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目を覚ますとそこは驚くほど真っ白な部屋が広がっていた。
あの暗闇だけしかない空間とは真逆でなんだか目がチカチカする。
「ここはどこだ…?それにこれは…」
自分の左目に何故か包帯が巻きついており触れてみると鋭い痛みが走る。
ああ、落下した時に怪我したのか。なんて思いながら部屋を再び見回してみる。
色々な薬や医療道具がある棚、大きめのテーブルに丸椅子が複数、スタンドミラー、あとは今俺が寝かせられていたベット。
大体はこんな感じだ。
俺はベットからおり、ふらつきながら鏡の前に立つ。
(本当にここはどこなんだ…?というか何故俺は死んでいない?左目、右腕、両足のところどころに包帯が巻いてあるの他の怪我はほぼ完治している状態。ここは医療施設かなんかか?いや大穴の下にこんな…)
考えるほど混乱する。
訳が分からない…この場所もこの怪我の状態も…誰かが治療してくれたのか?見ず知らずの俺を?
そんなお人好しがいるのか?この世界に?
「ハァ…なわけないよな…」
ベットに座り溜め息をこぼす。
どうせ俺を奴隷かなんかにするために一時的に良くしてくれてるだけだ。
瀕死の人間を奴隷にしたところでの垂れジヌだけだからな。
(逃げるにしてもここの施設のマップかなんかがなきゃ動けない。誰かがいるのは確かだがその誰かが分からない以上下手に動く訳には─────)
考え込んでいると部屋の外からなにか物音がした。
(…足…音…!?)
ゆっくり、ゆっくりと何かが近づいてくるのが分かる。
冷や汗が次々と出てくる。
(マズイ…ふらついてるせいで上手く動けない…ッ!)
隠れようとしても隠れる場所がないし怪我のせいで上手く動けない。
俺は覚悟を決め、扉を凝視した。
足音はやはり俺のいる部屋の前で止まり、そして─────開かれてしまった。
スライド式の扉から姿を現したのは人間とは到底思えない姿をしたなにかだった。
驚くほど真っ白な手には穴が空いており、顔も同様に白いがそれよりも驚いたのは目がない事だ。
目のある場所には何も無く、真っ黒な空洞があるだけ。
オマケに不気味なほど笑顔。
白衣姿をしていることによってさらに怖さが増す。
「…ッ」
俺は動けずにいた。
体を小刻みに揺らし、恐怖で頭が真っ白になる。
立ち尽くしている俺に白衣を着た何かはどんどん近づいてくる。
目の前に来た何かは俺の目の前で止まり、俺のことをジーッと凝視すると─────。
「ふむ…もう目が覚めたのか、怪我もほとんど完治している。素晴らしいな君の再生能力は…。」
といった。
それが独り言なのか、俺に対して言ってるの分からず無言を貫いていると白衣男は少し困ったように、
「…もしかして話せないのかな?おかしいな、声帯には何も異常がなかったんだが…」
と言う。
俺は話せることを伝えようとするも、なんと言えばいいのか分からずまた黙ってしまう。
男はまるでその意図がわかったかのように、
「いや、ただ何を話せばいいのか分からないだけか。そうだな…自己紹介でもするか。」
とまた不気味な笑顔を浮かべ、ベットの上に座ると話し始めた。
笑うことに関しては正直怖いのでやめて欲しい。
自己紹介と言っても何を話せばいいんだとまた混乱するが、「私が聞いていくからそれに応えてくれればいいよ」と言われたのでそうすることにした。
「まずは私から。私はW.Dガスター。ガスターと呼んでくれればいいよ。驚くかもしれないが、私…いや、この地下世界にいる者たちはみなモンスターという人間とは別物の生物だ。」
地下世界?モンスター?なんなんだそれは。
そんなもの今まで聞いたことも見た事もなかった。
確か、イビト山に何かが封印されていると聞いたことはあるが…それがモンスター?
イビト山の大穴は地下世界の入口ってことか?
俺はしばらく放心状態だった。
当たり前だろう。今の状態はは簡単に言えばモンスターと怪我をしている人間が密室に2人っきりでいるということ。さらにこの世界にはガスター以外にもモンスターがいるという。
ガスターはその後も何か話していたが、俺には全く聞き取れず、右から左へと聞き流してしまった。
話し終えた様子のガスターは混乱状態の俺に質問を問いかけてくる。
「まずは…名前はなんて言うんだい?」
名前…。
もう随分自分の名前なんて口にしたこと無かった。
縁起の悪い名前だったし、何より呼んでくれる人もいなかったため自分で呼んでも虚しいだけだったからだ。
それに言いたくない。
だが、何も言わずに時間が過ぎるのも嫌なので意を決して口に出してみる。
「…ド。」
声量が小さすぎたのか最後しか聞き取れず、ガスターは申し訳なさそうに
「済まない、もう1回頼めるかな?」
といった。
自分でもなんて言ってるのか聞き取れない程だったので、さっきよりも少し大きめに言う。
「エンド…」
我ながら不吉な名前だ。
エンドはENDというつづり。
終わりを意味するこの言葉はこの世界では言ってはならない言葉だと言われている国もある程だ。
ガスターは少し驚いた表情をした。
だから言いたくなかったんだ。
みんなこれを聞く度に嫌な顔をする。
「お前にはこの名前がお似合いだ」とつけられた名前。
この名前が大っ嫌いだった。
口に出せばあの母親や父親のことを思い出してしまう。
俺は少し泣きそうになり俯いてしまう。
驚きの次には嫌な顔をされるのがもう目に見えてるからな。
俯きさえすれば見えることは無いからいつもそうしてた。
こいつもどうせ俺を嫌がるんだ。なんて思っていると、ガスターはボソリと呟く。
幸い俺は耳がいいからか何を言ったのか聞き取れた。
聞きたくなかったが露骨に耳を塞ぐ訳には行かない。
相手に失礼だし何より相手が何をしているのか見聞きできなくなるのはまずい。
呟きは予想通り、
「不吉な名前だな…」
というもの。
ああ、こいつも同じか。モンスターとやらも人間と変わらないんだ。と思いだんだん視界がぼやける。
泣いちゃダメだと思い何とか踏みとどまるが結構ギリギリですぐに零れそうだった。
ガスターはしばらく考え込むと、いきなり立ち上がり、俺の正面にしゃがみこむ。
「顔を上げてごらん」
驚くほど優しい口調でガスターは俺に言う。
言われるがままに顔を上げると、ガスターは不気味な笑顔とは真反対に、優しそうな笑顔をし俺に微笑みかけた。
「君にはエンドという名前は似つかわしくない。もっとふさわしい名前をつけてあげよう。…そうだな…ふむ、beginningという単語の意味…分かるかい?」
beginningとは、始まりという意味の英単語だ。
この言葉はENDとは違いよく親しまれている言葉。
俺とは無縁の単語だ。
俺がコクッと頷くと、ガスターは俺の肩に手を置き、
「いいかい?君の名前は─────」
“ニーベルだ”
「ッ…!」
「beginningの最初のbeとniとって色々組み合わせただけなんだが…気に入ってくれたかな?…ネーミングセンスがないからな…」
ガスターは不安そうに俺の顔をのぞき込むが、気づけば俺の目からは大粒の涙が流れ落ちていた。
嬉しかった。
ネーミングセンスがないと言いながらも俺のために名前を考えてくれたことが…すごく、嬉しかった。
それと同時に、心の中にあった不安や絶望、闇が全てがなくなり心が軽くなった気がした。
ガスターがなんだか…あの暗闇から救ってくれた救世主のように思えてしまう。
ガスターはそんな俺を見てアワアワした様子で戸惑っているのがみてとれた。
俺はそこでようやく緊張がほぐれ、笑顔を見せた。
そして、
「ありがとう」
といった。
正直恥ずかしかったが言わなきゃと思い勇気を出して言った。
ガスターは嬉しそうに
「どう致しまして」
と言い、俺たちは笑いあった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【次回へ続く…】
何故かクッソ長くなってしまいました…笑
おかげで後半死にかけてたせいか(ぶっ通しで書いてたから)文章に違和感しかない…(なのに直してない人☆)
今回は無事容姿や名前が出てきましたね!笑
あ、ネーミングセンスについては触れないでくださいメンタルが死にます😇
容姿に関しては後々変更されるのでこれが固定って訳では無いです!
まぁ今回は早めに続きが出ましたが次はいつになるのか分からないので…もしかしたら1年後とかになってるかも☆(遅すぎだバカ野郎)
とりあえず次回も見てくれたら嬉しいです!
(* ̄▽ ̄)ノ~~ マタネー♪