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※この物語はフィクションです。

実在の人物及び団体、事件などとは一切関係ありません。


〈File88:たなごころ〉

智世が怪訝そうな顔であちこちに首を巡らせる。

それが臭いを嗅ぐ仕草だと気づき、冷やりとしたものが身体を駆け上った。

「……少し、煙たくないか」

「まさか……!」

弾かれたように窓枠に取りつき、首を伸ばして臭いを嗅ぐ。

なにかが燃えるような臭いをはっきりと嗅ぎ取ることができた。

身を乗り出すように下の階を見るが、下の割れた窓から煙は漏れていない。

首を巡らせ、伸びあがるように仰ぎ見る。

「上よ……!」

端の方の窓から黒い煙が立ち昇っているのが見えた。

十中八九、これは例の放火魔の仕業だろう。

智世は年末に請け負ったの依頼の際、放火魔らしき影を見ている。

智世にとっては性別も判別できないほどの一瞬のことだったけど、放火魔にしてみれば致命的な******

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