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観察とは、既に通り過ぎた事象を垣間見るだけの行為である、そこに空しさを感じてしまう。
どれ程叫ぼうが喚いてみたりしようが、観察対象に届くことは決して無いのである。
無力だ…… ちきしょうっ! そんな風に感じ始めた私であったが、ここでペトラの冷静な声が私の悔しさを晴らしてくれるのであった。
『んねぇ、レイブお兄ちゃんだって今日出会ったばかりのラマスちゃんを好きになってしまった訳では無いでしょう? 何故そんなに焦って急激に結婚だとか婚約だとか言い出した訳ぇ? その理由を聞かせてくれない?』
ギレスラもこの声に続いた、良いぞっ!
『そうだぞレイブ、ペトラの言う通りお前は昔から直情的に動いたり発言したりする事が多いんだ…… 私とペトラはずっと言い続けて来た筈なのだがぁ? こうしたい、こう思う、そう言葉を発する前に周囲に判る様にそこに至った思いや論理的な帰結について少しは説明しなければ…… 今まで通り周りが戸惑うばかりだろうがぁ…… 違うかぁ?』
『うん、そうそう! 何で結婚しようと思ったのか、それが駄目なら何で婚約を求めたのか、それを説明してよっ! レイブ兄ちゃんっ! でなきゃラマスだって驚くばっかじゃない? 違うぅ?』
なるほどね、唯我独尊、我一人、悟り足り、的なレイブであったが、一緒に時を過ごしてきたギレスラや子供の頃から賢い属性だったペトラも同時進行的に成長して来た訳だぁ……
既に立派なレイブ君係りに育っていた様であった、頼もしいもんだ。
係りさんになんだかんだ言われてしまったレイブ君は俯きがちになりつつもここまでで一番周囲を驚かせる発言をした。
「んじゃあカタボラ! 君が、俺と結婚してくれないかい?」
『ファ? ファファファア~、ナ、ナンデェ~! ッテカ、オス、ドウシダシィ~……』
レイブの言葉は止められない。
「そかっ! まだまだ少数派の性嗜好は一般に認められていないってそう言う事なんだね、残念の至極だよっ! じゃあさ、エバンガっ! 君で良いよっ! 君が俺と結婚してくれっ!」
エバンガの声は裏返っていた。
『あ、ワタクシですかぁ~! でも種の違いですとかぁ~色んな壁がぁ…… 何よりもサイズ的にぃ、サイズ的に無理なんじゃないですかね? 無理ですよね?』
「サイズ、か…… そっか、そう言われてみれば…… 確かに無理かなぁ……」
ここまで我が儘三昧で一切の説明をする事無く言いたい事だけを話し続けていたレイブの口がやや重くなった。
いいぞ、頑張れ、まともな陣営っ!
そんな私の願いが届いたのか、それとも只の偶然かどうかは定かでは無いが、こちら側の皆が一気呵成(いっきかせい)に攻勢を強めたのである。
『そうでしょ? あんまり無理を通そうとしないでよレイブお兄ちゃん! サイズ的にエバンガは無いでしょっ! でしょう?』
『うむ、確かに強引過ぎるぞレイブ、と言うか何で結婚とか婚約とか訳の判らぬ事を言い出したか、レイブ、お前まだ一言もそれについて説明していないじゃないか? 違うまい?』
『ビックリ、シタヨ…… ジャ、ボク、ケッコンシナクテ、イインダヨネ? イイヨネ? イイ? イイノォ?』
『良いのですわカタボラ…… そう言う流れになって来ているのですからね…… それにしても…… レイブ殿、何故こんな話になるのですか? ギレスラ殿が仰る通り、一度確(しっか)りと説明して下さいませんこと?』