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#仕事
#ざまあ
#裏切り
#モテテク
直樹が私への殺人教唆で再逮捕されたというニュースは、彼の弁護士さえも絶望させるに十分だった。
「……これ以上の弁護は、私のキャリアを汚すだけだ」
そう言い残して弁護士が辞任し、直樹は文字通り、この世でたった一人の味方も失った。
しかし、私の計上する「損害賠償額」は、直樹個人の資産では到底賄える額ではなかった。
(直樹。あなたが最後に隠し持っていた『逃げ場所』……それも、私の帳簿で清算させてもらうわ)
私は、直樹の義父母が住む実家の土地と建物に目をつけた。
その土地は、かつて私の実家から奪い取った金が一部流用されて購入されたもの。
九条さんから渡された裏帳簿の証拠があれば、不法利得としての差し押さえが可能だった。
私は数ヶ月ぶりに、直樹の実家の門を叩いた。
「……何の用だ! 貧乏神め!息子をあんな場所に入れて、まだ足りないのか!」
現れた義母は、かつての私を「金食い虫」と罵っていた頃の傲慢さを剥き出しにして叫んだ。
だが、その声はどこか震えている。
「貧乏神? ……いいえ、私は『執行官』として来ました。お義母様」
私は、裁判所から発行された不動産仮差押命令の正本を突きつけた。
「この家も、土地も、直樹さんが私の実家から横領した資金で賄われています。……直樹さんが私や陽太に負っている賠償金、総額3億円」
「それを支払えない以上、この家を競売にかけ、配当金として回収させていただきます」
「な……っ!? そんなの、認められるわけ……!」
「認められるかどうかは、法廷が決めました。……来週には調査員が来ます。荷物をまとめておいてください。一円の誤差も、一日の猶予も認めません」
義母がその場に崩れ落ちる。
その時、門の外から一人の年配の女性が私に声をかけてきた。
「……失礼ですが、あなたが詩織さんですか?」
見知らぬ女性の目には、深い悲しみと、静かな怒りが宿っていた。
彼女は、かつて直樹が担当していた別のプロジェクトの取引先で
直樹の無茶な発注と未払いのせいで倒産し、夫を自死で亡くしたという「隠れた被害者」だった。
「テレビであなたの戦いを見ました。……私にも、協力させてください。直樹が私の夫から奪ったものを、私も一緒に取り返したい」
私は彼女の手を握った。
私の復讐は、もう私一人だけのものではない。
直樹という「毒」に侵された、名もなき人たちの叫びを形にするための戦いなのだ。
(直樹、あなたが『無価値』だと思って踏みにじってきた人たちが、今、あなたの首を絞めるために集まっているわよ)
私は、泣き叫ぶ義母を背に、その女性と共に歩き出した。
家計簿の「回収予定」の欄には、新たな名前が次々と書き加えられていく。
【残り61日】