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スタートヽ(*^ω^*)ノ




少しずつ、カーテン越しの会話のキャッチボールが増えていった。

憂鬱だと思っていた入院生活が、いつの間にか楽しいと思えるようになった。


『今日からリハビリが始まるんだー!』

ベッドに腰掛けながら、元気よく隣のレトルトに話しかける。

『やっと動けるぜー』


返ってきたのは、小さな声。

「……頑張ってね」


その声に、キヨは大きく頷き、心の中で少しだけ安堵する。


数時間後、リハビリを終えて戻ってきたキヨは、疲れ切って無言のままベッドに横たわった。

そして、かすれた小さな声で、レトルトに話しかける。



『全然歩けなかった……』


そうこぼしたキヨに、レトルトは静かに

「そっか」とだけ返した。


その日から、キヨのリハビリは毎日続いた。

朝、ベッドから起き上がると

『今日も頑張るぞー!』

と元気よく声を出すキヨに、カーテンの向こうで小さく

「頑張ってね」

とレトルトが返すのが、二人の恒例となっていた。



ある夜。そんな日々が続いたある日のこと、キヨはそっとレトルトに声をかけた。

『レトさん……?寝てる?』


レトルトは起きていた。だが、無言のまま返事をしなかった。

いつもと違う、弱々しい声。

レトルトは何かを感じ取り声を出さずにいた。



深く息を吸って吐く音と共に キヨは声を殺しながら、涙を溢し始めた。

思うように動かない足。リハビリが上手くいかず、焦りと苛立ちが入り混じっていた。

『なんで….歩けないんだよ……』

悔しさで声を殺して泣くキヨの隣で、レトルトは静かに、その泣き声を聞いていた。




次の日の朝。

キヨはいつも通り元気に、ベッドの横で

『おはよう!レトさん!』と声を弾ませた。


カーテンの向こう側、レトルトは静かに聞きながらも、昨日の涙を知っているからか、いつもとは少し違う言葉を選んだ。


「キヨくん……焦らずに頑張ってね。無理しないでね」


それは、これまでの「頑張ってね」という短い一言とは違い、労いと気遣いが含まれた、優しい言葉だった。


その言葉を聞いたキヨは泣きたくなる様な、でも胸がふわっ温かくなるような不思議な感覚に包まれた。


その短いやり取りの中に、二人だけの静かな時間が流れていた。



その日から、少しずつだが、レトルトとの会話に変化が現れ始めた。


朝の挨拶やちょっとしたやり取りの中に、キヨを気遣うような言葉、支えるような言葉がちらほらと混ざるようになった。


「キヨくん、今日は無理しないでね」

「休みたい時は遠慮せず言っていいんだからね?」


それは、いつもの短くそっけない返事とは違い、優しさと温かみが宿った言葉だった。


キヨは、そんな言葉のひとつひとつに胸が高鳴るのを感じ、憂鬱だった日々が、少しずつ柔らかな光に包まれていくように思えた。



続く



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