今日はここホワイト・シティでは珍しく。一年にほとんどない晴れの日だった。
日曜日の朝の9時にセントラル駅で、モートはアリスと待ち合わせをしていた。所々、雪解け水の水溜りを避けながらモートは歩道を歩いていると、自分がこれから何をするのかがわからなかった。気になるのは、アリスが事前に「明日はオートクチュールへ一緒に行きましょう」と声を掛けられたことだった。
モートは不思議がった。
何故、二人で洋服を見るのだろう?
何のために?
アリスとの不可解な関係をヘレンに言ったことがあるが、ヘレンはニッコリと微笑んで何も答えてくれなかったが。
「同じ大学に通っているのだから、そういうこともあるのよ」
モートが珍しく質問を繰り返すとヘレンは折れて話した。
一体、アリスとの恋人関係とは何なのか?
モートにはさっぱりわからないことだった。
モートにとって、大学とは盲目的な人生の道標を学ぶためと音に触れるためだけのものだった。アリスと一緒になってからは、それらが急変した。
アリスはオーケストラサークルに入ろうとモートを誘ってきたのだ。
モート自身はかなり困ったが、アリスの強い勧めで入ることになった。
アリスは病弱のため。よくクリフタウンの病院へと通っているので、アリス自身も大きな発声などが苦手なところがあるのか、音にどこか親密性を感じているのだろう。
だが、アリスはモートに出会ってから病弱だった身体がすこぶる健康になってきていた。
モートはセントラル駅前の南側のレッドチリスープを売っているお店の隣で立ち止まった。
アリスはヒルズタウンに住んでいるので、当然、南から来るからだ。
時計を見ると、8時40分。
大量の唐辛子からくる熱気を感じ、これから遅めの朝食なのか、寒さをしのいでいた街の人々がぞろぞろと入店していた。
モートはアリスを待ち続け。白い息を吐きながら何気なく青色の魂を持つ人々を見ていた。
「お待たせしましたね。かなり待ちました? ごめんなさいね。路面バスが途中で何度もエンストを起こしちゃって」
セントラル駅の片隅にいたモートに白のロングコートを着たアリスが声をかけた。アリスの息も真っ白だった。
「いや。今、来たところだ。……大丈夫だ」
モート自身。もう考えるのは止めようと思った。きっと、いくら考えても答えはでないように思えた。
「辛いの好きなんですね。モート君は」
「?」
アリスが悪戯っ子のように微笑んだ。
モートが周りを見てみると、赤いスープを売っているお店だけではなく。この駅の入り口付近には、全て辛い食べ物屋がズラリと並んでいた。ここホワイト・シティでは辛い食べ物屋が人々に好まれているので人気があった。
モートはアリスの冗談をまったく気にせずに、アリスとセントラル駅の構内へと入っていった。クリフタウンへの切符を買い改札口を抜ける。雑踏を聞きながら階段を上がり、白線の内で待つと、ローカル線が数分で到着した。
ローカル線はだいぶ混雑していて、モートはアリスを静かに周りから庇っていた。それから30分して下車し、クリフタウンの改札口から雑多な人々を縫うように歩き。モートとアリスが向かったのは、クリフタウンの有名洋服店「グレード・キャリオン」であった。
店内は種々雑多な高級洋服店らしく随分と値の張るブランドの洋服が所狭しと壁に立て掛けられてあった。お客はどこもラッシュアワー時並にいる。モートは取り分けて気に入ったものなどないので、店先のガラス窓に映る赤い魂に気が付いた。アリスは上機嫌で二階へ行こうとモートを誘うが。
モートは警戒した。
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