テラーノベル
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月日が流れた。イアンはあの事件以来、ラファエルを遠回しに避けるようになった。
ラファエルには分からなかった。どうしてイアンがあんなにも怯えていたのか。そしふてそんな自分に嫌悪感が募っていった。
「兄さん。…おはようございます。」
そう言うと、イアンは気まずそうに目を合わせず、「おはよう。」とつぶやいてすぐに何処かへ行ってしまった。そんな日が続くにつれ、ラファエルはよりイアンの愛情を追い求めるようになっていった。
イアンが学園に行く日。家族はもちろん、商人たちでさせ見送りはなかった。数人の執事たちはついたが、ただの荷物運びであり、会話の余地はない。
(まあ、当然か。)
唯一仲良くしていたラファエルでさえあんなに避けてしまっているのだ。あの日、薄暗い中、目が覚めたら、自分よりも体格のいい人に押し倒されている、という状況であり、思考より先に行動が勝ってしまった。いい訳では無いが、本当に…怖かったのだ。前世からの記憶がすべて遡り、イアンの体を駆け巡るかのように嫌悪が走った。
(…気にしてないと思っていたけど、やっぱり忘れるなんて無理だ…。)
イアンの、誰にも言ったことがない前世のトラウマ。まさか、今世でまた思い出すとは。
(考えててもしょうがない。ラファエルには本当に申し訳ないことをしたが、もう良いのだ。)
「うわ、すごっ…。」
目の前に佇む建物に、思わず圧巻してしまう。シンプルでありながらも、さすが貴族が通う学園。あまりの大きさと豪華な装飾が心を躍らせる。
(今日からここに通うんだ…。)
そんな実感とともに足を踏み出す。これからラファエルがいない生活を1年間送ることになる。しかし、意外にも肩の荷が下りたようだ。もう後悔は残っていない。
入学式中、多くの貴族が並ぶ。もちろん差別などは表向きないため、優秀である平民、つまりゲームの主人公は入ることができる。多少の平民を横目で見ながら、無意識に攻略対象を探す。
(あ、いた。)
一人二人、キラキラとしたオーラを纏う人がいる。
(めっちゃ目立ってる…、実物はやっぱ遠目でもかっこいいな…。)
現実離れしたかっこよさにため息をつくと、視線がこちらに向いた。
(あれ、今目があってないか?)
そう思うと、相手もじっくり見つめ返してくる。
ケリー・アラスタン。その横にシャルル・サヴォイア。
ケリー…という名の人はシャルル・サヴォイアの護衛であるらしい。幼馴染と言うやつで、この国でかなり高貴な立場であるシャルルを守っている。差別はないと言っても、貴族上のルールには従うべきで、多くの人はシャルルに敬意を払っている。
(そんな方となんで目が合ってるんだよ。気のせいかもしれないけど。)
いたたまれなくなり、目をそらす。シャルルの視線に気づいた新入生の一般生徒達はざわざわと賑わって、会話に花を咲かせている。
(早く終わってくれないかな…。)
退屈な話を聞きながら、うっかりあくびをした。