お日さまが昇ると、わたしたちは眠って、お月さまが明るくなると、星を頼りに歩き始めた。喉が渇いたら泥水を飲んで、ミミズや葉っぱや名前も知らない虫も食べた。
途中、動けなくなる人もいて、その人たちは置いて行かれた。
わたしは、お母さまと逸れないようにいつも近くにいたけれど、歩けなくなったらお母さまにおんぶしてもらえた。
そうすると、背中が暖かいからいつも眠ってしまう。
わたしは迷惑をかけているのだから、お母さまにはいつも心の中で謝っていた。
だけど、とうとうガマンできなくなって、
「お母さま、ごめんなさい、わたし、迷惑ばかりかけています。ごめんなさい、置いていって下さい」
と、言ってしまった。
この場に置き去りにされるのは、とても恐ろしいことだけど、いつもわたしを気にかけてくれるお母さまは、すっかり元気もなくなって、あんなに美しかった長い髪も、所々に白髪が目立つようになっていた。
お母さまには、前のように綺麗なままでいて欲しかった。
思わず飛び出した言葉にわたしは驚いて、わんわん泣きながら後の気持ちを言いたいけれど、しゃっくりとか喉奥のびっくり虫が邪魔をして、うまく想いは伝えられなかった。
「響子!ごめんなさいね、ごめんなさい…響子…ごめんなさい、お母さん大丈夫だから、そんなふうに思わないで、大丈夫だから…」
お母さまは絞り出すような声で、涙を浮かべながらぎゅっと抱きしめてくれた。
わたしは、悪い子になりたくなかっただけなのに、またお母さまを泣かせてしまった。
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