚かれたことでしょう?
ですがどうか、ご心配なさらず。
あなた様に危害を加えるつもりもありません。ご安心くだされ。
私は師長を務めておりますスタンと申します。
先程予兆が現れまして、あなた様が現れました。
おめでとうございます!
あなた様は、聖女様のお世話係りに選ばれたのです。」
『聖女…様?…』
私は無意識に言葉を反復していた。
魔法使いの衣装のようなロープ姿の老紳士は身振り手振りで意気揚々とはなしつづける。
もしかして何かの宗教で、私を洗脳しようとしているのかもしれない。
すぐに信じやすい私は、詐欺などにあわないために決めていることがある。
勧誘、セールスその他諸々、とにかく
関わらない! その場で決めない!
これが鉄則。
曖昧な笑みを浮かべながら、私は目線で部屋の出口を確認した。
初老の男性の後ろには数名の騎士が控えている。
建物といい、服装といい随分と凝っている。
大きな宗教なのかもしれない。
隙を見て逃げるのは難しそうだ。
「我が国は定期的に異世界より聖女様をお迎えしております。
聖女様が我が国で不自由なく過ごせるように、聖女様と同じ異世界より、お世話係を召喚するように定められております。
あなた様には聖女様のお世話係として、聖女様を支えていただきたく存じます。
なに、難しいことではありません。専属の侍女もおります故、お世話係といっても、お話し相手になっていただければと」
初老の方は一息つくと話しを再開する。
「ですが、実は聖女様は魔物討伐の旅に出ておりまして……
いつ戻られるかも不明でして。
あなた様には申し訳ないのですが、しばらくこの城に留まっていただきたいと」
初老の方はしきりに額の汗を拭いていた。
演技ではなく、本当に困惑しているようにみえた。
温厚な人に見えるけれど、言ってる事は意味不明だ。
要するに、ここに私を拘束すると言っているようなものだ。
どうしよう…
ここがどこなのかも分からないし、とりあえず大人しく従う方がいいのかもしれない。
逃げようとしたら拘束されて監禁されるかもしれない。
『あの……今は何も考えられないので、
少しお時間いただけますか?』
「えぇ、はいそれはもちろん!
あなた様もお疲れでしょうし」
「すぐにお部屋へご案内を」
「どうぞこちらへ」
「はい」
数名に取り囲まれるような形で、移動することになった。
騎士の姿を見ると帯剣しているので萎縮してしまう。
けれども予想に反して乱暴な扱いを受けることはなく、客室へと案内された。