あたりは静まり返っていた。
静寂。
この言葉が良く似合うだろうと俺はぼんやりした意識のままそう思う。
目をうっすら開けると周りはまたあの光景が広がっていた。
同じように真っ黒で、冷たく、何も感じない…感じられない闇。
だが…何かが違う。
違っているように感じる。
その違和感がどこから来ているのか俺には分からない。だが感じるのだ、確かに。
あの冷たい…なんと言葉で言い表せばいいか分からないが、まるで氷のようなひんやりとしたこの暗闇の空間のはずなのに少し違う。
(死んだからか?それともまだ俺は…生きて、る?…まさかな、だったらここは地獄かなんかか?)
地獄はこんな感じなのか?
(地獄でもあの夢と同じような光景を目にするとはな…)
正直少し呆れていた。
地獄だったら現実世界や夢とは違う別の…ありえない光景が広がっていると思っていた自分がいたからだ。
だがこれでは夢と同じどころか瓜二つすぎる。
違和感を感じるというところが唯一の違いだが…。
「…それにしても暇だな…なにか変化でも起きない─────?」
起きないか?そう言いかけた時、声のようなものが聞こえた。
最初は気のせいかと思い無視したがその声はどんどんと大きくなっていく。
そして、そこで気がついた。
その違和感とはこの声のことだったのだと─────。
いや、声と言うより気配だったのだろう。
俺の他に何かがいる。
そう直感するが肝心の姿が見えない。
耳をすまして話している内容だけでも聞き取ろうとする。
しかしそれは間違いだった。
聞いては行けなかったのだ。
その声に見覚えがあると気づいた時から辞めるべきだった。
内容は途切れ途切れだったが大体の予想はつけれたためなんの問題はなかった。
いや、問題があった方が幸せだっだと思う。
【お前は本当に使えない子。使えない使えない、どうして生まれてきたの?役立たずで、ノロマで、オマケに弱々しい。さらに醜女と来た…チッ。もっと可愛い子供だったら利用価値があったんだけどねぇ…いっその事死ねばいいのに。】
聞きたくなかった、だが自然と聞き入ってしまう。
この声の主が誰なのか大体の予想は着いていた。
俺を毎日毎日邪険にし、暴言暴力、オマケに最後は捨てるという極悪非道の人物。
母。
俺の母親だった。
小さい頃だったから少ししか覚えていないが、暴力によりできた痛々しい傷と、暴言による精神的ダメージ、トラウマなどが俺の体、脳に染み付いていたおかげで忘れることは当然なかった。
気づけば声は消えており、違和感も無くなっていたが俺は震えていた。
そして、涙が次々と出てくる。
もう聞くことは無いと思っていた声が聞こえ、あの時の光景が蘇ってきたからだ。
俺は倒れ込み、その場で丸くなる。
寒さと恐怖、そのふたつの精神的ダメージが大きすぎたのか俺の意識は朦朧としていた。
息を荒くし、言葉にならない声で呻く。
「タ、タ…スケ…テ────」
(助けなんて呼んでも来ないくせに、誰かにすがろうとするなんて我ながら馬鹿だな…)なんて思う。
助けて、とかすれた声で助けを求めた瞬間だっただろうか。その時俺の意識は完全になくなった。
「おや…これはこれは、珍しいものを持っていますね。我が君。」
異様に落ち着いた声でたんたんと喋る白衣姿の男。
その目線の先には金色の髭と髪を生やし、立派なツノを持った主君と言われている者。
「ガスター!探したよ…どこに行っていたんだい?あとその堅苦しい我が君って言い方やめて」
「…分かりましたアズゴア王。…どこに行っているも何も、今日は城のお茶会に招待をすると言ったのは貴方でしょう?それなのに遅刻してくるとは…予想はしてましたが(ボソッ)」
呆れた様子でアズゴアを見る。
アズゴアとこの白衣姿の間には上下関係があるみたいだがそんなもの微塵も感じられない。
アズゴアの威厳がないせいか、はたまたこの従者っぽい白衣男のせいなのかは分からないが。
「ごめんごめん…💦ってそうじゃなくてこの子を見てご覧よ!」
慌てて抱えていた「子供」を白衣男にみせる。
それを見た男は特に驚きもせず、ただ不気味な笑顔をうかべその子供を見つめながら尋ねる。
「ふむ、珍しいですね人間なんて。キャラ王女以来じゃないですか。どうしたんです?」
「それが…お茶に使う金色の花を摘みに言ってくれたトリィがこの子を連れて帰ってきて…治療はさせたんだけどなぜか効果が薄いしだんだん呼吸も浅くなってるからこのままじゃ危ないと思って!」
「だから私を探していたという訳ですね。」
「そうそう…」
「ならば、すぐにラボに向かいましょう。見たところ、確かに呼吸が浅いですし脈も弱い、ところどころ損傷が激しいみたいですね。」
「な、治せる…かな?」
「…おかしなことを聞きますね。治せないと思うなら貴方がわざわざ私のことを息を切らして探す必要性がないでしょう?直せると思ったから探した、違います?」
「う、うん…でも不安なんだよ、回復できないんだから…」
「魔法でどうにかできないことをどうにかするのが化学でしょうが。…このW.Dがスターにお任せください。必ずその子供を救ってみせましょう。もちろん王がそれを望むのであれば…ね、」
「意地悪なことを言うね…救っておくれ。天才科学者さん」
アズゴアは子供をガスターに渡し安心したようににっこり笑う。
一方ガスターは不気味な笑顔が少し崩れ、微妙に嫌な顔をした。
「…なんか嫌ですそれ」
「じゃあもう二度と我が君なんて呼ばないでね?」
「…分かりました。とりあえず、何日で回復するかはわからないので目が覚めたら連絡を入れます。」
「任せたよ…」
「はい。」
ガスターは伝えるべきことは全て伝え、ショートカットでラボに向かった。
残されたアズゴアは奥さんのトリエルにガスターに子供を預けたことを伝えるためにまた走り出した。
子供はガスターの腕の中で小さくうめき声を上げ泣いていた。
それが痛みからのものなのか、悪夢でも見ているせいなのか。
ガスターはそんな子供を見ながらいっそう不気味な笑顔が浮かべ、作業という名の治療を開始した。
恐らく、これがガスターとの最初の出会いだろう─────。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【次回へ続く…】
どうも〜!
いやー久しぶりに短編書き始めたら昔みたいに小説を描きたい!という意欲が湧いてきて自分でも驚いてます笑
…そういえば、今回主人公の名前と容姿で出来ませんでしたね…(. . `)
おそらく次回!かな?次回必ず公開するので!!前回嘘つきましたすみません!!
次がいつ投稿されるのかは分かりませんが見てくれたら嬉しいです!
次の投稿で会いましょう!( ᐛ )ノシ バイバイ☆
コメント
3件