テラーノベル
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『みんなの前で頭を下げて・・・全部話して・・・彼はきっと・・・韓国に帰るつもりだわ』
桜の声が、最後だけかすかに震えていた、奈々はしばらく黙っていた・・・いつもなら矢継ぎ早に言葉が出てくる奈々が、珍しく黙っていた
「・・・どうするの?」
奈々の問いかけにやがて桜がスマートフォンの向こうでポツリと言った
『どうするのと言ったって・・・ジンさんが偽装婚を終わらせたいとみんなの前で言ったのよ・・・諦めるわ』
グスンと桜が電話の向こうで鼻を啜った、フンッと奈々が鼻息きを吹いた
「あら!あたしの親友は男の言いなりになるような、しおらしい女だったかしら?」
『・・・そんなこと言ったって・・・』
「(言ったって)じゃないわよっ!それは本当にターザンの本心なの?傍にいて分からなかったの?」
奈々はエレベーターホールの壁から背中を離した、帽子からはみ出たカールヘアをぱっと耳にかけて、背筋をしゃんと伸ばす、受付カウンターに立つ時と同じ、凛とした姿勢だった
「ちょっと聞きなさい、山田桜!」
奈々は目の前にまるで桜がいるように腰に手を当てて彼女を名字で呼んだ、本気の時だけ奈々は桜を名字で呼ぶ
「あなた、入社一年目覚えてる? 社長に企画書を三回連続でボツにされて、それでも四回目を出した人、誰だったっけ?」
『・・・それは・・・』
「あなたでしょうが!!」
電話の向こうでまだグスンッと桜の鼻を啜る音がした
「じゃあこれはどう?入社二年目!!システム障害で徹夜が四日続いた時、最後までオフィスに残ってたのは誰だったっけ?」
『・・・奈々・・・』
「それもあなたでしょうが!」
奈々の声が、廊下にぴしりと響いた、つい熱くなって大声を出していた、会社では勝ち気な性格をひた隠しにしている奈々は慌てて口元に手を当てて、キョロキョロあたりを見回してから、もう一度声を落とす
「あなた、私にターザン社長を愛していると言ったわ!受け身の愛なんてくだらないってね!社長の一番頼れる相手になりたいって!なのに今のあなたはどう?このままいけば社長はみじめに韓国に強制送還!!この会社は悪徳株主達のものになるのよっっ!」
奈々は眼玉をぐるりと回してバカッぽい顔をして言った
「ポーン!ゲームオーバー!!ティファニーも道頓堀のキスも全部ムダでしたぁ~!」
『・・・・・・』
奈々は今度は低い声で言った迫力満点だ
「ほんっとうにそれでもいいの?もう二度と会えないかもしれないのよ?24時間以内に国外退去ってそういうことでしょ?時間がないのよサクッッ!ターザンにあなたの気持ち全部ぶつけた?やった?やりきった?我が人生に悔いはなし??」
ヒック・・・
『・・・奈々・・・』
「戦艦大和よ!永遠のゼロよ、サクッ!当たって砕けろっ!それが大和撫子ってもんじゃないの?」
クス・・・
「ちょっと・・・違う気するけど・・・」
「あら!平成生まれの大和撫子はこうなのよ!」
奈々は鼻息荒く、チラリとフロアを振り返った、社員の混乱のざわめきはまだ続いている、辞任表明の余波が、社内のあちこちでさざ波を立てていた、30階の社長室は今は立ち入り禁止になっている、彼はそこにいる、スマホの向こうで、何かが動く気配がした
『・・・奈々』
「なぁに?」
『・・・ジンさん、何時までそこにいると思う?』
奈々はにやりとした、カーリーヘアをもう一度耳にかけて受付嬢らしく口角を上げた
「今から調べてあげるから、とにかくあなたは早く大阪に来なさいっっ!!」
『うん!!』
「急ぎなさいよ! 飛行機の時間は待ってくれないんだから!」
『奈々・・・ありがとう』
「お礼は学君のカフェの(季節限定フラペチーノ学スペシャル)でいいわ!」
クス・・・
『わかった・・・』
奈々はにっこり笑って言った
「それと、学君といい感じになりたいから協力してね♪」
・.。. .。.:・
コメント
3件
っしゃぁ〜!! よくぞ言ってくれた奈々ちゃん✨️ 持つべきは友だね🤩👍 走れ〜!桜ちゃん💨
そうよ!!メソメソしている場合じゃないわよ!! すぐ行動。 頑張って👍
奈々ちゃんありがとう😭 さすが親友👍 桜ちゃんを目覚めさせてくれたーー🙌 桜ちゃん急いで!!ジンさんに思いを伝えてーーーー!!