コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
三度目の夜が来た頃に雨が降って、わたしたちは持って来た水筒や飴玉入れに雨粒を集めた。ガラガラと鳴り響く雷は恐かったけれど、冷たい雨は気持ちよかったし、大人たちが水筒をお空に掲げている姿は面白かった。
わたしは飴玉入れに雨水を溜めた。
がしゃがしゃ振ってから飲むと、リンゴジュースの味がしておいしかった。
富士子さんは、神様からのお恵みだと喜んでいて、お母さまも久しぶりに笑っていた。
星が見えないこの日は、みんなで集まって眠ることになった。
初めの頃よりも人数は少なくなっていて、男の人はひとりしかいない。
お父さまと同じ歳くらいのその人は、鉄道会社で働いていたらしく、現地の言葉と英語を話せるようだったから、街に入れば私が何とかすると言っていて頼もしく思えた。
富士子さんがそっと、
「アメリカに行かれたことは?」
と、男の人に聞くと、その人は何度も頷いていた。
わたしは、富士子さんのえくぼが見れたから、この男の人は悪い人間じゃないと信じた。
だって、人を笑顔にできるなんてすごいことだと思う。
雨が弱くなって、風向きが変わって、空に星たちが輝き始める。
立ち上がる人は誰もいなくて、この日はみんなでお団子みたいに寄り集まって朝を迎えた。
少しでも前に進もうと、お日さまの下を歩き始めるのだけど、やはり方角がわからなくなるのを恐れて途中でやめた。
すると、遠くから大きな飛行機が飛んでくるのが見えたので、みんなは身を屈めてやり過ごしたのだけど、男の人が、
「みなさん、飛行機が飛んできた方へ進みましょう。きっと滑走路もあって飛行場もあるはずです。もしかしたら街があるのかもしれない」
と提案をした。
反対する人は誰もいなかった。