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「津炎、飯だ」
そんな事を考えても、俺の口からは冷淡な言葉しか出てこない。
こういうやつにどう話しかければいいのか、俺は知らない。
「…御馳走、なんですね」
少しして津炎は口を開いた。
その声は何処か嬉しそうで、でも、警戒心はあるようだ。
【御馳走】そう言った意味が俺はわからなかった。
「ただの麦パンとスープだ。そんな大したもんじゃない」
簡単に昼飯の説明をした。それでも、津炎は昼飯に嬉しそうに目を輝かせている。気がする。
俺は、昔から笑う事が苦手だった。
兄さんみたいに笑顔になれない。
笑おうと思うと、兄さんにも驚かれるぐらい酷い笑顔になる。「どっかのラスボスか悪役かよ」なんて事を言われた記憶がある。
大丈夫だ。炎露も似たような物だった。
昼飯からはまだ湯気が立っている。
この部屋には、ベッドが一つと、机と椅子が端に置かれているだけの質素な部屋だ。だが、ある生活するにはあまり困らないと思う。
机に湯気がモクモクと立ち、まだあったかい昼飯を置く。
今更だが、この部屋の家具全て、俺や主、兄さん、炎露にはちょうどいいサイズだが、身長が160も無さそうな津炎には全てがデカいのだろう。
「津炎、少し待ってろ」
その一言だけを残して俺は部屋を一時的に出た。
確か、物置き部屋に踏み台か何かになれそうな物があったはずだ。なんて考えながら。
それから数分後、俺は毛布と、低反発の座布団、兄さんが昔面白半分で買ってきた踏み台を手に、津炎がいる部屋に戻った。
「おまたせ」
俺が声をかけると、津炎は小さく頷いた。
津炎は頑張ってベッドによじ登ったのか、ベッドの上に座っている。
不意に、こいつ可愛いな。なんて思ってしまったのは、一生涯秘密にするつもりだ。
仕方が無い。兄さんに散々小さいものは可愛いと植え付けられたのだ。そう、これは情景反射とか言うやつだ。
そんな事を考えながら、ベッドの近くに踏み台を置き、椅子の上には座布団を乗せる。
こうしたらきっと津炎でも使いやすくなっているはずだ。