テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
彼女の瞳が潤み、顔をクシャクシャにさせると、両手で顔を覆い、繊麗な肩が震えた。
「…………の……せいだ…………私の…………せい……だっ……っ…………ううぅぅっ……」
小刻みに震えていた肩が次第に大きく震え、咽び泣く瑠衣。
「私が…………あんな我儘…………言った……か……らっ…………ううぅっ…………っ」
「…………自分を責めるな」
侑は腕を伸ばし、瑠衣を強く抱きしめた。
背中と頭を撫で、震え続ける身体を落ち着かせるように。
「彼女は恐らく、娼婦と客を全員避難させるため、あの炎が燃え盛る中、二階へ見回りに行ったんだ。自分の職務を全うするために。俺はそう考えている。だが、オーナーも含め、あの火災の犠牲者は四人となってしまった」
「…………」
瑠衣が身じろぎさせると、侑の筋張った首に顔を寄せた。
「九條。お前にとってオーナーの女性は、娼館での家族のような人だったんだろ?」
首筋あたりがモゾモゾと動き、瑠衣が肯首したのを感じる。
「ならば、彼女のためにも生きろ。月並みだが、自分の命を粗末にするような事だけはするな」
「…………はい」
蚊の鳴くような声で答えた瑠衣に、侑は無言で彼女を腕の中に包み込む。
ひとしきり互いの肌の温もりを感じた後、ようやく瑠衣が落ち着きを取り戻してきた。
「…………そろそろ上がるぞ。いいな?」
瑠衣を支えながら立たせて、バスルームを出る二人。
着替えて髪を乾かし、パジャマを着た瑠衣が表情を消しながら侑に視線を這わせている。
「どうしたんだ?」
「…………」
黙ったままの瑠衣に、侑は前髪を掻き上げながらハァッと息を吐き出した。