テラーノベル
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「しかし、この味にこだわりがあるのです。原価は落とせません。マルヨーの玉子を使うから意味があるんだ」
「現地のものでこの味を出すことは考えなかったのですか?」
「それだと未来スーパーと変わりません。そんな中途半端でまずい缶詰作るくらいなら、この企画はとん挫させた方がマシです」
だんだんイライラしてきた。口角がピクピクと引きつっているのが自分でもわかる。
「でも、マルヨーを抱えているんでしょう? 彼らの事業再生に一役買ったのに無責任じゃないですか?」
「だから御社がだめなら他の方法を考えます。不採用の通達を言いに来たのなら、それだけでよくないですか? なんでいちいちこちらに喧嘩を売るような真似を……」
「喧嘩は売っていませんよ。事実をお伝えしているまでです」
むかっ。
腹の立つ言い方だなっ!
でも、会社の社長たるもの、毅然とした態度でこんなやつの言うこと真に受けずに聞き流さなきゃ。この先やっていけないよ。
まあでも、いちいちめくじら立てちゃうのは、佑里香先生が絡んでいるからだろうなぁ。水島だって僕が先生の夫だから気に入らないんだきっと。
「マルヨーのことは考えています。御社がだめなら自分たちでやります。僕はこの事業計画に自信を持っているし、諦めません。不採択でありましたら、自分たちで頑張りますから結構ですよ」
「誰が不採択だと言いました?」
ん?
「えっ……いや、なんか、水島さんの言い方だと……不採択みたいな言い方じゃないですか……?」
「どう考えても御社一択でしょう。今、安かろう悪かろう商品は売れません。徹底的にこだわり、生産者の想いがあってこそ初めてヒットできる可能性が生まれるのです。うちの目が節穴みたいに思われたら困ります」
「あ……そうですか……それはどうも……」
なんだそれ!
心配して損したッ!!
「TENGAさんの意向も聞けて良かったです」
まるでそれが目的だったような言い方だな。この男…策士だ。頭がいいのだろう。わざと怒らせて本音を引き出させる作戦か。海外に行って活躍しているくらいだから当然とも言えるね。
「水島さん、だったらなぜ海外展開を諦める話になるのですか?」
「先ほどもお伝えした通り、コスト問題です。採算が合いません。ですから、販売する場所を変えます」
「いったいどこに?」
「空港」
そういうことか!
水島にいっぽん取られた気分になった。
「こちらの意図がわかったようなお顔でいらっしゃる。天川社長ならNOとは言わない販売先でしょう。海外ではなく、日本国内の搭乗ゲートで社長のアイディア商品を置けばいいと考えております」
水島は満足そうに笑った。
「免税店や土産物として置くなら、販売ルートはあるのですか?」
「天下のフジノを舐めてもらっちゃ困りますよ。提携先はいくらでもあります。そこはご心配には及びません」
シゴデキ男は素晴らしい展開を示唆してくれた。
コメント
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水島さんの「誰が不採択だと言いました?」からのどんでん返し、思わず「やられた!」って声が出ました(笑)。天川社長のイライラから一転して拍子抜けする流れ、めちゃくちゃ気持ちいいですね。しかも空港か…コスト問題を販路の変更で解決する発想、水島さんほんと策士だなあ。ビジネス交渉って駆け引きが面白いんだなと改めて感じる回でした。
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