テラーノベル
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第8話 「言わないまま、増えていく」
翌日。
雨上がりの朝の《Nocturne》は、どこか空気が軽かった。
「昨日さ〜、prちゃん顔真っ赤だったよね?」
開店準備をしながら、akがにやにや言う。
「うるせぇ」
prは即答。
「でもさ〜、tgちゃんも赤かったよ?」
「……たまたまだろ」
「たまたまにしてはさ〜」
akが言いかけたところで、mzが横から割り込む。
「放っとけ」
「え〜、冷た」
「面白がるな」
mzの声は淡々としている。
でも視線は少しだけ、厨房の方に向いていた。
そこにはktyがいた。
「mzち〜! これどこ置く?」
「そこ」
「どこ〜?」
「そこだって」
「え〜?」
結局、mzが無言で取りに行く。
ktyは嬉しそうに笑った。
その様子を見て、atがぽつり。
「mz、分かりやすい」
「は?」
「優しい」
「違ぇ」
即否定。
だが耳は赤い。
―――
その頃、カウンター。
「prちゃん、昨日のさ」
tgがコップを拭きながら話しかける。
prの手が一瞬止まる。
「……何」
「えっと……」
tgは少し迷ってから笑った。
「ありがとう」
それだけだった。
でも、 それだけでprの心臓は跳ねた。
「……別に」
「でも助かった」
「仕事だから」
「ふーん」
tgは楽しそうに笑う。
その笑顔が、 prにはずっと引っかかっている。
昨日の距離。
昨日の温度。
触れてしまった瞬間の静けさ。
全部、まだ残ってる。
「prちゃん」
「なんだよ」
「昨日さ」
tgは少しだけ声を落とした。
「ちょっとドキドキした」
「…………」
prの呼吸が止まる。
「近かったから?」
「……それだけじゃないかも」
tgは曖昧に笑った。
その笑顔が、 いつもより少しだけ静かだった。
prは何も言えなくなる。
「……仕事戻る」
逃げるように背を向けた。
―――
夜。
店はいつも通り賑やかだった。
akが騒ぎ、 atが無言でグラスを割りかけ、 ktyが転びかけ、 mzがため息をつく。
その中心で、 tgは笑っていた。
「tgちゃんさ〜、ほんと誰とでも仲いいよね」
客の一人が言う。
「えへへ、楽しいから!」
その言葉を、 カウンターのprは無意識に聞いていた。
「誰とでも」
その一言が刺さる。
当たり前だ。
tgはそういうやつだ。
誰にでも優しくて、 誰にでも近くて、 誰とでも笑う。
――だからこそ。
「……くそ」
小さく漏れた声。
mzが横を見る。
「限界?」
「うるせぇ」
でも、 もう止まらなかった。
―――
閉店後。
店の裏。
風が少し冷たい。
tgは荷物をまとめていた。
「帰るか」
prが言う。
「うん」
並んで歩き出す。
少し沈黙。
そのあと、 tgがぽつり。
「ねぇprちゃん」
「ん」
「僕さ」
「……」
「prちゃんといるとき、ちょっと違う気がする」
prの足が止まる。
「……何が」
「なんか、安心する」
tgは笑った。
「他の人といるのも楽しいけどさ」
「うん」
「prちゃんのときは、ちょっと静か」
「……」
「変かな?」
prは答えられない。
変なのは自分の方だ。
その言葉に期待してしまう自分が。
「……変じゃねぇよ」
やっとそれだけ言った。
tgはほっとしたように笑う。
「よかった」
その瞬間。
prは決めてしまった。
もう無理だ、と。
―――
次の日。
mzが珍しくprに声をかける。
「で」
「……何」
「言うの?」
「……何を」
「とぼけんな」
mzは缶コーヒーを投げる。
「もうバレてる」
prはそれを受け取って、 しばらく黙った。
「……怖ぇんだよ」
「何が」
「今のままが崩れるの」
mzは少しだけ目を細める。
「崩れてんの、もうお前の中だけだろ」
「……」
その通りだった。
―――
その夜。
店は静かだった。
客が引けたあと、 tgはカウンターに座っていた。
prが隣に来る。
「tg」
「ん?」
prは一瞬だけ迷って、 それから言った。
「ちょっと外出る」
「え?」
「話ある」
tgはきょとんとする。
でもすぐ笑った。
「うん」
二人は店を出る。
夜風。
静かな路地。
ネオンが遠くで揺れている。
prは立ち止まる。
tgも止まる。
「なに?」
prは息を吐いた。
「お前さ」
「うん」
「俺のことどう思ってる」
――沈黙。
長いようで、短い。
tgは少しだけ目を丸くしたあと、 困ったように笑った。
「え、それ……」
prは逃げなかった。
初めて。
ちゃんと、見ていた。
――続く。
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コメント
3件
ぷりっつくんがんばれ~ 2人ともひかれあってるしなんか私までドキドキする 最高ですね!楽しかった
prの「怖ぇんだよ」「今のままが崩れるの」、すごく響きました……。mzの「崩れてんの、もうお前の中だけだろ」も刺さる。tgの「prちゃんのときは、ちょっと静か」、それって特別だよね。言葉にできない距離感を丁寧に描いてくれて、読んでて自分の心臓がぎゅってなった。続き、待ってます🤍🥀