テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
とりあえず、これで今日やるべきことをしっかりと終わらせることができた。
ちょっと気が抜けたのか、ほっと胸を撫で下ろす。そして、椅子に座ったまま目を閉じ、これまでの人生を振り返った。
俺の人生は決して順調とは言えなかった。お酒を飲みに行く悪癖を直せば少しは違ったのかもしれない。
だが、お酒を飲みに行く時間も、俺にとっては大事な栄養補給の時間なのだ。もちろん体に関してではない。心の栄養補給だ。
そう。あの場所は俺の自尊心や自己肯定感を育んでくれる場所なんだ。
そうでもしないと、きっとすぐにでも人生をギブアップしてしまうかもしれない。それ程にギリギリの精神状態の中、俺は日々を乗り越えているのだ。無理を承知で。
それでもがむしゃらに、そして腐ることなく頑張っていれば、きっといつの日か報われるはずだと。そう信じていた。
いや、腐りきっているというよりも、腐り始めていると言った方が正しいのかもしれない。が、しかし。これだけは理解している。俺の真面目なのか適当なのか、よく分からない生き様と性格は、決して立派なものではないということを。
「はぁ……。俺、ちゃんと報われるのかな」
そんなことを独りごちり、深い溜め息をつく。やることが終わったせいで現実に戻ってしまった。そんな感覚だ。
「まだ早いけど、そろそろ行くか」
マイナス思考を断ち切るため、俺は大木との約束の場所に行こうと椅子を立ち上がっる。
そして着替えを済ませ、財布と煙草、スマートホンをジャケットのポッケに入れた。手ぶらなのが一番楽だ。バッグだのなんだのを使うスタイルが、俺は嫌いだ。煩わしいんだよ、あれ。
「うん、忘れ物はないな」
それを確認したところで、俺は早々に家を出たのであった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!