テラーノベル
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「あれ、死神くん!久しぶりだね〜」
「……と、お客さんかな?」
小さく首を傾けながら、こちらを見る人影。
まず目に入ったのは……ふわふわとした耳と尻尾だった。
猫でも犬でもない……狐?
それから、巫女服。純白の白衣に、緋袴。胸元から腰回りをきゅっと締める幅広の帯が、綺麗に結ばれている。
ふわり、と優しく笑う。
琥珀色の瞳と、目が合った。
「どうしたの?死神くん。珍しいね」
「あぁ、地球から迷い込んで来た人間だよ。面白そうだから拾って来た」
「面白いって言い切るなっ」
思わず声を上げる。は、と自分でも驚いた。初対面の相手に、普通に話せている自分がいたことに。
ライルは「ごめんごめん」と軽く謝った。
……絶対に、反省してない。
「ま、自己紹介からしよっか」
そう言って、彼女はくるりと回った。
巫女服の裾がふわりと広がり、腰まである茶髪が揺れる。
それと同時に、耳もぴこりと動いた。
「ボクはイズナ!化けるのが得意な化狐だよ。 君は?」
「えっと、僕は、櫻井優羽。化、狐……!」
「ふふ、そうだよ♪ よろしくね、優羽くん」
イズナが微笑んだ。それに、優羽は頷く。
死神に、化狐……。死神もいれば、それくらいいても当然かもしれない。
優羽は、改めてこの世界の異常性……いや、地球との天と地の差に驚かされた。
「さて、本題。死神くん……ボクに何の用?」
「あぁ、そのことだけど。君さ。地球に帰る方法、知らない?」
ライルが、優羽のことを指した。
その言葉に、イズナは少しだけ目を丸くする。そして、すぐに笑った。
「知ってるよ」
優羽の瞳が、驚きと期待できらりと揺れた。
「ほんと……!?」
「もちろん!嘘なんて吐かないよ〜」
イズナの笑顔を見て、ライルは「ツテが活きたな」と呟いた。
横で、ライルとイズナが他愛もない話をしている。
優羽は、それをぼんやりとしながら聞いていた。
『知っている』
その言葉が、優羽の中で反響している。
帰れる。帰れるんだ。
父さんも、母さんもいるあの家に。
横から、イズナが身を乗り出してきた。
「ただし、一つ。地球に帰れる……と言っても、帰れたという確かな証拠がある訳じゃないよ」
「……え?」
「んー、まぁボクが調べたから大丈夫なはずだけど!」
しゅん、と肩を落とした優羽を見やり、ライルが苦笑した。
「まぁ、行ってみないと分からないからな」
「そうだね〜。まずは、神社を出よっか!」
そうやって、神社の裏に回ると、木々に遮られた日陰が広がっていた。手や口を清める場所もあり、日本の神社によく似ている。
多分、日本で言う狛犬であろう石像がちょっと怖いモンスターだったこと以外は。
「な、なんか、怖いねこの石像」
「あ、気をつけて!目合わせると怒るよ」
「……え、今なんて言った?」
「目、合わせると怒るよ〜」
優羽が、ぱちぱちと瞬きをし……思わず、一瞬目を合わせる。
ギギギギ……と、狛犬もどきの首が動いた。
「あー、優羽くん悪い子!」
「ま、待ってごめん……ッ!!」
さぁ……と顔が青くなっていく優羽を見て、イズナがくすくすと笑い出した。
ぐわ、と飛びかかってくる狛犬もどき。優羽は、ぎゅ、と目を瞑った。
「いッッッ」
……あれ?
横から声が聞こえて、恐る恐る目を開ける。
「ライルッ!?」
そちらを見ると「痛ぁ」と腕をさする死神の姿があった。
「俺、なんか嫌われてんだよねー……」
「ふはっ、死神くん最高……!」
お腹を抱えて笑うイズナ。狛犬もどきは、気づいた時には元の位置に戻っていた。
木々の間を縫うように続く道を歩く。そんな時、ふとイズナが首を傾げた。
「……そういえば、ライルって?」
「俺の名前。優羽がつけてくれた……なっ、優羽?」
優羽は、ライルに話を振られて小さく頷く。自分で、耳が熱くなるのを感じた。
「へぇ……じゃあ、死神くんじゃなくてライルくんだね」
「ん。それでよろしく」
木々の隙間から、陽の光が差し込んでいた。
風が吹くたびにさわさわと揺れる葉の音が、心地いい。
優羽は、ちらりと森の奥を見た。その奥には……。
にせ狛犬?
どこにでも、置いてあるんだ。
優羽はぽつりとそんなことを思った。そして、今度は目を合わせないように前を向き直した。
キィィィン──────!
甲高い金属音が聞こえたのは、その時だった。
「なに、この音……?」
「何かが、戦ってるみたいだね」
森の奥。暗がりの方で、火花が散っているのが見えた。
ライルと、イズナが森の奥に走っていく。
……速い。優羽は、息を切らしながらついて行った。
「ッ……」
ガン、ガキンッ────
金属音……森の奥の、しんとした空気によく響いた。
そこでは……ぼろぼろになった青年が戦っていた。
頬や腕に幾重もの傷がつき、服はところどころ破れている。
片肩に掛けたマント。少し高めのブーツに、細い手足。
そして────かぼちゃの頭。
ハロウィンでよく見る、ジャック・オ・ランタン。
「ッ……!」
彼が小さな呻き声を漏らす。がん、と斧で攻撃を受けながら、それを弾き返す。
彼を囲んでいるのは、優羽が襲われた、あの黒いモンスターだった。
また、あいつだ。
優羽の体が強張ったのを見て、ライルが前に出た。
イズナが、優羽を後ろに下がらせる。
彼は、モンスターの攻撃を避けながら飛び上がった。
着地したその足元で、枯れ葉が舞い上がった。
……その時。
ガキィンッ!!
甲高い音がして、彼の斧が弾かれた。
「ぐッ……!」
体勢を崩した彼に、大きな影が襲いかかる。太く、大きな腕だ。
「ライルッ」
優羽が思わず叫んだ。
けれど、ライルはすでに動いていた。
ギィィィィィン──────!!
大鎌が、重い衝撃を受け止めた。空気が、震える。
「おいおい。その人数でいじめはずるくない?」
ライルは、にやりと笑った。
ライルの正面に立つのは、黒いモンスター達とは違った。
頭に、ボルトが刺さった大男。3m近くはあろうか、という大きさだった。
「……」
ライルに、イズナ、それから優羽。
大男が、三人を一瞥した。
「君、立てる?」
ライルが、振り返る。
彼は答えなかった。
無言で立ち上がり、弾かれた斧を拾い上げる。
「……」
「あははっ、無視?」
そう笑いながら、ライルは大鎌を振り上げた。
ザシュ────と、モンスター達が斬られていく音。
2体、3体、4体……次々と、薙ぎ倒される。
その姿を、まじまじと見つめる優羽。しかし、その目の前には、モンスターが迫ってきていた。
「……ッ、うわ!!」
しかし、その攻撃が届く前にイズナが動いた。
パチン、と指を鳴らす音。それと同時に、優羽の周りに透明の結界が張られた。
シャボン玉のような、薄い虹が瞳に映る。
「これで、大丈夫!」
「っ、ごめん……ぼーっとしてて」
「いいえ〜!お安いご用だよ」
優羽は胸を撫で下ろしながら、奥を見た。そこでは、まだライルが戦っている。
大男が、腕を振り下ろす。
何度も、何度も。ライルは、鎌で受け止めた。
バチンッ……と散る火花。
「ッ……重、!」
ライルが後退する。
……が。優羽には、その先が見えなかった。
ライルの姿が、ふっと消えた。
次の瞬間、大男の背後に、影が落ちた。大男の腕を受け流し、身を翻す。
それが、先程まで大男に押されていた死神だと気がついた時には……終わっていた。
ゴト──。
大男の首が、地面に落ちた音。
優羽の目が、点になる。
「かぼちゃ頭ー、そっち大丈夫か?」
かぼちゃ頭の彼が、モンスター達を燃やしている。
……炎を使えるらしい。
そして、イズナは、優羽を守る結界を維持したまま、片手でお札を投げていた。
モンスターが次々祓われていく。
「あっちも終わったみたいだね」
にこり、と優羽に向かって微笑むと、イズナの結界が解かれた。
優羽は、イズナと一緒に二人の元へ歩いた。
「君が、この森から来てた魔力の主……みたいだな」
ライルが、小さく息を吐いてから言った。
「……」
彼は、答えない。
その代わり、森の奥に向かって歩き始めた。
落ち葉を踏み締める音が、遠ざかっている。
「あーっ!待ってよ!」
イズナが駆け寄る。優羽も後を追うと、ライルが「またビビってじゃん、優羽」と笑いながら、横に並んだ。
ライルの周りには、鬼火が浮かんでいる。
優羽は、あの時もそうだったな……と、ぼんやり思い出した。
鬼火を凝視する優羽。それを見やったライルが、鬼火に手をかざした。
青い炎が揺らめいて、ライルの掌に引き寄せられていく。やがて消えていくその光に、優羽は小さく目を見開いた。
「なんか、綺麗だね」
「そう?」
青い炎が消える瞬間を見て、ライルが目を細めた。
「……そうかも」
それから、しばらく森の奥へ進んだ。
「……どこ、行くの?」
優羽が尋ねるが、返ってきたのは葉を踏む足音だけだった。
奥に進むにつれ、木漏れ日も差し込まなくなり、かなり暗くなってくる。
次第に、霧も濃くなってきた。
ふいに、彼が立ち止まった。
そして……その景色を見た優羽が、思わず声を漏らした。
そこには、いくつもの鬼火が漂っていた。
青。それよりも、少し淡い青……絶妙に違う色々が、森の奥を不気味に照らしている。
濃い霧のせいで、不気味さが増していた。
おどろおどろしい雰囲気に、優羽が身をすくめる。
「君、いつもここにいるの?」
「……」
イズナが、口を開いた。
問いかけても無言を貫き通す彼。かぼちゃの頭が、どこか遠くを見ていた。
イズナは、そんな様子にも動じることなく彼の表情を覗く。
「聞こえてる?」
「……」
彼が、振り返った。
「……この森には、魂が彷徨っている」
彼が、初めて口を開いた。少しくぐもった、低い声だった。
「俺は、それを浄火してる」
ぽつりと。優羽達に言っているようにも、独り言にも聞こえた。
「……魂」
優羽が、声に出してみる。非現実な響きが、口の中に残った感じがした。
彼は、ランタンを手に取る。
火が灯り、薄暗い森を小さく照らした。
「君、喋れんじゃん。かぼちゃ頭」
ライルが、彼の肩に手を置きながら言う。相変わらず、距離が近い。
「かぼちゃ頭じゃ可哀想じゃない?名前、教えてよ」
「……かぼちゃ頭は事実」
「ふふ、確かに」
イズナが、弾けるように笑う。優羽も、それにつられて小さく笑った。
「……ジャック、とでも呼んで」
「かぼちゃ頭じゃだめ?」
「……勝手にすれば」
その答えに、小さな温度が滲んでいた。
優羽達は、イズナの提案で、道を引き返していた。
すっかり日が暮れ始めていて、オレンジが眩しいほどに輝いている。
「森の奥からの魔力、かぼちゃ頭のだったんだなー」
草の上。ライルが木の枝を組み立てながら言った。
「……俺は、そこの人間の方が気になるんだけど」
優羽の方に、顔が向けられる。
「え……と、僕?」
「……」
無言。すぐに、背中を向けられた。
「それはボクもかな」
「君が、どうしてそんな魔力を持っているのか……まぁ、本人は全然気づいてないみたいだけど、ね」
イズナは、会話に参加しながら木の枝を集めている。
その言葉に、優羽が小さく唸った。
「ライルにも、言われたな……」
ようやく、木の枝を組み立て終える。優羽も、補充用の枝をどんどん並べていた。
「はい、火つけていいよ!」
ジャックが手をかざすと、小さい枝から、少しずつ燃え始めた。
「はぁ……いいね、焚き火」
イズナが、焚き火の前で手をさする。ふさふさの尻尾が、上機嫌に揺れた。
ここの夜は、凍えるような寒さだった。昼間は太陽が照り付けていたのに、夜も容赦ない。
「あったかい……」
優羽は、今まで張り詰めていた気を吐き出すように、大きくため息をついた。
今日は、いろいろありすぎた。
朝起きたら、知らない場所にいて。
息つく暇もなく、モンスターに襲われて。
それから……命を奪わない死神に出会って。
日本の神社にいる化狐に出会って。
ぼろぼろのジャック・オ・ランタンに出会って。
たったの半日で出会うには、濃すぎる顔ぶれだった。
「……」
パチパチ、という焚き火の音。その灯りに照らされた3人の顔を見て。
こんなのも、悪くないかも。
優羽は、ぽつりと思った。
・・・
ある会議室。
大きなデスクに、椅子がずらりと並んでいる。
その一番奥に、彼は腰掛けていた。
「随分、暴れてくれたようだね」
電気もつけずに、そこに佇む。ふ、と目を閉じた。
「迷える子羊、か……」
「──────二匹目の」
#異世界ファンタジー
チョコリコ🍫🌈fw様企画
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55
#りゅなコンテスト
♕⚘𝓪𝓃ℴ⚘♕
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コメント
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えっ好き… 優羽&ライル&イズナ&ジャックくん、さん…キャラそれぞれの喋り方とか行動が好き。みんなそれぞれ個性があって、うん。個性を表すのがうまいよね… あと登場シーン!衝撃…だけど自然ながらもファンタジーさが残っているところがいい!雰囲気作りがうちは好きかな。 ファンタジーって世界観の作り込みが売りになるジャンルだから、それをうまく表現できてるのは大きな強みだと思う! 続きも頑張れ!応援してる!
まじで面白い…(*´▽`*) 永遠に見れちゃう( ´艸`)笑笑
ぇぇぇ、表現も展開も好きすぎるんだけど✋️ 登場人物が増えたりしてドキドキも増加中っ! ミステリアスなシーンも戦うシーンもあって 豪華な一話でしたよんっ!! 最後の終わり方気になりすぎるし、 優羽くん、キャラ設定好きすぎるよ🙃‼️ ほんとにこの作品大好きなので 最終話まで見逃さないですっっ!!! コメント長文だけど、作品愛が強めなだけなので許して🦾 続き楽しみに待ってます😘🫡