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「あわわわゎ。心配になってきた」
とは言えレオが信じているのだ。なら問題ではないと分かっていてもエルフはハラハラする。
「お主たちも対して変わらなかったと聞いているぞ」
「わたしは違うもん! 迫り来る熊をばっしばっしと撃ち抜いたんだから!」
「トレントの方だ」
「うっ、あれは……」
エルフは目が泳いで口ごもる。そんなやり取りをしつつ、それでもふたりとも闘いの行方から意識を外してはいない。出来れば、奇跡でもなんでも勝って欲しいと願いながら。
ジョイスはなんとか意識を保ち、後ろに跳び下がり構える。けれどももう脚に来ている。このフィールドで次に全力をぶつけてダメならダメなんだろう。それは諦めではなく、次で決めると言う決意の表れ。
距離を詰めて迫る魔獣。そんなに遠くない、すぐにぶつかる。
魔獣にバレバレでもジョイスが繰り出せる全力はその右腕の大振りだ。最後の一撃。高まる魔力、身体中を駆け巡る。それは徐々に行き場を無くして顕現する。
あと一歩の距離まで詰めた魔獣は、レオたちが埋めた風に見せかけてあった穴に片脚がはまり、体勢を崩す。
ジョイスはそれに気づいていたのか分からないが、魔獣にとっては思いがけず踏み抜いた罠により大きな隙が出来て──そこにジョイスの渾身のハンマーパンチが炸裂した。
「あれは何だったの?」
フィナは先ほどの光景を思い返してレオに聞いてみる。最後の攻撃の瞬間、まるでジョイスの身体が膨れ上がったかのような濃密な魔力の塊。それは本当に巨人と呼ばれる存在だと思わせた。
「あの種族が巨人族などと呼ばれるのは、体内魔力を増幅させてその身に纏い闘う種族特有の纏魔というスキルがそう見えるからだ。考えてもみろ、せいぜい3m4mくらいで巨人などとは、さすがに誇張がすぎるだろう」
(いや、十分デカいけどね)とは思ったが神妙な顔して頷くフィナ。
「その代わり、今のあやつがあれをしたならばもう体内に魔力は残っていない。今のあやつは少しデカいだけの人間だ」
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
魔獣と素手でやり合って勝ってしまうのは俺くらいなものだ。他はともかく素手部門は俺が最強だろう。弓なんかは先輩に敵うはずもない。
強烈な疲労と痛みに耐えながら何とか座ることができたが立つことは無理そうだ。
満足感にこのまま真っ白になってしまってもおかしくない。
そうこのまま俺の最強の印象をここに称えたままこの物語を締めくくりたい。なのに、筋肉フェスティバルへの飛び入り参加が一名いらっしゃったようだ。
いまの魔獣と同じ種か、しかし全身に体毛はなく、妖しく輝く瞳は炎のような赤で、その姿はまるで巨人そのもの。纏う魔力は俺のものよりも一回りは違うだろう量を既に顕現し、維持できている。まるで我こそが真の最強と言わんが如きその姿に抵抗する気概も失われる。
力を使い果たしたようにまともに動くことさえ出来ず、諦めの気持ちが俺を支配しようとしたところに声を掛けてくる者がいた。
「──似ているがな。あれは猿の魔獣がそれでも足らず魔力を浴び続けた末路だ。放っておいても自壊するがその前にお前が食われたら意味がないからな、まあ、そこで休んでおけ」
口に何かを咥えて現れたダリルは首を視点にして左腕に柄を持ち、背中の先で刃の先端を下に向けた大鎌を持っていた。