声の主の姿を確認する。ライトを持った警察官だった。
「えっと、その……」
突然のことに動揺が隠し消れず、言葉に詰まってしまった。疑われて捕まったりしないだろうか。心配が一つ増えるたび、つまりが余計に酷くなっていく。
「あっ、びっくりさせちゃってごめんね。俺は警察官の💜🐰」
彼は警察手帳をはっきりと見せてくれた。それでも私は、不安と安堵の混ざった感情を抱えたままでいた。
だが次の瞬間、私は自分でも驚いてしまうほどにスラスラと話し出していた。まるで何かに囁かれたかのように。
「そっか、大変だったね。じゃあ俺は直で帰るから、家に来てみないかな?」
💜🐰は穏やかな表情でそう言った。信じてみてもいいのだろうか。そうするにしても、流石に他人の家にこの姿で行くのは申し訳ない気がする。私はボサボサの髪を撫ぜて考えた。
「うちに来たからにはもう家族だからね。そんなに礼儀正しくしなくて大丈夫だよ」
きっと警察官という肩書きからくる使命感に過ぎない。私は氷の如く、期待を無にしてついていった。
案内されたのはどう考えても常人は住めない豪邸。一人で暮らすにはどう考えても広すぎた。大量のペットでも飼っているのだろうか。にしては鳴き声が何一つ聞こえないが……
ドアを開けると長い廊下が続いていて、左側には大きな両開き扉と階段、右側には片開き扉がいくつか連なっていた。💜🐰は両開き扉を開けた。リビングだった。
「ただいまー!」
するとあちらこちらから「おかえり」と声がした。一体何人の人が住んでいるのだろうか。私は部屋を見回すと、見覚えのある人物が何人か目に留まった。
クラスメイトの💛🐹と❤️🐶。
隣のクラスの🎈。
そして、集会で何度か姿を見た生徒会長、😉。
「えっと、人、多くありません……?」
私は思わずそう零していた。💜🐰は笑ってそうだよね、と同意し、住んでいる人をリビングテーブルの周りに集めた。
ざっと数えただけで15人、大人から私と同じくらいの歳の人まで様々だった。
「あ、えっと💜🐰さん」
😉が小さく手を上げた。普段は透き通った海色の瞳が濁って揺れている。
「まずはご飯とかが先じゃないかな」
その言葉に私は背筋が凍りついた。
どうしてわかったのだろうか。家でのことは誰にもバレないように隠し通していたはず。いやそもそもわかっているとは限らない、ただの偶然だろう。
「あ、お腹空いてなかった? ごめんね」
そうして彼は苦笑いを浮かべる。私はなんだか全てを見透かされているような気がした。
「ま、食いたくなきゃ残していいから。なんかリクエストとかある?」
黒髪に赤いメッシュの入った人がエプロンを着けながら話しかける。確か生徒会副会長だったような……
でも食べたいものはなぜか浮かんでこなかった。
「あ、じゃあ適当に余りとかで。私も手伝いに行きます」
「いや、座ってて大丈夫。それでいいなら、じゃあ温めっか」
彼がIHヒーターのスイッチを押した瞬間、私は反射的に立ち上がっていた。
今までの光景が一気に蘇る。
そして私の視界はぐにゃぐにゃに歪んで__。
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