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式典当日ー
「それでは新旧『姫』の引き継ぎを行います」
会長からの一言で式典が始まった。
この式典は生徒会が取り仕切り、特に教師の関与なく見届けたい先生方だけこの場に来ているらしい。
ステージ場の影からそっと見ると、深澤先生と岩本先生が一緒に並んで立っていた。
まずはエンブレムを模したピンバッジの姫の証を、
前任の姫から受け取る。
そしてスピーチだ。
オレは自分でデザインした衣装と靴に着替え、ウィッグを被りステージ右側の袖に立っている。
反対方向からは「カツンカツン」とヒール音を鳴らしながら、スポットライトを浴び歩き出す人物が見えた。
「宮様ーっ」
「宮様だ」
「宮様」
わぁっーと大歓声と拍手
その声量にオレは圧倒されてしまった。
(あれって…親切な人)
前任の姫は当日まで知らなくて、誰なんだよと思っていた。
少しほっとした。
ステージ中央まで歩くとスタンドマイクの後で立ち止まり正面を向いた。
そしてスタンドマイクに向かって、一礼し挨拶を始めた。
「ご機嫌よろしくて、ワタシの名前は宮舘と申します」
「1年生の皆様は初めまして、2、3年生の皆様はお久しぶりでございます。こうしてまた皆様にお目にかかれて光栄ですわ」
割れんばかりの拍手が起こった。
深紅の真っ赤に燃えるような肩出しのドレスと同じく足元のハイヒールは、スパンコールで覆われキラキラ輝いていた。
露出している肩には赤い薔薇の模様が見える。
(あれってタトゥー?ただのシールとかだよな)
「ワタシからお呼びいたします。今年の姫、佐久間さんです。」
呼ばれてオレもステージ中央へ向かった。
オレが登場すると拍手はあるものの、拍手音や歓声はまばらだった。
(完全にアウェイだよなこれ)
オレは親切な人もとい宮舘くんの傍、スタンドマイクの後ろ側で立ち止まった。
「これが姫の証ピンバッジです。」
黒子(生徒)がやって来て、紺色のケースを宮舘くんの目前に差し出し、受け取ると「パカッ」と開けピンバッジを親指と人差し指で摘み、オレの目線へ上げ見せて来た。
「こちらを新しい姫にー」
宮舘くんが言い出した所で
「なんでこいつに宮様がいい」
「そうだそうだー!」
誰かがオレを否定するようなヤジを飛ばすと、続けろばかりに罵倒し始めた。
「こんな色気もないような姫認めるか」
「今年も宮様がいい」
「会長宮様にしろ」
「佐久間お前は引っ込めー」
「お前は姫に相応しくない」
「辞退しろーっ」
この場は、一気にブーイングの嵐になった。
「皆様いけません、ワタシの方が姫に相応しいなど言っては」
困惑な表情で宮舘くんは制止しようとしている。
しかし
「宮様がいい」
「宮様こそ姫」
「皆様落ち着いて下さい。」
宮舘くんが呼び掛けても暴動は収まらず、最早収集がつかない状態だった。
それでも宮舘くんは一生懸命止めてくれようと、とっても優しい人だってオレは思ってたんだ。
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クスッ
フフフフフッ
そうよ姫は、ワタシの方が相応しいに決まっているじゃない、あー笑いが抑えられないわぁ
愉快だわぁ〜
バレないように口元を抑え、ワタシは俯いて顔を隠した。
会長もこんなに暴動が起こるんですもの、考え直してくれるに決まってますわ。
体育館からステージを見ていた深澤は怪訝な顔をした。
「深澤先生、俺止めて来ます!」
「ちょっと待て岩本先生」
岩本の手首を掴んで首を左右に振った。
「なんで止めるんだっ💢深澤先生」
「すんげぇ薔薇の匂いがする、お前は感じないのか?むせ返ってゲボりそう」
「確かに…オェッ」
「岩本先生は反応遅いだけかよ全く…取り敢えずなるべく体勢低くして吸うな」
まるで火災の時の避難体勢を取る。こんな非常時なのに自分を守る事に精一杯で俺達は【無力】だった。
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