テラーノベル
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「ちょ…っ、待って、待ってめめ!」
「…はっ。う…阿部ちゃん、あべちゃん…好き。匂いも、全部」
「ねぇ、一旦落ち着いて!今噎せてたでしょう、大丈夫なの?深呼吸しよ?…ほら」
「んん…、ああ…もう平気。ちょっとだったし、俺若いし」
「年齢は関係ありません。誤嚥怖いんだから…はい吸ってー、吐いてー」
「っ、………ふぅ」
「~…ぁく」
突然開演した情艶劇の幕閉じは、これまた突然だった。
幼子をあやすかの手振りで背中を規則正しく叩く阿部ちゃんは、まるっきりお母さんそのもの。
抗う気など湧くべくもなく、声に添って深く呼吸をつぐ。わざと白い項へゼロ距離で。 息を呑む気配を拾ったが知るもんか、少しは鼻を摘まれた俺の気持ちを味わえ。
抱き締める力を緩め、華奢躯へ掌をねっとり這わせ滑らせる。肩口で留め口付けようと首を傾げた瞬間、終着点が不意に横へ逸れた。
「────あっ!水零れてる…!大変、直ぐ拭かないと!」
「…………へ?」
掴んでいた肩と一緒に全てが消え、間抜けな音が漏れる。驚愕で見開いた目に映ったのは、水溜まりへ駆け寄る愛しい人……そういえばさっきペットボトルを投げたかもしれない。
めめぇ、タオル借りるね、そう言いながらパタパタ動く姿をぼー…と眺める視線がのろのろと下へ落ちた。
…………いや、俺、ガン勃ちなんだけど。
なんで今日に限ってボクサー選んじゃったかなぁ…くっきりはっきりじゃん。
気付いてない訳ない、よね。幾ら鈍くてもさ。 うん、痛い程分かってる。阿部ちゃんの中での緊急度?の順番が噎せる、ラグの染み、俺の俺、だっただけだって。
そこには純粋しかない。阿部ちゃんはそういう人だから。俺が好きになって、一生を捧げてもいいって惚れ込んでる阿部ちゃん像を今目の当たりにして、怒ったり萎えたりあるかっての。現に元気だし。
けど……あ、前にどっかでこれ言ったな。
〝阿部ちゃんじゃなかったらキレてたわ〟
取り敢えず俺もやるか…。頬を膨らませて気合いを入れ、放った記憶があるタオルを回収に向かった。
騒動が落ち着き、現在ソファで一休み中。
早く服着ないとな、とかコーヒー淹れようかな、とかとか色々頭を駆け巡るのに、俺の体は漬物石みたいになっていて動かない。いや、動けない。
拳三個分隣にはしっかり衣服を身に着けた阿部ちゃんが座っている。真っ正面を見据え、背筋をピンと正して。
チラチラ伺っているのに一瞬たりとも視線が絡まないし、微妙~な距離もきっと阿部ちゃんなりの思いやり。
まぁ、だよねぇ…────ガン勃ち継続してんだもん。そりゃそうなっちゃうよねぇ。
気が利くのが裏目に出るってあるんだ、…マジで今しないで欲しかった。
所在なげに組んだ両手を結んで開いてしつつ、ただ流れる時間に審判を委ねる事数分。あ……、耳に届いた微かな囁き。ついに来たか。
綺麗な横顔に立場を忘れて見惚れる。なんか、彫刻っぽいよな…似てるの売ってるか探そう。出来れば1/1スケールのヤツ。
「……で、……なんだ」
「え?え?ごめん、もう一回言って。聞き取れなかった」
「~…っ。だから、好奇心でめめのベッドに寝転がってみたら…めめの匂いがいっぱいして。もの凄くホッとして…、…そのまま寝ちゃったの。…驚かせて、ごめんなさい…」
「ぅお…~~…っっ!!」
な、に…何て言った?俺の匂いがいっぱいで、ホッとして、それをそんな可愛い困り顔で言うの?首も耳も真っ赤っかで美味しそう…ああああ萌える…、もう全身が痛い。特に股間が。ダメだ、耐え…ろっ。
文字通り頭を抱え悶絶する俺を置き去りに何かが動く。反射でそちらへ目をやる。
「……よし。覚悟、決まった」
瞬きを繰り返すそこが捉えたのは、立ち上がった阿部ちゃんがズボンと下着を一緒くたに下ろす瞬間だった。
続
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ルカ🐬💤
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