テラーノベル
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どちらの切り替えもつかずに気まずい空気が流れる中で、その後も顔を見合せたまま一生懸命思考する。お互いにピンと今必要な行動を考え付いた先が一緒だったのか、同時に何度も小さく頷くと、康二は俺に背を向けて、俺はその背中を見守るように、もそもそと一先ず布団に潜ることにした。
「…何で一緒に帰らずにうちに泊まったの?」
まず疑問に思ったことを先に切り出したのは俺だった。俺が康二の気持ちを知らないうちに、あの時蓮と一緒に家を出ればチャンスだったろうに。
「どうせ俺は、一緒に帰っても…自分ち帰るだけやし。そしたら余計、その、…寂しなるし。ごめんな。テレビ局でばったり会って…めめに話聞いた時から、気持ちが止まらへんかって。」
「、そっか。それでも康二は蓮の気持ちを優先して、俺にも繋げてくれてたんだね…康二、謝らなくて大丈夫。ありがと。」
身体の丸まりを強めながらもごもごと小さく紡いでいく康二の言葉に、胸が締め付けられる。…そうだよな。蓮が謝ったあの場面があって、もし康二がそのまま一緒に帰ってたら、俺も正直心のどこかで寂しさや孤独さを感じてたかも。
──でも、ごめん。
「康二。」
「ん?」
「一緒になってからずっと甘やかしてきたけど、俺…こればっかりは譲れない。それは解ってほしい。」
「、…うん。」
それだけは、と心を鬼にして放てば、背中で受けとめつつも苦しい感情が滲む相槌が返ってくる。康二、違うんだよ。俺は、
「それでも、俺の為に蓮を諦めてくれなんて言えるわけない。同じ人を好きになったからって、康二自身を嫌いになるわけもない。」
「…うん。」
「なんなら、俺ら2人とも玉砕する方が可能性高いよ。だからさ、『もしかしたら』の可能性に全力賭けて頑張ってみようよ。勿論、どっちかが成就しても恨みっこなしで。これは約束。」
「……っ、ぅん…、」
ずび、と鼻のすする音と短い二文字が僅かに震えているのを俺は聞き逃さなかった。その純粋に溢れ出す感情につられそうになる中、俺はまた【いつもの】を無理やりこじ開ける。
「こぉじぃ、泣くなってー!」
「っう、ぅ…泣いてへんもぉんん…っ!」
バレバレなのに強がる康二もまた可愛いとさえ思うのは、最早彼の一種の才能として発揮する圧倒的弟感から無理くりに引き出される俺の兄心だろう。
(こういうとこは、どうしても勝てないなぁ。)
《もぉ、》と小さく溜息混じりに吐くと、俺はベッド上での体勢を少し端に寄って詰め、1人分空いた空間をぽんぽんと叩いた。
「康二、こっちおいで?今日は一緒に寝よ?」
「ゔん…。」
そうして起き上がってきた、常夜灯に淡く照らされて現れた彼の顔は案の定薄く涙で煌めいていて。両手を拡げて迎え入れると、ベッドに膝を立ててから俺の顔を見るなり再び泣き出す康二がそれはそれは遠慮なしに鳩尾辺りに頭から崩れ落ちてくるものだから、漏れ出しそうな呻き声を必死に耐えてぽんぽんと背中を叩くことに専念することにした。
スマホのアラームが鳴り響く。反射的に時間を確認すると、先週の曜日設定のままだったようで、実際のスケジュールからはまだまだ余裕のある時間を指していた。一つの安堵と予定外に起こされた僅かな苛立ちを胸にスマホを置き戻せば、身体の拘束感と共にいつもより布団が温かく感じる。
寝起きのぼんやりとした頭で違和感を感じながら、薄く開いていた目をやや下へ向けると、そこには俺より高身長なはずの後輩がその身をより小さくさせつつ、抱き枕を抱くようにしっかりと俺の身体にしがみつきながらすやすやと寝息を立てていた。
───あぁそっか。康二泊まりにきてたんだっけ。
──目、はれてる。昨日いっぱいないてたもんね。
─ていうかちょっとおもいなぁ、…まぁいっかぁ。
起こさない程度に脇下に納まっている茶髪を柔く一撫ですると、寝起きの微睡みに誘われるままに再度ゆっくりと目を閉じた。
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