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「娼婦の『愛音』の時の積極的な部分は、どこに行ったのやら……」
無意識のうちに独りごちていると、彼女がムキになって言い返してきた。
「だってあれは!! ……仕事…………だ……し」
言うと瑠衣は再び黙り込む。何かを言いあぐねているようだったが、侑は敢えて意地悪な事を口にする。
そんなつもりは毛頭ないのだが。
「俺は一階のリビングで寝る。お前は俺の寝室で寝ろ」
すかさず顔を上げた瑠衣が、困惑したような顔をさせ、眉尻を下げている。
瞳を潤ませ、同伴した時に見せた、あの懇願するような眼差しを侑に向けた。
「そっ……それは…………嫌……だ……ぁ、嫌……です……」
尻窄みに言いながら瞼も伏せていく瑠衣。
「ならば、お前の口からはっきり言え。言わないと分からん」
湯上がりで熱っている瑠衣の顔が、更に紅く色付いていき、小さな唇を震わせつつ、彼女がポツリと零した。
「一人じゃ怖い…………から……先生と…………一緒に……寝た……い……」
やっと瑠衣から発せられた言葉に、侑が微かに唇を緩ませた。
「一緒に寝たいと? セックスはさっきしたよな?」
ニヤリと笑いながら七つも下の女を揶揄う侑は、根が子どもなのだろう。
更に顔を紅潮させ、唇をわなわなさせながら怒りを抑え込んでいる瑠衣に、流石にマズいと感じた侑は、彼女の手を取った。
「…………すまない。悪い冗談だった。寝室に行くぞ」
と言いながらベッドルームへ彼女を促す。
鎮座するダブルベッドに目を見張る瑠衣をよそに、侑は細い手首を引き、彼女を横にさせる。
「…………お前、意外と甘えん坊なんだな」
そっと抱き寄せ、瑠衣を腕の中に閉じ込めると、侑の言葉で彼女の頬がぷっくりと膨らんだような気がした。
「…………何もしないから安心しろ」
二人が眠りに堕ちたのは、もうすぐ夜明け、という時間だった。