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5話目もよろしくお願いします!

スタートヽ(*^ω^*)ノ






カーテン越しに向かい合う二人の時間。


キヨは明るく、自分の学校生活のことや趣味、家族や友達の話を次々と話した。

『この間の体育祭、めっちゃ盛り上がったんだよ!』

『休みの日は友達とゲームしたりしてさ!最近は青鬼ってやつにハマってんだ!』



いろんな話をするキヨとは対照的にレトルトは相変わらず短い言葉で返すだけで、窓の外の景色のように静かで、何も語らない。


意を決したキヨは、少し勇気を振り絞って尋ねてみた。

『じゃあ、レトさんは?学校とか、友達とか、趣味とか…』


カーテン越しに沈黙が流れたあと、レトルトは初めて自分のことを語り始めた。

「…俺は、元々体が弱くて、ずっと病院にいる」

その声は今にも消えてしまいそうな程、小さく弱々しかった。


「両親は共働きで、俺のことはほとんど構ってくれない。入院も退院も、全部病院任せ」

「友達も、いない」


その言葉に、キヨの胸はぎゅっと締め付けられるようだった。

今まで見てきた静かなレトルトの存在が、こんな孤独と寂しさの中にあったなんて—。



「友達…いないんだ」

レトルトの小さな声に、キヨはすぐに反応した。


『え、ちょっと待ってよレトさん!

俺は友達じゃないの?』

カーテン越しに明るく声を張るキヨに、レトルトは思わず「え?」と声を漏らす。


『ほら、毎日こうして話してるじゃん!俺たち、友達だろ!』

キヨの言葉には自信と温かさが溢れていた。


カーテンの向こうで、レトルトは少し戸惑いながらも、嬉しそうに、そして少しだけ恥ずかしそうに小さく「うん…」とつぶやいた。

キヨの胸は思わず弾んだ。


『へへ!俺たち、友達だな!』

キヨは嬉しさのあまり声を弾ませながら、カーテン越しのレトルトに向かって笑った。


「でも…あの、そんなに大きな声出さなくても…」

レトルトは少し赤らめながら、そっと返す。


『あわごめん、つい嬉しくて。でも、毎日会話してるのに、俺だけが友達って思ってるんじゃないかって不安だったんだ』

キヨは素直な気持ちを吐き出す。


カーテン越しに、レトルトはしばらく黙っていた。やがて小さく

「キヨくんは…友達だよ」と、でも少し照れた声で返す。


その声にキヨはにやりと笑い

『じゃあさ、もっとお互いのこと、いっぱい話そうぜ!』

と提案する。


「…うん、話してみようかな」

レトルトの声には、これまでにない柔らかさと、少し期待するような響きが混じっていた。



その時キヨは心の中でそっと誓った――

『レトさんのこと、もっと知りたい。親友になれるくらい、仲良くなるんだ!』




翌日、キヨはまた元気いっぱいにカーテン越しのレトルトに話しかけた。


『ねぇ、レトさん!今日さ、廊下で看護師同士が喧嘩しててさ!それが面白くてさ〜!』

キヨは腕をぶんぶん振りながら、思わず笑い声をあげる。


「…ふふ、そんなことあったの?」

レトルトの声は少しだけ笑みを帯びていた。

普段は無口で静かな彼の笑い声に、キヨは心の中でガッツポーズ。


『そうそう!そしたら喧嘩の声に他の患者さんとかが驚いて大騒ぎになってたんだよ』

キヨは手を広げて大げさに身振りをつける。


カーテン越しに、レトルトはそっと息を漏らす。

「ふふ…キヨくん、ほんと元気だね」

その小さく穏やかで優しい声に、キヨの胸はドキッと跳ねた。



キヨは常に、どうにかしてもっとレトルトを笑わせられないかと考えていた。



『ねぇ、レトさん!昨日さ廊下でいつもうるさいあの看護師が盛大にこけててさ!ざまぁみろって感じでさ!まじ漫画みたいで面白かったわ〜』


レトルトは小さく、でも確かに笑った声を返す。

「…ふふ、そんなに面白かったの?」

その声に、キヨの心はまた跳ねた。


(レトさんの笑った顔….見てみたい)


キヨはついカーテンに手をかけて、レトルトの顔を覗こうとした。

その瞬間――


「開けちゃダメ!」

いつもは静かな声のレトルトが、突然大きな声を出した。


キヨはびっくりして手を止める。

『えっ、レトさん!?』


カーテンの向こうから、レトルトの小さな声が漏れる。

「…見られたく…ないんだ」


キヨの胸がチクリと痛んだ。

少し距離を縮めたと思ったのに、レトルトの言葉でまた遠く感じる。



静かな病室の中、縮まったり離れたりする距離に、二人の気持ちは少しずつ絡まり合っていった。




キヨの心は、日に日にレトルトの顔を見てみたいという思いでいっぱいになっていった。


カーテン越しに聞こえる、あの優しい声――「キヨくん…」

そのたった一言で、キヨの胸はぎゅっと締め付けられる。

声だけじゃなくて、その声の主の顔を見たい。

その表情を、自分の目で確かめたい。


だけど、あんなに強く「開けちゃダメ!」って言われるなんて、キヨは思ってもみなかった。

拒絶されてしまったあの瞬間が、頭の中で何度もリプレイされる。

でもそれでも、どうしても見たい――その思いは日に日に募るばかりだった。


ベッドに座ったまま、カーテンの向こうの影を見つめるキヨ。

その影の奥に隠された表情を、想像するだけで心が跳ねる。


声を聞くたびに、ますます知りたくなる。

その優しい声で自分の名前を呼ぶ、レトルトの顔を—。



続く

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初コメ失礼します!魑魅魍魎さんの小説いつも楽しく拝読させて頂いております!今回もすごく面白いです!これからも頑張ってください、!

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