コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「エトワール様!」
「ブライトっ」
皇宮に着けば、私を見つけ駆け寄ってきたくれた、ブライトと合流することが出来た。彼は、私達を見つけると、すぐに近寄ってきて、大丈夫だったかなど、心配の声を上げてくれる。一日も経っていないのに、顔がやつれていて、本当に心配してくれたんだなあと思うと同時に、皇宮で何があったのか、疑問が浮かんでくるばかりだった。
「もしかして、何かあった?」
「いえ……僕は、殿下の部屋でずっと待機させられていましたから。ですが」
「うん?」
「皇帝陛下が……などと、少し荒れていたようです。何があったかは、詳しくは知りませんが。ああ、今は落ち着いています。ですが、殿下は、まだ目覚めていません」
「そう……」
ブライト曰く、リースは、一命は取り留めたものの、まだ眠っているらしい。毒が抜けたのは、もしかしたら、悪魔召喚によって、宿主の魔力が切れてしまったことによるものなのかも知れない。それについては、ブライトは何もいっていなかったから、こちらから言うつもりもないし、聞かれたとしても答えるつもりはない。
ベルのことは黙っておいた方が良いだろう。だって、匿うのも罪に問われるんだし。
(これ以上、罪が増えるのも嫌だからね……)
もう、ベルに関しては、完全なる罪だって認めているけれど、それ以外は全くの濡れ衣で、ブライトもリュシオルも、濡れ衣を着せられているだけだし。
ブライトの言葉にあった、皇帝陛下が……の言葉は、気にならないわけじゃない。というか、気になって仕方がない。でも、ブライトは何も知らないといっているから、これ以上する事は出来ないわけだし。
困ったなあ……
皇帝陛下だけが単独で動いているのならまだしも、嫌な気配が、皇宮に漂っている気がして。それが、エトワール・ヴィアラッテアだったら、って考えると不安になってしまう。
でも、魔法を嫌う皇帝陛下が、エトワール・ヴィアラッテアの言葉に耳を貸すだろうか……
(いや、もしかしたら、変装しているのかも知れないし……)
魔法は嫌っても、聖女や女神については信仰があるようで。皇帝陛下は、聖女のことをさぞ気に入っているとか。勿論、伝説の聖女と同じ容姿の、だが。だから、私じゃなくて、トワイライトの言葉なら聞くかも知れない。けど、私の事以外っていう条件付きで。
(……まだ、リースは)
毒が抜けても、目が覚めないってかなり大事のような気もするし、それもあって、私の処分をどうするかって話し合っているのかも知れない。確かに、気付けなかった私にも、暗殺に関与していないと言え、聖女なら、守れただろうって責められるかもだし、そこは認めるつもりである。そこをつかれたら痛いって分かっていても、守れたらって、考えると、眠ることさえ出来ない。
「ブライト、ありがとう」
「いえ、何も力になれずすみません」
「力にって……そんな、リースを見ててくれただけで十分だよ。私の……ううん、未来の皇帝だもん。彼がいなくちゃね……もっと、ラスター帝国をよくしてくれるかも知れないし」
皇宮の中で、皇帝陛下を侮辱したらどうなるか末恐ろしいので出来ないが、そういう意味は込めて、いったつもりだ。そう言うと、ブライトの顔は少しだけ明るくなって、「そうですね」と微笑み返してくれた。前よりも、優しい笑みを見て、私もほっとする。彼がそんな風に笑えるようになったことが、何よりも嬉しかった。
ここに、混沌……ファウダーはいないけれど、彼らが、兄弟として共存できる世界があればいいなって思う。過去に戻ったら其れができるかと言われたら、微妙だけど。少なくとも、共存できる世界になれば良いし、なるように、私だって何かしたいとは思っている。
戻ることなんて出来ないし、それこそ、禁忌だけど。
「エトワール様は、その、怪我とかありませんでしたか?」
「うん、ありがとう。大丈夫。だって、この二人連れて行ったんだもん。頼りにしてるの」
「そうですか」
ね? と言えば、後ろに控えていた、ラヴァインとグランツは何処か誇らしげに胸をはっていた。まあ、頼りになるって言うのも、二人がいれば安心っているのも、全然嘘じゃない。というか、この二人がついてきてくれたからこそ、何と叶ったという方が大きい。私は何も出来ていない。聖女って言うこの器が、全て解決してくれたような、そんな感じだったから。
二人がいなかったらどうなっていたか。
(まあ、まず、グランTヌガ一人でもいくとか言い出しちゃったんだけどね)
グランツはあんな啖呵切ったけど、大サソリ相手だったらどうなっていたか分からないし、かといって、グランツがいなかったら、ラアル・ギフトと戦うのに苦戦しただろうしで、矢っ張り彼一人では、難しかったように思う。勿論、私とラヴァインだけでいっても苦戦を強いられたのは変わりないと思うし。
人間に対して、容赦のないグランツが、魔法無効化出来るグランツがいたからこそ、どうにかなった部分はあるわけで、そこは凄く感謝している。
「エトワール様が、無事なら、それで……お二人方、本当にありがとうございました。僕が、お礼をいうのは、違うかも知れませんが、エトワール様を守ってくださって……本当にありがとうございました」
と、ブライトは二人に感謝の言葉を述べた。
ラヴァインとグランツは顔を見合わせた後、そんな感謝の言葉はいらないというように、ブライトを見る。別に受け取っていないわけじゃないし、その言葉にピキッときているわけじゃないのだろう。
ブライトとて、私のこと……というよりは、目覚めて、私に何かったら、リースに何を言われるか分からないって言う恐怖というか、自分はリースの元をはなれちゃいけなくて、でも私を危険な場所に行かせたと知られたら、見たいな、そんな感情の表れだろう。
まあ、それでも、心配って思ってくれているのは変わりないし、この三人に共有する感情ではあるわけで。
「さっきも言ったけど、ブライトに私は感謝してるよ。ブライトが、あの場を離れたら、リースがどうなっていたか分からないし、彼の側にいてくれたこと、守ってくれていたこと、私は凄く感謝しいている」
「エトワール様……ですが、半分は、監禁為れていたようなものです」
「だとしても……監禁?」
「はい」
と、ブライトは頷いた。苦しそうに、眉をひそめて、自分の情けなさを責めているようだった。
監禁……それは、皇帝陛下の指示なのだろうかと。
「災厄が終わった後、僕の家はかなり責められました。混沌を匿っていたこと、忠誠を誓っていた、父上が裏切ったこと……それら全ての責任が、現侯爵である、僕に。受け止めるつもりではいましたし、ずっと背負っていく罪だと、僕は思っています。罪を背負って生きる覚悟は出来ていました。しかし、やはりといってはあれですが、皇帝陛下の信頼を全て失う形になってしまったのです」
「……でもそれは、ブライトが全て悪いって訳じゃないじゃん。だって、いっちゃあれかもだけど、ブライトのお父さんが裏切ったのは、ブライトのお父さんの責任で」
「そういうのも、全部その家の長にまわってくるものなんだよ。エトワール」
「ラヴィ?」
口を挟んだのは、ラヴァインだった。彼は、全てを知っている身として、いっている、と、そんな風なオーラが出ていて、私は、口を閉じるしかなかった。ラヴァインは、次男だし、まあ、公爵の座をかけて争っていたっていうのもあれだけど、多分、アルベドが家を継ぐことになるだろうし。現状どうなっているかは分からないけど。
ブライトは分かっているという意味も込めて、少し視線を落とす。
「辛くても、自分の罪じゃなくても、家の罪として背負うのが常識。まあ、そこに理不尽も色々重なってくるよ。でも、貴族ってそういうもの」
「ラヴィは、それでも、公爵になりたいの?」
「色々ね。まあ、あるンだよ。俺は俺のしたいことがあるから、公爵になりたいわけだけどさ」
「そう……」
その、連帯責任的なものは、どうなのかと思った。確かに、虐めだって、傍観していてもそれが虐めだし、一人の生徒が虐められて、傍観していれば皆虐めに関与したって連帯責任というか……まあ、それは違うのかもだけど。
でも、ブライトが背負うにしてはあまりにも大きすぎるものというか。誰かが、肩代わりできないっていうのも辛いし、誰にも頼れないというのもあるし。けれど、ブライトの家は、代々、ラスター帝国を支えてきた貴族であって、そんなすぐに切り捨てても良いものなのかと。それぐらい、大きな罪だったのかも知れないけれど。
(でも、それって、皇帝陛下の感情というか、あまりにもことを一気に勧めすぎじゃない?)
そう思えるくらい、皇帝陛下の権限というか、言葉というか、ブライトにかしたものは、あまりにも大きくて、酷いものだと。貴族だから、皇族には逆らえないとか、声を出せないって言う気持ちもあるけれど、その制度はどうにか変わらないものかと思ってしまった。
変わらないから仕方ないで、すまされるのかと。
「大丈夫ですよ。エトワール様。これは、僕の家の問題なので。僕がどうにかします」
「でも、こんなのって」
「よくあることなんですよ。僕の家だけじゃない。ヘウンデウン教と繋がっていた貴族は、少なからず、同じ罰を受けています」
「他にもいたの?」
「把握はしきれていませんが。過去にも色んな問題があったみたいですし、これは、ぼくらの問題なので。エトワール様は」
と、やんわりと、線を引かれてしまった。確かに、聖女と貴族は違うだろうけれど。
仮にも、皇太子殿下の命を繋いだブライトを監禁だなんて、あまりにも酷すぎる。
そんなことを思って、拳を振るわせていれば、何人かの騎士達が、ぞろぞろと私達の方へ歩いてきた。
「エトワール・ヴィアラッテア聖女、戻られましたか。皇帝陛下が、お呼びです」
「皇帝陛下が……」
無事でしたかも、まあ、何もない。ただ用件だけを一方的な話した騎士達は、ご同行お願いしますといって、歩き出す。ついてこいと、そして、私の周りを囲んで。
グランツははじき出されたが、ラヴァインは何故かついてこいと、彼も一緒について行くことになった。自分の置かれた立場、そして、皇帝陛下のあまりのも自己中というか、自分勝手な行動に、私はイラけがさしつつも、従順なフリをしてついて行くことにした。
「エトワール様」
「大丈夫。グランツ、戻ってくるから。安心して?」
飼い主に置いていかれる犬のようなかおをしたので、私は、グランツを安心させるような笑みを浮べ、その数秒後には、彼に背を向けて歩き出した。