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本を読んで無視を決め込むイアンに苛立ったのか、ラファエルはイアンの服の下に手を潜り込ませた。
「あっ…おいっ、ラファエル!ちょっと度が過ぎてるぞ!」
ラファエルの手は、イアンの腹部からするりと上に上がり、程よくついた筋肉をやわりと揉んだ。複雑な服をこうも簡単に解き、手を入れてくるとは。
「……ラファエル…、もしかしてお前、使用人達に手を出していないだろうな?」
そう考えもしないと、違和感が拭えない。 慣れすぎているのも心配だ。ラファエルに手を出されたというやつが出てきたら困ってしまう。
「…え!?違いますよ!本当にしてません!兄さん、どうしてですか!?」
「どうしたんだよ、急に慌てて。そんな反応だと逆に疑ってしまうよ。」
ラファエルはイアンの前に回りこみ、目線を合わすように少し屈んだ。
「本当に違いますよ!!兄さん以外に手なんて出してません!」
「俺も出されてないけどな。」
「…あっ。」
ラファエルはしまったというような表情をした。会話の流れ的に俺は手を出されていた、というように聞こえるんだが。流石に記憶もないし、ありえないぞ。
「とにかく、接触が激しくなってるぞ。ラファエルが俺の事をどう思っているのか分からないが、兄として見過ごせない。」
「え、違うんです!俺は兄さんの事が…っ、あ、いや…、でも俺は兄さんのことを尊敬してます!」
何だよ、どもるってことは好きじゃないってことか?
「とりあえず、最近のお前はスキンシップが激しい。その癖を直さなきゃ、学園に通うなんて夢のまた夢だぞ。」
少し強気に出てみたが、これは相手のため。他の人にも同じように接しているなら大問題だ。ラファエルにガチ恋が出てもおかしくない。
「…努力します。」
そう吐いて、ラファエルはイアンの肩に手を回した。
(全く…、反省してないな。)
「お前は本でも読んどきなさい。心を改められるぞ。」
イアンはラファエルに、読んでいた本を手渡した。コイツが読むとは思えないが、ラファエルは驚いたあと、嬉しそうに頬を赤らめて、
「大切に読みます。」
と言った。
(どうだかな。)
ふっと息を吐いて、少し笑って見せた。
度が過ぎた、とでも言おうか。ラファエルはやらかしてしまった。
いつも通り、ラファエルはイアンと共に寝ていた。イアンが眠ったのを確認して、イアンの体にのしかかったのだ。それも跨るように。その衝撃がかかったのかは定かではないが、イアンの眠りは浅くなっていた。
「…、…っ……。」
イアンは苦しそうに呼吸をしている。そんな姿はラファエルの心を乱していた。日々積み重なる自分の欲望に嫌悪感を抱きつつ、感情はおし殺せなかった。
(可愛い…。)
イアンの肌をさらりとなで、上から覗くように顔を見つめた。
その時だった。イアンはゆっくりではあるが、眠気を覚ましていった。
「うあっ!!」
ラファエルが自分の上に乗っている事に驚き、イアンはラファエルを突き飛ばしたのだ。これだけで済めば良かったが、問題があった。
「…兄さん?」
イアンは体を縮こませるように、両手で体を覆った。
「兄さんっ、どうしたんですかっ!?」
イアンの怯え方は異常であった。普段の様子からは想像もできない怯え方をしているのだ。体を小刻みにふるわせ、指先は力を込めすぎて白くなっている。
「はっ、はっ…! 」
「兄さん!!」
体を揺さぶると、イアンは焦点の合わない目をラファエルに向け、僅かに唇を震わせた。
「…ラ、ラファエル…。な、にをやっていたんだ…?」
ラファエルはドキッとしたが、すぐに気を取り戻し、言い訳をした。
「兄さんの顔にまつ毛が乗っていたので…すみません…。まさかそんなに驚くとは…。」
イアンはすこし安堵したような表情をしたが、それだけにラファエルを突き飛ばした自分に信じられないようだった。
「そ、っか。ごめん…ごめんな、突き飛ばして…。」
そういうイアンはなお、自分の体をかかえるようにしていた。ラファエルはそんなイアンの行動を見て、何かがおかしいと思った。
まるで、何かトラウマを抱えているかのようだ、と。