ほどなくして恵が来て彼女も手伝いに参加し、尊さんが帰宅してお土産を持った亮平も現れた。
尊さんは「サシ肉の脂がきつい」というので、彼は赤身肉でのすき焼きとなり、私たちはサシの入ったA4ランクのお肉を「うまいうまい」と言ってつつき、ビールを空けた。
恵にお土産を渡し、車を持ってるから私より頻繁に実家に行ける亮平にも、皆の分のお土産を託した。
「朱里~、今度は私と女子旅しようね~」
酔っぱらった恵が私の腕を組み、尊さんを挑戦的に見ながらわざとらしく言う。
「行く行く!」
そんな私たちを、尊さんはじっとりとした目で見る。
「みと子はハブにするの?」
「ぶっふぉん!」
尊さんがいきなり〝みと子〟と名乗り始め、私は盛大に噴きだしてからテーブルをバシバシ叩いて笑う。
「亮子も連れてって」
亮平も悪乗りしてきたけど、私はスンッと真顔になって「キモい」と言っておいた。
そんな感じで急遽集まってのすき焼きパーティーは和やかに行われ、町田さんが予想していたように、亮平は運転代行で帰り、恵は「パパ活」と言いながら尊さんにタクシー代を渡され、タクシーで帰っていった。
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一週間が過ぎるのはあっという間で、つよつよ女たちによる女子会当日となった。
土曜日のお昼過ぎ、私は東京駅まで行って『シャングリ・ラ東京』のザ・ロビーラウンジに向かう。
ロビーと言うと一階を想像しがちだけど、このホテルはビルの上階にあるので、向かったのは二十八階だ。
私は黒いタートルネックニットに黒いロングタイトスカート、その上にチェックのダブルボタンジャケットを着ていった。
五つ星ホテルに入って緊張していると、窓際の席で春日さんが手を挙げてニコニコしている。
(わ……、二人とも装いがフェミニンだ)
春日さんは髪をハーフアップにして巻き、ヌードカラーのワンピース、エミリさんはアレンジ纏め髪に、紺色に小花柄のついた大人っぽいシフォンワンピースを着ている。
私は一人だけマニッシュになってしまい、「場違いだったかな」とちょっと恥ずかしくなってしまった。
「ちょっとぶり!」
春日さんは立ちあがって私にハイタッチしてきて、どんなテンションなのかよく分からないまま、私もハイタッチを返す。
エミリさんがホールスタッフにアフターヌーンティーの準備を頼んだあと、「元気だった?」と微笑みかけてくる。
「はい。あ、そうだ。先日、尊さんと一緒に札幌に行ってきまして……。ちょっとした物ですが、どうぞ」
私が差しだしたのは、定番の北海道銘菓のお菓子と、尊さんが予約して買っておいた『ボン・ヴィバン』の焼き菓子詰め合わせだ。
女子会があると分かっていた彼は、『お決まりのお菓子に加えて、こういうのもあったほうが喜ぶと思う』と言っていた。さすが、気遣いの人、速水尊……。
「えー? やだ、嬉しい! いいの? 何もしてないのにお土産もらっちゃった」
「ありがとう! 朱里さん。風磨さんと一緒にいただくわ」
二人とも喜んでくれて、私は中身を軽く説明しておく。すると、二人ともめちゃくちゃ感心した顔で頷いた。
「王道お菓子も嬉しいけど、その土地の美味しいパティスリーのお菓子はマジで嬉しいかも。本当に気が利くわね」
春日さんに言われ、私は照れ笑いする。
「あ、いえ。これは尊さんの案なので……。彼にお礼を言ってください。私はただのお渡し役です」
「そうなの? 意外と細やかなのね」
彼女が心底意外……という顔をするので、私は思わず笑ってしまう。
同時に、春日さんの尊さんへの態度の中に、特筆すべきものがなくて少し安心してしまった。
今さらだけど、私が二十六歳、春日さんが二十七歳、エミリさんが二十八歳で、三姉妹みたいな年齢差で、恵や職場の人以外に近い年齢の人とあまり接していない私は、嬉しくてドキドキする。
そのあと、二月といえば苺とチョコレートのアフターヌーンティーが運ばれてきた。
一段目には焼きたてスコーンが三種類、二段目にはローストビーフやスモークサーモンのサンドウィッチ、小さなミニグラタンのパイ、ガラスの器に入った苺と赤ワインのジュレが入ったミニパフェ。
三段目には苺のブラマンジェに苺とその他フルーツのゼリー寄せ、ピンクが可愛い苺のマカロンに、一口サイズの苺のショートケーキ、フランボワーズのケーキ。
女子の夢の憧れと言ってしまってもいいような、可愛いティースタンドを前に、目がハートになってしまいそうだ。
コメント
2件
みと子と亮子🤣ウケ過ぎ🤣🤣🤣 さあ!女子会🍻(*´艸`)💕
楽しいすき焼きパーティーも無事また子と亮子で〆て、待ちに待った女子会✨美人三姉妹目立つだろうな〜