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目の前の巨人に立ちはだかるダリル。
思えばこの男は苦もなく岩を持ち上げ、あのレオをも下に置いているような人物。
それが武器を携えてここに今いる意味など──考えるまでもない。
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「うおぉ、ダリルが来たよ。てことはあれがそうなのね」
「ああ。これから見るものでジョイスが自信を無くさなければ良いのだがな」
「でもワクワクするねっ。またあれが見られるなんて」
レオは知っていたかのようだが、フィナは無邪気に喜ぶ。フィナも確かに憧れているのだ、圧倒的なその強さに。
口に咥えた棒に指先で生じた火を手で覆いながら移したダリルは一息にそれを吸い込みチリにする。
両手に構え直した大鎌が妖しく輝く。
大きく吐いた息は白い煙。煙は大鎌にまとわりつき大鎌はその輝きを増す。
低くした構えと水平にひねられる身体。ともにこれでもかと振りかぶられている大鎌。握る腕は筋肉が幾筋も隆起してその込められた膂力がどれほどのものかと思わせるほどだ。
それは何も腕に限らず肩、背中、腰、臀部に腿まで、全てが獲物を狩るために進化したかの様な絶対的な存在感。
巨人の魔獣が一歩を踏み出そうとするその時に──
鎌から紫色の炎と噴煙が吹き荒れダリルの身体を前に、魔獣へと向けて押しやる。その炎は鎌本体とは別の刃をいくつも形成しているように見える。
ダリルはその魔獣とすれ違うところを、その推進力と自身の脚力で2回転を加えながら瞬きのうちに通過した。あとには抉れた地面と腰と胸のあたりで寸断された魔獣だったものが散らばるばかりだった。