奈美が予約してくれたイタリアンレストランは、とても雰囲気のいいお店だった。
仄暗い間接照明で包まれた店内に入ると、目の前にはバーカウンターがあり、左右それぞれの通路に行くと、個室が数ヶ所ずつ設けられている。
個室の入り口は洞窟をイメージさせ、カーテンを開くと、中は予想以上に広く、壁にはモダンなイラストが所々に飾られていた。
テーブルの上にはキャンドルが灯され、暖かい色彩の光が二人を照らす。
「カンパーイ!」
ランチタイムというのもあり、恵菜と奈美は、ウーロン茶で乾杯した。
キンッとグラスを合わせた時の乾いた音が個室に響き、二人はドリンクを口に運ぶ。
「あ、そうそう。奈美の結婚式、行けなかったから、これ。結婚祝いね」
恵菜がテーブル越しに、恭しく差し出すと、奈美は予想もしなかった事なのか、アーモンドアイを丸くさせている。
「やだ恵菜! 気を遣わなくていいのに……」
「奈美の結婚式、すごく行きたかったのに行けなかったし、今日会った時に、結婚祝いは渡そうって決めてたから、受け取ってくれる?」
「もう恵菜ってば……! 本当にありがとう! ねぇ、開けてみてもいい?」
顔を綻ばせながら、恵菜からのプレゼントを受け取る奈美。
「もちろん!」
奈美がショップ袋から包装されたギフトを取り出し、丁寧にラッピングペーパーを剥がしていくと、レトロなデザインのフォトフレームに、笑顔の花が咲いた。
「うわぁ……! 素敵なフォトフレームだね。恵菜、本当に……ありがとう……!」
目を細めてフォトフレームを見つめている奈美が、恵菜には尊く感じる。
その後、タイミングを見計らったように、失礼致します、と店員が声を掛けてきた。
テーブルの上に、美味しそうな料理が、次々と乗せられていく。
ロメインレタスのサラダやカルボナーラ、キノコをふんだんに使った和風のピッツァなど、運ばれてくるたびに、二人は『うわぁ……美味しそう……』と声を小さく上げた。
「では、いただきます」
奈美が手を合わせると、恵菜も彼女に倣い、二人は料理とおしゃべりを楽しんだ。
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