テラーノベル
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奈々との通話が切れた後も・・・桜はスマホを胸に押し当てたまま、しばらく動かなかった、厨房の中の静寂が、二人の間に静かに満ちていた
「電話・・・大阪の友達?」
政宗の声はあいかわらず穏やかだった、彼は桜から視線を外すこともなく、ただ待つように立っていた
「うん・・・」
短く答えた桜は、スマホをゆっくりとポケットにしまった、そして深く息を吸い込んでから、改めて政宗と向き合った、その瞳にはもう迷いはなく、静かな決意の光が灯っていた
「政宗君・・・ありがとう・・・その・・・プロポーズしてくれて」
言葉にするのが精一杯だった、感謝と申し訳なさが絡み合って、それ以上うまく続けられなかった、政宗は少し目を細めて桜の顔をまっすぐに見た
「何度も言うよ、俺はもうこれ以上クラちゃんが悲しむのを見たくないんだ」
正宗の言葉には、長い年月をかけて積み重ねてきた想いが静かに滲んでいた、桜は唇をそっと結んだ
「でも私、どんなに辛い思いをしてもジンさんを愛しているの、今からジンさんを追いかけるわ」
言い切ると不思議なほど胸の中が澄んでいった、政宗はしばらく固まった、表情ひとつ動かさないまま、どこか遠くを見るような目をしていた、やがて、一度ゆっくりと目を閉じてから言った
「そっか・・・」
たった二文字だったが、彼の悲しみは桜にもちゃんと届いた、しかし桜にも守らなければならない思いがある、親友の奈々がそれを思い出させてくれた
「これも私の選択よ、険しいと分かってて私が始めたの・・・後悔するより、出来ることに最善を尽くしたい」
語気に力が込もった、奈々の言葉がまだ胸の中で温かく生きていた、政宗はゆっくりと息を吐き、口元に柔らかい微笑みを浮かべた
「クラちゃんらしいね」
その笑みが、少しだけ痛そうだった
「あなたには心から感謝しているわ、政宗君、あなたは私の最高の幼馴染みよ」
桜が深く正宗に頭を下げた
「俺の10歳からの恋心を……感謝で終わらせるなんて……さすがクラちゃんだな」
政宗は空を仰ぐように顔を上げた
「よしっ!そうと決まれば!大阪まで送っていくよ!」
「ええ?いいわよ!バスがあるし」
「最高の幼馴染みなんだろ?その役を全うさせてよ!」
その時、いきなり厨房の引き戸がバンッと勢いよく外れて倒れた
バター―――ンッ
「キャー!」
「わぁ!」
紋付き袴姿のままの松吉が引き戸の上に倒れていた、そしてその上に米吉、誠一郎、すず江、みや江がドミノ倒しのように重なっていた
「パパ!みんな!盗み聞きしていたのね!」
桜が憤慨してみんなに怒鳴る
「いててて・・・」
「誰じゃ!強く押したのは!」
「だっえぇ~私達、さっちゃんが心配で心配でぇ~」
「すまんのぉ~お二人さんの邪魔をして」
誠一郎も恥ずかしそうにえへへと照れる、正宗があきれ顔で目玉を回す
「しかし!聞こえたぞ! 大阪じゃな!?」
松吉の目がキラリと光った
「ワシも行く!」
米吉が即座に手を挙げた
「婿殿袴の丈を直した仲ですもの、最後まで見届けさせてもらいますよ!ねぇ~!みや江さん!」
「そうよぉ~!すず江さん!私達も行きますよ!」
オホホホホと二人で笑う
「待って待って待って!」
桜が両手を広げた
「みんな来る気なの!?冗談じゃないわ!」
「孫娘のピンチにじいさんが動かずしてどうする!桜をフルならジンさんの口からハッキリ聞くかんとな!」
米吉が腕まくりをしながら言った
「おじいちゃん!ジンさんの名前覚えたの?」
桜がびっくりして言った
「俺が運転しますよ、山田旅館の大型バンならみんな乗れますよ!」
あきらめ顔の正宗が肩をすくめて言った
「さあ! 出発じゃ!」
松吉が声を張り上げた、山田旅館の廊下にどたどたと足音が響き渡る
コメント
3件
よしきた!行けーーっ🚍️💨 恩に着るよ政宗😌🙏 君に幸あれ✨️ ジンさん待ってて今みんなでなだれ込むから〜📣
政宗ーーいい男だ😭 おじいちゃん始め皆さんでジンさんを助けてー!!桜ちゃん頑張って👍 いざ出発!!
皆んなで押しかけて強制退去を阻止して‼️お願いします。