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俺は西洋竜と東洋竜の合間の子だ。
そんなの想像つかないとか、気持ち悪いとか思わずに
どうか俺の心情に耳を傾けてほしい。
俺は体の鱗は龍王譲りで、体型なんか
普通の紺青色のドラゴンだ。違うところは、鳥のような翼で
目元に赤い模様があるくらいで、何も変哲もない西洋竜である。
そんな俺は自分のことを
「立派なドラゴンである。」と考えていた。
だが、幼少期の頃に海底という
海の底にある神殿に移されてから他とは違うことに気づく。
まず、西洋竜は卵から生まれるが
東洋竜は卵から生まれないのだ。
この時点で親父は察したらしい。
自分は(俺にとって)酷いことをしてしまったと考えたそうだ。
それから他の竜に虐められないよう海底都市に移して
毎日のように顔を合わせた。
成長するに連れて自分は醜いと感じてしまう。
周りとは違うし西洋竜でも東洋竜にも成れない
哀れな生き物だと悲しくなってしまった。
当時、そんな思いが頭をよぎったときに
一番血縁関係的に近い親父に聞いてみた。
その親父は龍王で、いわゆる東洋竜だ。
俺は西洋竜の割には少しばかり
長い体をぐぅんと伸ばして
心を落ち着かせると、龍王の親父である
サーガラにこう聞いてみた。
「俺は醜いの?」
俺の聞いたことにサーガラは振り返った。
鹿のような角をした龍王なのに
表情や勇ましい顔つきはどこか俺に似ていた。
長い体を軽々と浮かばせて
俺の目の前まで来ると、鷹のように鋭く尖った爪で
頭を撫でられた。とても痛そうな爪なのに
痛くない。おそらく手のひらで上手く撫でているのだろう。
俺は不思議な感覚にキョトンとしてサーガラを見た。
「醜くない。お前は俺の自慢の息子だよ。
…いやグーロの子だ。」
サーガラの言う”グーロ”は俺の実の親父である。
実の親父は、息絶えたサーガラを助けるために
肉体をサーガラと入れ替えた。その為の副反応で
俺はこんなのになったそうだ。
けど、親父の良心だったから憎めない。
俺はサーガラのように尖った爪を見つめながら
ふとそういうことを考えていた。
「親父って後悔してるのかな?」
「そりゃ…してるだろうよ。」
「だよね。申し訳ないなぁ〜…」
親父のことを考えたら辛くなった。
考えれば考えるほど俺が化け物に見える。
強く強く手を握ると爪が皮膚を破って血が出た。
けど、東洋竜の血のせいか傷がすんなりと治る。
血も霞になって消えてしまった。
「申し訳ないわけないだろ。
…お前は誇りに思って良い身分だ。
貴族レベルの竜と
海を支配する龍王の血を引いてるんだから。」
「そうだよね。」
…確かにそうだけど
(西洋竜か東洋竜…どちらかに生まれたかったなぁ。)
心の奥底で後悔した。
普通でありたいのが希望だったし、孤独だったから。
何かに包み込まれたいと思った。
サーガラに愛され育てられても、足りなかった。
認められてないと心底思ってたのだ。
誰かに認められて愛されたいなぁと
よく考えては夢見ていたのだ。
その夢は当分叶わない予定だったが、
一つのことで大きく夢に近づいた。