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仲の良い男女のグループの一人だった。自分は人見知りで、最初はみんなと話せなかった。でも、が声をかけてくれた。笑って、「一緒にいこ」って言ってくれた。それがきっかけで、少しずつ友達が増えて、一人、また一人と集まって。気がつけばグループができていた。
素のままでいられるけど、どこか線を引いた関係。
みんな自分自身のことを全部知ってほしいけど、近づきすぎてほしくない。そんな、不器用な距離感だった。
そのグループは、恋とは無関係だった。
一緒に騒いで、一緒に笑って、遊んで。恋の匂いなんてなくて。だから居心地がよかった。きっとそうだったんだろう。
でも。
その中の一人が、友達のことを好きになった。
だからその人は、このグループに入った。連絡先を知った。頼りになる人でいた。
それを聞いた時は、一途でいい話だな、と思った。最初は。
でも、それをきっかけにグループの中は分かれていった。
恋をした人。
恋を騒ぎ立てる人。
応援する人。
傍観者。
事情を知らない人。
嫌がる人。
そして、中間者。
誰の味方にもならず、ただ話を聞くだけ。誰かが怒れば宥めて、誰かが泣けば慰めて。自分の意見なんて言わなかった。
一番卑怯な人間だと思った。
騒ぐ人達と応援する人達は、作戦を練った。
傍観者は気にせず二人の間に入っていた。
恋をした人は、勇気を出して告白した。
でも、友達は断った。
それでも、恋した人は諦めずに告白を繰り返した。
周りは囃し立てた。
恋愛漫画みたいだった。
仲の良いグループが、友達から始まる恋。それぞれに役があるみたいだった。
そんな光景を見て自分は嫌だな、、って思っていた。
だって、自分はこの光景を見たくなかった。
このグループは、知り合い以上友達未満、恋人未満の不器用な関係でよかった。
わがままだとわかってたけど。困らせたくはなかった。馬鹿な自分だと思った。
少しずつ、グループはバラバラになりかけていた。
漫画みたいに、これをきっかけに仲が深まるなんてことはない。
そんな奇跡なんて存在しない。
別に恋をすることが悪いんじゃない。恋なんてその人の勝手だし。
だからといって、上手くいくとは限らないよ。
だって、自分は知ってるから。
だって、この立場だからこそ知ってるよ。
嫌がる者は友達だって。
友達は、その人をそんなふうに思っていなかった。
本人は困っていた。
告白されたことにショックを受けていた。グループの仲の良い人、だからこそいたんだよ。友情から恋愛には成り立たなかったんだよ。
だから、応援する人とも、騒ぐ人とも、告白した人とも、距離を置くようになった。
だって、諦めないのは、友達にとっては辛いことだった。
「付き合えば変わる?好きになってください?」
そんなの無理だって、泣きながら自分に話してくれた。
「好きじゃない」って。
だから、傍観者は恋愛事情に興味が無かった。
だって、友達が困っていることを知っていたから。
わざと二人の間に入って、壁になっていたんだよ。
応援する人側からすれば邪魔者。
友達からしたら頼れる者。
事情を知らない人は話さなかった。
それはそれで仲間外れみたいだったけど。
だって、それ以上知られたくなかった。それ以上周りに広めてほしくなかったからだから言わなかった。
だって、自分は中間者だから。
だって、自分は卑怯だから。
全部知ってるよ。自分がみんなのそばに居れたのは自分自身の意見を言わないから。
だって、言わないほうが良いんだもん。
だって、自分も、その人のことが好きだったから。
友達に恋した人が好きだった。
気づかれないように笑って。
気づかれないように距離を取って。
ただ、みんなと同じように過ごした。
だって、この関係を壊すのが怖かった。自分の事を教えない卑怯で馬鹿だったから。
でもね。
嬉しかった。
遊園地、カラオケ、夏祭り、色んなところに誘われた。
全部、楽しかった。
そして、知らなかった。
全部、友達を知りたいから誘ったんだって。
だって。
あんなに自分の事を話しかけてくれた。誘ってくれた。よくお菓子をくれた。自分のため、じゃない。自分が行けば友達が必ずいるから。自分が誘えば必ず友達は首を縦に振るから。そのお菓子も友達と食べて、意味を持っていた。
だって。
恋した人が告白したことを打ち明けた時自分も、近くにいたんだよ。
平然と立っていたけど驚いていたんだよ。
だって。
まさかそう思わなかった。
正直、もう、なんでもよくなった。もう、その瞬間、どうでもいい気がした。
だって。
言えなかったんだ。
言ってしまえば、壊れるから。
この関係が、壊れてしまうから。
だから、自分は中間者のまま。
卑怯なまま。
だって――好きだから。