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「そうそう、早瀬くん、元気?」
デザートと食後のコーヒーが運ばれてくる頃、奈美から屈託のない表情を向けられた。
「あっ…………ああぁ……」
恵菜の表情が次第に俯き、苦痛を滲ませた面差しを浮かべている。
「何? どうしたの?」
奈美が食い入るように身を乗り出し、アーモンドアイが恵菜を見据えた。
「はっ……早瀬の事なんだけどさ……」
「うん」
澄んだ奈美の視線に、黙っていられないと感じた恵菜が、大きく息を吐き出す。
何て切り出そうか、と逡巡した後、恵菜は決心して、奈美と視線をかち合わせた。
「実は…………昨年の八月、早瀬と…………離婚したんだ……」
奈美が口元を両手で覆い、黒い瞳を大きく見張る。
「えぇ!?」
固まった状態でいる奈美をよそに、恵菜は、しばらく会えなかった時の事を、ポツリ、またポツリと話し始めた。
***
恵菜のかつての夫、早瀬 勇人は、高校時代の同級生。
恵菜と奈美は、一年生と三年生の時に、勇人と同じクラスになった。
勇人は野球部、恵菜は合唱部に所属。
部活の後に、昇降口でよく会う事がきっかけとなり、高校一年の秋、勇人から告白されて二人は付き合うようになる。
長い交際期間を経て、勇人と恵菜が結婚したのは、二十三歳の時。
高校の同級生の中でも、二人は、一番早く結婚したが、新型コロナウィルスが世界中に蔓延していた時期だった事から、恵菜と勇人は挙式と披露宴をせず、婚姻届を提出するだけだった。
結婚後の最大の変化は、高校時代から日本人離れした顔立ちと、スタイルの良かった恵菜が、徐々に太り始めた事。
暴飲暴食は一切しないし、仕事も続けているので、彼女は規則正しい生活を心掛けていた。
なのに、恵菜の体重は減るどころか、ますます増え続け、結婚して二年後には、ベスト体重よりも二十キロも増えてしまう。
この頃からだった。
義母の早瀬 良子が、恵菜の容姿について厳しくダメ出しをしてきたのは。