テラーノベル
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「……以上。本日をもって、監査対象となった役員12名の解任、および損害賠償請求の手続きを完了します」
役員室に私の声が冷たく響く。
目の前の男たちは、もはや怒鳴る気力すらなく、ただ幽霊のように椅子に座り込んでいた。
直樹を駒として使い、私の実家を食いつぶした「毒」の根源を
私はようやく、1円の誤差もなくすべて切り捨てたのだ。
だが、この静寂は嵐の前の静けさに過ぎなかった。
その日の深夜
山積みの書類を片付け、誰もいなくなった本社ビルを出た時だった。
地下駐車場の暗がりから、一台の車が猛スピードで私の前に突っ込んできた。
キィィッ! という耳を裂くようなブレーキ音。
車から降りてきたのは、解任された幹部の一人
そして───。
驚くべきことに、執行猶予中だったはずの直樹の元同僚、佐藤だった。
「詩織……お前さえ、お前さえいなければ…っ、俺たちの人生をめちゃくちゃにしやがって!」
佐藤の目は血走り、その手には短刀のようなものが握られていた。
塀の中の直樹が、解任された幹部を通じて、外にいる佐藤を唆したのだ。
『詩織を消せば、すべては闇に葬られる』と。
「……佐藤さん。ナイフを下ろしなさい。今のあなたの行動、すべて記録されています」
私は震える声を抑え、スマホを掲げた。
だが、正気を失った彼は止まらない。
「うるせえ! 記録もろとも、地獄へ行け!」
彼が私に向かって飛びかかろうとした、その瞬間。
「……そこまでだ」
背後の暗闇から現れたのは、九条さんだった。
彼は一瞬の動きで佐藤の腕を取り、地面に叩き伏せる。
ナイフがアスファルトに空虚な音を立てて転がった。
「九条さん……!」
「言っただろ、詩織。ネズミは追い詰められると噛みつく。……だがあいにく、俺はネズミ捕りのプロでね」
九条さんは冷徹な目で、地面に這いつくばる佐藤を見下ろした。
そして、私の肩に手を置き、静かに告げた。
「安心しろ。直樹が塀の中から指示を出した証拠も、今しがた九条グループの調査チームが掴んだ」
「……これで、直樹の刑期はさらに伸びる。高木も、佐藤も、もう二度と日の光を拝めると思うな」
私は、九条さんの腕の中で、ようやく深く息を吐いた。
恐怖で震えていたのではない。
ようやく、本当にようやく、私の「負債」がすべて回収される手応えを感じたからだ。
「……ありがとうございます、九条さん。でも、私はまだ止まりません。……最後の一行を書き込むまで」
私はスマホのカウントダウンアプリを見た。
直樹は、自分の命を削ってでも私を道連れにしようとしたけれど。
その悪意さえも、私にとっては「さらなる賠償」を上乗せするための材料に過ぎない。
翌朝
私は、病院に収容された佐藤と
再逮捕が決定した直樹のニュースを、陽太の朝食を作りながら聞き流した。
「ママ、おはよ。……なんだか、今日のママ、すごく綺麗だね」
「そう? ……きっと、余計なものを全部、捨てたからね」
私は陽太に微笑み、新しい家計簿にペンを走らせた。
【残り62日】
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