テラーノベル
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一時間目が終わる。
先生が教室を出た途端、あちこちで椅子を引く音が鳴り始めた。
「らっだぁ」
名前を呼ばれて振り向く。
クラスメイトが困ったように笑っていた。
「悪い、このプリント職員室まで届けてくれん?」
「ん、いいっすよー」
軽く返事をして立ち上がる。
どうせ暇だし。
それくらいなら全然。
プリントを受け取ろうと手を伸ばした、その時。
「らっだぁ」
また名前を呼ばれた。
今度は教室の入口。
きょーさんだった。
「……?」
「お前やなくてええやろ」
「え?」
「届けるんやったら俺が行くわ」
「いやいや、きょーさんの方が忙しいじゃん。生徒会長だし」
「ええから」
そう言って、俺の手より先にプリントをひょいと持ち上げる。
「え、ちょっ──」
「ほな」
そのまま教室を出ていった。
「……⋯」
教室に沈黙が落ちる。
頼んだ本人も目を丸くしていた。
「……生徒会長って、あんな人だっけ⋯?」
「いや、知らないっす……」
俺も知らない。
なんだったんだ今の。
***
昼休み。
購買へ向かう廊下。
「らっでぃ」
横からゾムが並ぶ。
「今日は購買なん?」
「そー」
「ほな一緒に行こ」
「いいよー」
二人で歩き出す。
階段を降りようとした時だった。
前方を歩いていた女子生徒が、大量のプリントを落とす。
「あっ……!」
紙が階段いっぱいに散らばった。
反射で足が動く。
しゃがみ込もうとして、
腕を掴まれた。
「……え?」
見ると、ゾムだった。
「俺やっとく」
「いや、二人で拾えば早──」
「ええから」
珍しく強い口調だった。
そのままゾムは女子の方へ駆けていく。
「大丈夫か?」
「す、すみません!」
「気にせんでええよ」
二人でプリントを拾い始める。
俺だけが立ったまま。
「……」
暇になった。
⋯何これ。
***
屋上。
昼の風が髪を揺らす。
「今日暑いなぁ⋯」
「もう夏やしな」
きょーさんがアルミ缶を開ける。
俺もフェンスにもたれた。
「……」
なんか。
今日一日、変だった。
プリントも。
さっきも。
そして、この前からナチュラルに屋上に入り浸っているこいつらも。
「どした?」
ぐちつぼがふとこっちを見て、そう聞く。
「んー……」
少し考える。
でも結局、
首を振った。
「なんでもない」
本当に、なんでもない。
困ることじゃない。
むしろ楽だったし。
それなのに。
胸の奥だけが落ち着かない。
今までなら、
当たり前だったことを。
今日は二回も止められた。
『お前やなくてええやろ』
『俺やっとく』
別に。
俺がやらなくてもいいことだった。
だから断る理由もない。
……ないんだけど。
「……変なの」
ぽつりと呟く。
「何が?」
ゾムが笑う。
「いや、」
俺も笑い返した。
「最近みんな変だなって思ってさ」
三人が、一瞬だけ黙る。
風だけが音を立てる。
「……気のせいやろ」
口を開いたのはきょーさんだった。
「そう?」
「せや」
「ふーん」
それ以上は聞かなかった。
聞けなかった。
もしまた、
俺のせいだったら。
そう考えた瞬間、
喉まで出かかった言葉を飲み込む。
夏の空は今日も青い。
その青さだけが、
昨日までと何一つ変わっていなかった。
NEXT=♡2000
この作品だけ♡の伸びが凄くていつもびっくりしてます
優しいみなさんありがとうございます🫶🫶
コメント
4件
「貴方の一番になれなくて」からみさせていただいています!いままでみた話の中で一番お話がわかりやすくて、この話ももちろん大好きで読ませていただいています!個人的にらっだぁの嫌われやいじめが大好きなので(本人がちすまん)、こう言う物語じゃんじゃん書いてくださるの本当にありがたいです…!長文すみませんでした!
どんどん面白くなってきましたね …… ( •︠·͜•︡ ) ついでに全話♡5000行かせときました(
かーりん
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あいびすぺいんと
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