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「まず、これ渡しとく」
「後で返して」
そう言って蒼空は
私に分厚い辞典のようなものを渡してきた。
中を見てみると沢山の単語が並んでいた。
頭が痛くなりそうな量だ。
「じゃあ俺はあっち行ってるから」
「はーい」
数時間が経った気がする。
でも実際はそんなに経っていないのだろう。
試しにさっき、オバケの発音を聞いたが
全く分からなかった。
それでも看板に何が書いてあるか
なんとなく分かるようになった。
ーー∩༅=・‥\♡ຼ/=■●∟ーー
『エアー・ニュータウン』
ここはエアーニュータウンと言うのだろう。
でもタウンと付いているくらいなら
建物があると思ったがここには何もない。
この、ただの白い空間には看板とベンチしか
見たことがない。
後で蒼空に聞いてみるとしよう。
そういえば今、
あっちの世界はどうなっているのだろう。
もしかしたらお母さんが心配してるかも…。
「ねぇオバケちゃん今あっちってどうなってるの?」
「プー?」
「プープー!!」
一瞬『分からない』というような感じがしたが
他のオバケが手鏡を私に渡した。
そこにはあっちの世界が映っていたが、
最後に見たような綺麗なハロウィンの
景色ではなく、
オバケを探し回ってる人々の
ゾンビのような姿が映っていた。
「なにこれ…」
「卯川、大変だ」
その時、慌てた様子で蒼空が私のもとに来た。
「どうしたの?」
「父さんが新しい開発をしてる」
「どんな開発?」
「それが、分からないんだ…」
「でも嫌な予感がする」
「でも….出口ないからどうしようも出来ないよ?」
私がその質問をすると蒼空は『そうだよな』
と言いながら考え事をしている。
そのとき、オバケが私の肩をトンと叩いた。
私は何かと思い、振り返ると
そこには巨大化したオバケが居た。
「え!?」
私の声に驚いたのか蒼空もオバケのことを
驚いた顔でじっと見ている。
そこに、1匹のオバケがやってきて
大きいオバケの中に消えていく。
私はそれが気になってオバケをめくってみると
そこは現世と繋がっていた。
「蒼空!お父さんの場所分かる?!」
「分かるけど…」
「案内して!!」
「いや、出れないんじゃ──」
「こっから出れるから!早く!!」
そう言って私たちはオバケをめくって
飛び込んだ。
目を開けるとあのゴミ捨て場の鏡の前に居た。
「なんで早く気づかなかったんだ…」
多分、
蒼空も出れると思っていなかったのだろう。