テラーノベル
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放課後のチャイムが鳴ると、廊下は一気に騒がしくなった。
笑い声、足音、ドアの開く音。
おらふくんは、その流れから外れるように、理科室の奥へ向かう。
準備室のドアを開けると、空気が少しだけ重くて、静かだった。
椅子に座って、カバンを足元に置く。
ここは、誰にも見られない。
でも、完全にひとりでもない気がする。
少しして、控えめなノック音。
「……いる?」
やっぱり、おんりーだった。
「……うん」
ドアが少しだけ開いて、おんりーが顔を出す。
中を見回してから、静かに入ってきた。
「邪魔じゃない?」
「……大丈夫」
そう答えると、おんりーはドアを閉めず、半分だけ開けたままにした。
逃げ道を残すみたいな、その感じがありがたい。
二人は、少し離れた位置で座る。
机も触れない距離。
でも、昨日より同じ空間にいるのが自然だった。
「……昼、寒くなってきたね」
おんりーが、独り言みたいに言う。
「……うん」
会話は、それだけ。
でも、沈黙は重くなかった。
おらふくんは、机の傷をぼんやり見つめる。
家に帰れば、また声が飛んでくる。
でも今は、ここにいればいい。
「……今日は、裏行かなかったね」
おんりーの声は、責める感じじゃなかった。
ただ、確認するみたいに。
「……行かなかった」
「そっか」
それ以上、何も言わない。
“行かなくてえらい”とも、“無理するな”とも言わない。
それが、ちょうどよかった。
しばらくして、おんりーがカバンから小さなノートを取り出す。
開かずに、ただ持っているだけ。
「……ここ、静かだね」
「……うん」
「落ち着く」
その一言で、胸の奥が少しだけ緩んだ。
同じことを感じている人がいる。
それだけで、ここは“場所”じゃなくなり始めていた。
遠くで、誰かが名前を呼ぶ声がした。
おらふくんは、無意識に肩をすくめる。
それに気づいたのか、おんりーは、視線を床に落としたまま言った。
「……今日は、ここでいいよ」
帰らなくていい、とは言わない。
でも、“ここにいていい”と言われた気がした。
「……ありがとう」
声が小さすぎて、聞こえたかどうか分からない。
でも、おんりーは何も言わず、少しだけ姿勢を崩した。
それが、肯定の合図みたいだった。
時間は、ゆっくり過ぎる。
時計の音も、遠い。
やがて、廊下の音が減っていく。
「……そろそろ、行く?」
おんりーが聞く。
「……うん」
立ち上がるとき、二人の動きが少しだけ重なった。
触れない。でも、同じタイミング。
ドアを出る前、おんりーが小さく言う。
「……明日も、ここでいい?」
おらふくんは、一瞬だけ考えてから、うなずいた。
「……うん」
準備室の電気を消す。
暗くなる直前、部屋が少しだけ、やさしく見えた。
校舎の中に、
逃げなくてもいい場所が、ひとつ増えた。
少しずつ、すすめるから、ずっとおなじとこみたいだけど、ごめん!
コメント
2件
んわかんどう…(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)