※この物語はフィクションです。
実在の人物及び団体、事件などとは一切関係ありません。
〈File89:永久凍土の融水〉
「ごめんなさい。わたし……」
父へ向けていた視線を断ち切り、智世を見据える。
「こんなところまで付き合わせて、ごめんね」
どうしようもないことなのだと、自分に言い聞かせる。
どんな形でも、父に帰って来てほしかった。
父の身になにが起きたのか知りたかった。
そしたら父の死を受け入れるには時間がかかるけど、それでも10年間選び続けてきた孤独と折り合いをつけられると思った。
だけど、そうすることは叶わない。
「……脱出しましょう。この人に早く治療を」
智世は神妙な顔つきで頷いて、私の意思を尊重してくれた。
その手を借りて平均より小柄な男を背負い、煙に背を向ける。
決意が揺らいでしまったらと思うと怖くて、一度も振り返ることはできなかった。
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