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香帆と美緒は、ダイニングテーブルに向い合って座っている。
テーブルにはハンバーグとサラダが並び、ナイフとフォークが添えられている。
テレビは点いたままだ。
香帆には美緒が別人に見えた。
(この人は誰?)
一番の理解者で、一番の協力者で、一番大切な同僚、じゃない。
美緒は【優しい同僚】の仮面を外して、痛烈な言葉で香帆を批判した。
「結婚1年で浮気されるなんて、よっぽどアンタに魅力が無いのね」
「妻に魅力があれば、浮気なんてしないでしょ」と。
香帆は(話の方向が違う)と思った。
香帆が知りたいことは、ただ一つだ。
「一つだけ教えて。狩野桜志郎に、私と颯真の情報を教えたのは美緒なの?」
「もう知ってるんでしょ。答える必要ある?」
「なんで、そんなことしたの?」
「アンタが略奪婚したからよ」
「え? りゃくだ?」
意外過ぎて、香帆は言葉が続かない。
「結婚後もマウント取って、リア充アピールがうざいし」
香帆にそんな気は 心底から無い。
訊かれたことに答えただけだ。
「彼は本当に可哀想。結婚しても、子供もできずに死ぬなんて」
「……」
「好きでもない女と結婚するから、浮気なんてするのよ」
「……」
「彼が死んだのは、アンタのせいよ」
「……」
「愛されてないのに、無理やり結婚したからよ」
ここで香帆は声を出せた。
「颯真は私を愛してたよ」
「じゃあ、なぜ浮気したの? 愛されてない証拠でしょ」
「それは……、えーと……」
何を言っても負けそうだ。颯真が浮気したのは事実。
美緒が言うように……、
私に魅力が無かったから? 本当は愛されてなかったから?
美緒は勝ち誇ったように畳み掛けた。
「どうなの? なぜ彼は浮気したの???」
「魔が差したんやぁーーーーー!!」
颯真の声が響き渡った。
いつものソファーに、颯真が少し浮いて座っていた。